【SF】松本城、起つ

本→SF/FT
10 /22 2016
松本城、起つ
六冬和生
早川書房
松本城、起つ
松本城、起つ
posted with amazlet at 16.10.02
六冬和生
早川書房
売り上げランキング: 174,220

最後に残された力のすべてを込めた。
「叫べ!、加助!二斗五升!」

松本城、起つ』本文より

長野県で買ったら長野県限定帯がついてた。

タイムスリップ、いや、タイムリープ?
ちょっと違うな。いくつもの世界の可能性の中で松本城を守るための物語。

松本の加助騒動という史実を元に描く、農民たちと城の間の年貢闘争。
加えて松本城の歴史をひも解いていくなんとも不思議な小説。
なにものにも属さないというか。
いかにして何度死んでも同じ時間軸の中で騒動を避けながらも松本城を荒廃させるものかと奔走する。

すばらしく地元愛にあふれていて、それでいてすごく興味をそそられる内容だった。

【SF】ハーモニー

本→SF/FT
08 /07 2016
ハーモニー
伊藤計劃
ハヤカワ文庫JA
ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)
伊藤 計劃
早川書房
売り上げランキング: 34,157

選択を必要とするか自明であるか、それだけなんだ、意識の動かす世界と意識のない世界を分かつものは。

ハーモニー』本文より

なんだこの天才的な…

ありとあらゆるものが共有される社会の中で、個性とは、個人が個人として生きていく最後の手段としての死とはどういう意味を持つのか。
完全な平和の中での自死ってなんなのかを突きつけられた。
近未来SFでここまでやってくれようとは。

【SF】新世界より 下

本→SF/FT
12 /29 2012
新世界より
貴志祐介
講談社文庫
新世界より(下) (講談社文庫)新世界より(下) (講談社文庫)
(2011/01/14)
貴志 祐介

商品詳細を見る

「ねえ。わたしたち、本当に変われると思う?」

新世界より 下』本文より

新世界より』下巻読了。

すばらしいSF世界だった。

12歳、14歳編を経てついに下巻は26歳編。
圧倒的な戦いが描かれてた。
どこかおかしい呪力を使える世界を上中で、ホラーやSF的な世界での冒険を経て、ついにラストの戦いへ。

そう書くとファンタジー大作のようだけれども、過去に現代をSFに置き換えたかのような傑作の本に交じってもおかしくないような。
そう、この世界のような1000年後の未来を危惧するかのような物語だったと思う。

人間は果たしてどこに行くのか。
1000年後の彼らは果たしてどうなったのか。
個人的には彼らは滅ぼされたのではないかと思う。

歴史は繰り返すというか、呪力が当たり前に使われ、言葉を話すバケネズミたちがいる世界。
これは現代日本から見た過去の歴史でも置き換えられるようなこともあったわけだし。
未来の世界ではあっても、どこか似通っているからこそこの物語の結末の後味の悪さが絶妙。
後味が悪くないように見えるけれども、どこまでも悲観できるような内容だからこその見事さってやつを身に染みて味わった。

ものすごい面白かった。
アニメで興味をもって、これを読んでみてよかった。
アニメ版の出来に関してもまるで違った見方ができてしまったかもしれん。

【SF】新世界より 中

本→SF/FT
12 /23 2012
新世界より
貴志祐介
講談社文庫
新世界より(中) (講談社文庫)新世界より(中) (講談社文庫)
(2011/01/14)
貴志 祐介

商品詳細を見る

「たとえ死んだって、忘れないよ」

新世界より 中』本文より

新世界より』中巻。
12歳編の完結編から14歳編まで。

とんでもないものを読んでしまってるのかもしれない。
様々な要素をはらみながらも、冒険も恋も、この世界の謎もすべてが解かれた。
もう残すは結末のみ。
そう、下巻だけ。
結末にまだこんだけページ数残してるのかよ…
一体なにが待ち受けているというのか。

上巻のこの1000年後の不思議な世界と現代を繋ぐ話で物語を加速させるなんて、そんなんまだ序の口だった…


管理社会とか、超能力をもった人類のその先とか、禁忌に囲まれた町とか典型的なネタなんていくらでもあるのに、どうしてこんなに新鮮でしかもわかりにくくないときたもんだ。
これは読んでて楽しすぎる。
まさかの中巻を一気に読んでしまった。

【SF】新世界より 上

本→SF/FT
12 /22 2012
新世界より
貴志祐介
講談社文庫
新世界より(上) (講談社文庫)新世界より(上) (講談社文庫)
(2011/01/14)
貴志 祐介

商品詳細を見る

これ以上、聞かない方がいい。無意識からの警告はそう告げていた。
だが、いけないとわかっていてもパンドラの箱を開けてしまうのが、有史以来変わることのない人間の性なのである。

新世界より 上』本文より

貴志祐介の『新世界より』。
まずは12歳編の上巻から。

アニメで見て気になったので原作に手を出した。
よくもまぁこれをアニメにしようと思ったよなぁ。
あそこまでヴィジュアライズできるのもすごい。

なんせ時代は1000年後の日本で呪力が使える人間たち、そして大きいネズミたちでしかも喋るバケネズミというものや風船犬など不思議な生き物もたくさん出てくる。
なぜこれが1000年後なのか、そしてこれは本当に日本なのか。
知っている地名も出ているが、決定的におかしい世界。

いろんな違和感を覚えながら読み進めること200Pちょい。
一気に物語を加速させてくることがたまらん。

過去にいったい何が起こり、この違和感はなんなのかがようやく読者としてヒントを与えられる。

知っているようで、謎に満ちた世界であり、SFのようでもあり、冒険ものでもあり。
なにより物語をよく読む読者としてこれだけ不思議な世界を延々と読めるのはすごく素敵なことだ。
上巻500Pを読んでもまだまだこれはきっとプロローグに違いないとすら思えるのがまたとんでもなくスケールが大きい物語だよな…

【SF】ブレンパワード 3

本→SF/FT
10 /18 2012
ブレンパワード 3 記憶への旅立ち
斧谷稔
構成:富野由悠季
表紙イラスト:いのまたむつみ
ハルキ文庫
ブレンパワード〈3〉記憶への旅立ち (ハルキ文庫)ブレンパワード〈3〉記憶への旅立ち (ハルキ文庫)
(1999/02)
斧谷 稔、富野 由悠季 他

商品詳細を見る

「諦めるの? あたしは最後まで生きるわ。勇と、みんなと一緒に生きるために生きるの」

ブレンパワード 3』本文より

最終巻。
面出明美さんから斧谷稔に変更になった最終巻。
富野由悠季本人じゃないか(笑

親子や兄弟との軋轢。
敵対するオルファンとノヴィス。

いろんな敵対から和解していく。
そして今までの地球と同じように生命が育まれていく連鎖の描かれ方が、なんていうか、美しいSFだよな。
過去にVガンダムやZガンダムといった負のSFからは解放されたかのような物語だ。


現在ガンダムUCが次々映像化されていて、このブレンパワードの解説のあとで∀ガンダムの小説を書く福井春敏の解説も面白い。
10年以上前のアニメをめぐる歴史が垣間見える。
そう。あの頃アニメはあきらかなサブカルチャーだもんなー。
アニメファンというのがまだ「よくわからん何か」というようなジャンルだったのもまた懐かしいもんだ。


10年以上ぶりに再読してみたけれども、まだやっぱりこの物語をしっかり楽しむことができた。

【SF】ブレンパワード 2

本→SF/FT
10 /16 2012
ブレンパワード 2 カーテンの向こうで
面出明美
構成:富野由悠季
表紙イラスト:いのまたむつみ
ハルキ文庫
ブレンパワード〈2〉カーテンの向こうで (ハルキ文庫)ブレンパワード〈2〉カーテンの向こうで (ハルキ文庫)
(1999/01)
面出 明美、富野 由悠季 他

商品詳細を見る

「そうかしら。人間は誰だって、大切な人を持っているものよ。だから、生きていけるの。一人で生きていくのは、つらいし、怖いわ。ブレンパワードのようなオーガニック・マシンと呼ばれる存在だってそうなの。だから、私たちをパイロットとして選ぶのよ」

ブレンパワード 2』本文より

ブレンパワード」2冊目。
ほんとアニメに忠実。
無駄も隙もないけど、アニメを補完するわけではなく、まさに脚本通りに物語をなぞっている。
読みやすいから、これだけでもアニメ版がどのようなものであったのかよくわかる。

艦長の消失から、ネリーとの出会いまで。

親や兄弟との確執や、彼らとでさえコミュニケーションであったりお互いの気持ちが通じ合わないはがゆさ。
その対立をそのままオルファンとノヴィス・ノアの対立や、イサミファミリー間の対立、またジョナサンと母の対立、ブレンとグランの対立へと置き換えているのは面白い。

その対立を中和するネリー・キムの登場もまたお見事。
なぜオルファンがあって、ブレンやグランチャーがいるのか。
急速にSFというものから、どんどん優しい生命そのものの物語へと舵を切り始める。
そんな軸や世界観がしっかりしていたからこそ、とてもわかりやすく心に残る物語になっているのだろうねぇ。

【SF】ブレンパワード 1

本→SF/FT
10 /11 2012
ブレンパワード 1 深海より発して
面出明美
構成:富野由悠季
表紙イラスト:いのまたむつみ
ハルキ文庫
ブレンパワード〈1〉深海より発して (ハルキ文庫)ブレンパワード〈1〉深海より発して (ハルキ文庫)
(1998/12)
面出 明美、富野 由悠季 他

商品詳細を見る

「なにって、俺たちで、グランチャーを退けたんだろ? おまえのブレンパワードの扱い方、イエスだね!」

ブレンパワード 1』本文より

ブレンパワード」再読。
出た当時はスニーカー文庫じゃないんだとびっくりした記憶がある。

宇宙からきたオルファンを巡る、地球滅亡をかけての戦い。
というように見せかけて母と子の対立に母の母性など、「母」というテーマが満載。

SFというジャンルの中でのテーマの中の展開の仕方がやっぱ巧いなぁ。

TV版と同じ小区切りというのも、まさにノベライズの王道というよりも、アニメを見れない人のための構成。
1巻だけで9話まで収録しているから、ささっと読めて、内容も復習できるというのも読みやすくていいかもしれない。

大概は小説版でいろいろキャラクターの心情などを補完していたりするけど、これはまさに脚本通りだよなー。

【SF】虐殺器官

本→SF/FT
01 /15 2012
虐殺器官
伊藤計劃
ハヤカワ文庫JA
虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)
(2010/02/10)
伊藤 計劃

商品詳細を見る

ジョン・ポールが夢見ているのは、そんな廃墟と化した地球の姿なのだろうか。無人の宇宙ステーションとして太陽の周りをぐるぐる回り続ける、宇宙船地球号。異星人が立ち寄って、かつてここに文明があった痕跡を認めるも、その主人はすべて死に絶えて、ただ整然とした建築だけが地上に突き出ている。
ぼくは、その光景を想像して、不思議な安らぎに包まれている自分に気がついた。

虐殺器官』本文より

傑作すぎ。

SFの賞という賞をかっさらったのもうなづける。

近未来。
この近未来という設定もまたいい。
何十年も前に流行ったSFも現代に基づいて悲観的な未来を作り上げた。
この虐殺器官もまたしかり。
911以降の世界を基に独自の荒廃していく世界を描いていっている。
これがまた納得のいく世界なんだよな。
どこで内戦が行われていて、どの国がどう関わっているとかも、ね。

そして魅力的な主人公も暗殺者。
また最後に倒すべきもテロリスト。

なにが人に人を殺させるのか。
その人間の原罪的である部分へと深く深く沈んでいくような物語構成はどこか耽美だし、なによりも「読ませて」くる。

そしてこの未来世界や暗殺者たち、宗教や死後の世界といった精神世界を経て、解き明かしていく人間の姿っていうのがものすごく心に残った。
これはSFだ。
そして社会派な小説だ。

あぁもうこれはSFじゃないと描けない。
これを真面目に書こうものなら嘘くさくなることこの上ない。
SFだからこそ心に響いてくるものなのかもしれない。

【SF】トリガーマン!再

本→SF/FT
08 /17 2011
トリガーマン!再
火浦功
イラスト:高橋明
朝日ノベルズ
トリガーマン![再] (朝日ノベルズ)トリガーマン![再] (朝日ノベルズ)
(2010/12/17)
火浦 功

商品詳細を見る

殺るからには、完璧を期す。
キースの美学に、越後屋のまんじゅうは、絶対に欠かすことのできない要素である。

トリガーマン!再』本文より

『トリガーマン!』の最初に出たものに、2編加えた『1 2/5』版にさらに1篇追加した『トリガーマン!再』。

これで買うのは3回目。
イラストは新装版の1 2/5の時と同じ高橋明。

8年ぶりに読み返した。
そして新作に入っていたことにどきどきした。
が、新しい要素ってこれだけなんだよなー。

だが、しかし前回読んでから8年以上も経つと意外と覚えてない。
ってか前回読んだときはまだ10代後半。
そんな時だからこのトリガーマン!のやってることが結構必殺仕事人のすちゃらか版ってことに気づいていなかったり。

今よんでみたらかなりこてこてじゃないか。
そしてスチャラカってのがなんなのか分かる年になってきたもんだから、それはそれで面白い。

SFなのにスチャラカってのがまたなんとも脱力感あふれてていいんだよなー。

【SF】サマー/タイム/トラベラー 2

本→SF/FT
05 /13 2011
サマー/タイム/トラベラー
Summer Time Traveler

新城カズマ
イラスト:鶴田謙二
ハヤカワ文庫
サマー/タイム/トラベラー2 (ハヤカワ文庫JA)サマー/タイム/トラベラー2 (ハヤカワ文庫JA)
(2005/07/21)
新城 カズマ

商品詳細を見る

悠有はどこにもいない。ぼくは時間跳躍者じゃない。ぼくこそが、おいてけぼりだ。初めておいてけぼりになったんだ。

サマー/タイム/トラベラー 2』本文より

この表紙にもあるまさに『夏への扉』の先にあったものが描かれるタイムトラベル青春SF群像劇『サマー/タイム/トラベラー』完結。

未来へ少しだけ飛べる少女の能力。
能力といっても制御できるわけでもない。
なんとか活用しようと試行錯誤したり、タイムトラベル小説を分析したり。

白熱する少年少女たちの議論が楽しかった1巻目から一転、一気に本格的にタイム・トラベルへ向けてのSFへと変貌する。

この間からのタイムトラベルをどう活用するのか。
取り残された側の孤独。
頻発する事件。

SFに限らず、周りに取り残される孤独感との組み合わせがあまりに素敵な発想すぎる。
そして過去から未来へと続いていく時間軸とのかかわりを描いていく世界の変容も考えさせられる。
「過去を調べる/知る」というタイムトラベルともいえること、その延長上にある現在、自分たちの周りの生き方で変わる未来。
いまこそ、現在に生きていることそのものなんだよなぁ。
そんな当たり前のことに気づかされる。

タイムトラベルに想いを馳せた少年少女たちのありありとした青春小説を堪能させていただきました。
いつまでもSFに囚われ、時間や宇宙に心を囚われた子供の時の情熱をずっと持ち続けている大人にこそかなりぐっとくる小説でした。

【SF】サマー/タイム/トラベラー 1

本→SF/FT
05 /13 2011
サマー/タイム/トラベラー
Summer Time Traveler

新城カズマ
イラスト:鶴田謙二
ハヤカワ文庫
サマー/タイム/トラベラー (1)  ハヤカワ文庫 JA (745)サマー/タイム/トラベラー (1) ハヤカワ文庫 JA (745)
(2005/06/16)
新城 カズマ

商品詳細を見る

「まあ、それもいいだろうなあ。……できるていうのと、やり遂げるていうのは、だいぶん違うことだもんでなあ」
――彼の最後の一言は、天の邪鬼の隣にちょこんと座って、ずいぶんと長いあいだ動こうとしなかった。

サマー/タイム/トラベラー 1』本文より

新城カズマの『サマー/タイム/トラベラー』1巻。

タイムトラベルでネコと夏の表紙。
ああもうこれはなんと狙いすぎな。
わかってやがる。

3秒だけ未来に行った少女とSF好きの少年たちのSFにかける思いの数々。
実に様々なSF小説やマンガを読み、議論して。
そんな田舎の町でのささやかなひと時。
片田舎の町という限られた土地の中でのゆるやかな日常と、青春時代というかモラトリアムというか。
未来への希望が儚く、それでもこの町で生きているというような描写が、ねぇ。

そんな誰もが経験する青春時代の狭い世界での日常風景に癒された。

さて3秒間の未来を経験したことから、いかにして時間跳躍をするのか。
SFというSFの分析の面白さもそうだけれども、物語の根幹がしっかりしているので、どう展開していくのか楽しみな小説。

【SF】海の底

本→SF/FT
11 /20 2010
海の底
有川浩
角川文庫
海の底 (角川文庫)海の底 (角川文庫)
(2009/04/25)
有川 浩

商品詳細を見る

「次に同じようなことがあったら今より巧くやれるようになる、そのために最初に蹴つまずくのが俺たちの仕事なんだ」

海の底』本文より

こんなセリフを国を守る人から聞かされたら、今のままでいいのだろうかと思う。

自衛隊3部作最終章は海上自衛隊の活躍する『海の底』。

巨大ザリガニが横須賀に来襲。
警察も自衛隊もなすすべなく敗れていく。

そんな緊急事態を日本の様々な場所を舞台にして描くSFシミュレーション小説。

お見事。
このびりびりくるような緊張感。
素晴らしいとしか表現しようがない。

最前線での警察の活躍に未知の敵に対しての国家や他国家にマスコミに一般市民。
ネット上から漏れ出る情報。
孤立した潜水艦の奮闘と潜水艦内での自衛官と子どもたちによるサバイバル。
すべてが同時に進行し、すべてがリアルに感じられる描写。

なんだよ、これは…
巨大ザリガニだけがSFなだけで、他がリアルすぎる。
例えば今まさに対抗する術の持たない巨大ザリガニでも上陸しようもんなら、この小説のように展開される可能性って十分に考えられるとすら思えてくる。

国家を守るということはどういうことか。
「その時」が来たとき自分たちには何ができるのか。
そうしたことすら考えざるを得ない。

かといって重苦しいだけじゃなく、次々とページを捲りたくなるくらいの面白さがこの本にはあった。


この本の中でも主人公格のふたりの自衛官の子どもたちを守る背中はものすごくカッコよかった。
背中で語るとはこのことか。
惚れます。こうありたいわ…

【SF】海を見る人

本→SF/FT
04 /25 2010
海を見る人
ONE WHO LOOKS AT THE SEA

小林泰三
カバーイラスト:鶴田謙二
早川書房 J-コレクション
海を見る人 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)海を見る人 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)
(2002/05)
小林 泰三

商品詳細を見る

歴史を完全に正しく理解することは人間には不可能なんだ。
こうしている間にも世界のあちらこちらで、てんでんばらばらにいろんなことが起きている。
しかも、全部が有機的に結びついて相互作用しているときている。
それらを何一つ余すことなく、論うことなんてできるはずがない。
この一瞬でさえそうなのに、過去の膨大な時間の中で起こったことならなおさらだ。

海を見る人』本文より

この最初の1ページ目で出くわすこの言葉。
あとから読み返すとこの言葉ほどこの本を表している言葉もないだろう。

小林泰三のハードSF短編集『海を見る人』。

濃厚なことこの上ないSF。
ものすごく想像力と浪漫がかきたてられた。

時間と空間と意識をめぐるSFに没頭させられます。


収録話:
・「時計の中のレンズ」
・「独裁者の掟」
・「天獄と他国」
・「キャッシュ」
・「母と子と渦を旋る冒険」
・「海を見る人
・「門」

【FT】青の聖騎士伝説

本→SF/FT
01 /26 2010
青の聖騎士伝説
LEGEND OF THE BLUE PALADIN

深沢美潮
イラスト:米田仁士
メディアワークス
青の聖騎士伝説―LEGEND OF THE BLUE PALADIN青の聖騎士伝説―LEGEND OF THE BLUE PALADIN
(2002/02)
深沢 美潮

商品詳細を見る

本当なら、二十歳になった頃、家へ帰る予定だった。兄たちも修行の旅に出たが、二十歳の頃、帰郷し、ロンザの騎士団に入団した。
そうしなかった本当の理由をクレイ・ジュダ自身もはっきりと言うことはできなかった。
まだ自分にはしなければならないことがある、自分はまだ何もしていないという思いが強かったからだ。

青の聖騎士伝説』本文より

深沢美潮の本を読むのなんて何年ぶりだろう。
5年?6年?
いや、もっと久しぶりのような気がする。

青の聖騎士伝説』。
タイトルだけでびくっとし、イラストで何度か手に取りそうになった。

深沢美潮の『フォーチュン・クエスト』シリーズはファンタジーをよく読んでいた時期に出会った大切な小説だし、米田仁士はというと初期の『ソード・ワールド』やFalcomのゲームの『ソーサリアン』で見事なファンタジー世界を構築していて魅了してくれる絵師だったから。

もちろんこのタイトル。
『フォーチュン・クエスト』のクレイの祖父であり、『デュアン・サーク』にも出てくる伝説的な人物。

そんなエピソードだからドキドキしながら読んだ。


もう…
満足。

単体で読んでも十分楽しいし、なにより優しい物語のひとつひとつに魅了された。
読み終わるのがもったいないと思えるファンタジーも久しぶりでした。

【SF】アイの物語

本→SF/FT
09 /11 2009
アイの物語
Tales of One Thousand and One Nights for Machine and Man

山本弘
角川文庫
アイの物語 (角川文庫)アイの物語 (角川文庫)
(2009/03/25)
山本 弘

商品詳細を見る

「ヒントぐらいくれ。その候補者に選ばれる資格はなんだ?」
「物語の力を知っていること」
「物語の力?」
「フィクションは『しょせんフィクション』ではないことを知っていること。それは時として真実よりも強く、真実を打ち負かす力があることを」

アイの物語』本文より


山本弘の『アイの物語』。
山本弘といえば妖魔夜行やサーラの冒険というイメージをもっている(えらい古いのばっかですね)。
SF作家というよりはファンタジー系かなってイメージ。
それがまたなぜこれを読むことになったのか。
いや、経緯はもはやどうでもいい。
偶然手に取ったことを幸せに思った。

とにもかくにもこれが読書家という読書家、ひいてはSF好きという人に対して突きつけた挑戦状のような本だった。
さぁ、どう思う?ってね。


SF好きという人にとって、このジャンルの持つ負の要素はよくわかるものだと思う。
現実世界の対比としてのSFというジャンルを使った名作は数多くある。
だからこそ人類の発展した先にある危惧を表現した本も多い。

そしてこの本は人と機械と現実と仮想の話。

あぁ。
いつものね。
そう思って読み始めた。

機械と人。
そして仮想と現実。
これは間違いなくズーンと来るようなところに着地するんだろうか。

そんな要素をふんだんにちりばめた短編の間に挿入される主人公とアイビスのやりとりと、アイビスという機械が語る物語はやがてSFという枠を超える。
そう思えた。

すげぇ!

これが物語、ひいては「小説」というものか!?

ジャンルの枠引きはもはやどうでもいい。
読書家と自称する人に読んでみて欲しい。
そんでもって語ろうぜ、ってそう思えた本です。


収録話:
第1話 「宇宙をぼくの手の上に Space on My Hands」
第2話 「ときめきの仮想空間 An Exciting Imaginary Space」
第3話 「ミラーガール Mirror Girl」
第4話 「ブラックホール・ダイバー Black Hole Diver」
第5話 「正義が正義である世界 Justice Are on Our Side」
第6話 「詩音が来た日 The Day Shion Came Here」
第7話 「アイの物語 A Tale of i」

【SF】スターライト☆ぱ~ふぇくと!

本→SF/FT
08 /18 2009
スターライト☆ぱ~ふぇくと!
火浦功
カバーイラスト:ゆうきまさみ
ソノラマノベルス
スターライトぱ~ふぇくと (ソノラマノベルス)スターライトぱ~ふぇくと (ソノラマノベルス)
(2006/12/16)
火浦 功ゆうき まさみ

商品詳細を見る

「おれのことなら、ボギーって呼んでくれ」
と、その男は言った。
型どおりに、折れ曲がった煙草を、
型どおりに、口の端っこにくわえて、
型どおりに、少し顔をしかめながら、
型どおりに、気取りまくった声で。
女は、ポカンと口を開けて、男の横顔を見つめた。
まじまじと。

スターライト☆ぱ~ふぇくと!』本文より

火浦功のスターライトシリーズの合本版『スターライト☆ぱ~ふぇくと!』。
結局4作目ってでなかったな(笑
今までの旧作3作に短編と書き下ろし短編を収録。

ハードボイルドにじゃがいもとニンジンと玉ねぎをメインに据えたSFです。
…SFなんですってば。
しかも面白いんだって。
懐かしさゆえのえこひいき分も含んでるけど(笑

すちゃらかだけど本格SF分を入れつつ、そんでもってハードボイルドを気取りまくる主人公ボギーと冒険という名の非日常に憧れまくるのジギーのハードボイルドっぽさがなんともよい。
いいったらいいんです。

それに敵役もかなり素敵。
世界征服を企むってところがまずイイ!
もちろん側近には「博士」もいるし、「女幹部」も「強化人間」もいる。
なんという鉄板っぷり。

でもすちゃらか。
あぁ、やっぱり火浦功だ。
それでもしっかりバランスが取れているのが不思議。


15年ぶりくらいに読んだけどやっぱり面白かった。


収録話:
・ 「スターライト☆だんでぃ」
・ 「スターライト☆こねくしょん」
・ 「スターライト☆ぱにっく!」
・ 「スターライト☆すぺしある 博士の奇妙な愛情」
・ 「スターライト☆ぐらふてぃ 馬鹿には見えない銃を持つ男」

【SF】美亜へ贈る真珠

本→SF/FT
04 /04 2009
美亜へ贈る真珠
梶尾真治
ハヤカワ文庫
美亜へ贈る真珠―梶尾真治短篇傑作選 ロマンチック篇 (ハヤカワ文庫JA)美亜へ贈る真珠―梶尾真治短篇傑作選 ロマンチック篇 (ハヤカワ文庫JA)
(2003/07)
梶尾 真治

商品詳細を見る

「彼は、もう私のことを忘れているかもしれません。肉体的時間、新陳代謝だけが遅くなって、精神的、感覚的な時間経過は外部の私達とそう変わらないとしたら、もう私のことなど、忘れてしまっているのではないでしょうか」

美亜へ贈る真珠』本文より

梶尾真治のデビュー作『美亜へ贈る真珠』を収録した短編集。
解説は山田正紀。

短編傑作選、しかもロマンチック篇と銘打たれただけあって名作揃い。
もう切なすぎる。

時間と距離と愛。
これらにSFという素材を入れたら余計に愛が際立った、まさにそんな短編が揃っていた。

「黄泉がえり」や「この胸いっぱいの愛を」だけが梶尾真治の真骨頂じゃないのだよ(笑
むしろ短編の方が好みです。

なんだろうな…
やはりこの作者の「切ない系」はかなりぐっときます。
成就する愛とかじゃなくて、むしろ決して結ばれない愛というかそんなの多いよな…
でもそれだけじゃ終わらない、さらに二転三転させてくるのだからあなどれないです。

【FT】ラインの虜囚

本→SF/FT
02 /17 2009
ラインの虜囚 The prisoner of the Rhine
田中芳樹
イラスト:鶴田謙二
ミステリーランド
ラインの虜囚 (ミステリーランド)ラインの虜囚 (ミステリーランド)
(2005/07/07)
田中 芳樹

商品詳細を見る

「わたしは爵位も領地も財産もいりません。わたしの故郷はカナダなんですから。わたしはただ、父の名誉を守りたいだけです。おわかりいただけますか?」

ラインの虜囚』本文より

「かつて子どもだったあなたと少年少女のための」田中芳樹による『ラインの虜囚』。
鶴田謙二イラストっていうのと田中芳樹によるフランスとドイツを舞台にした話というだけで興味を持って読んでみたのだが…

おもしろい!
ナポレオンの死後9年後にナポレオンがセントヘレナ島で死亡したというのはあくまで虚偽であり実は生きているのではないかという話。
その真偽を確かめるための少女と3人のオッサンによる冒険がはじまる。

登場人物もいろんな聞いたことのあるような人ばっかり(笑
少女コリンヌ、作家アレクに剣士のモントラシェに海賊ラフィット。
その昔、子どものときにいろんな冒険小説を読んだことがある人にはニヤニヤとできること間違いなし。
逆にこれをきっかけに中世ヨーロッパ世界に浸るもよし、多くの文学作品に興味をもつもよし。

言うなれば読書体験をさらに広げてくれる本。
そして冒険と世界史に残る謎に挑んだいい作品であると思う。
昔に読んだ本の登場人物たちと久々に再会したかのような読書体験ができた。

【FT】ブレイブ・ストーリー

本→SF/FT
12 /22 2008
ブレイブ・ストーリー BRAVE STORY 上中下
宮部みゆき
イラストレーション:いとう瞳
角川文庫
ブレイブ・ストーリー (上) (角川文庫)ブレイブ・ストーリー (上) (角川文庫)
(2006/05/23)
宮部 みゆき

商品詳細を見る

「母さん、僕は旅をしてるんだ。自分の運命を変える旅を」

ブレイブ・ストーリー 中』本文より

宮部みゆきの『ブレイブ・ストーリー』。
解説は大原まり子。


ゲームが好きで、友達づきあいもいい三谷亘。
家族の中もよくて、父親とも母親ともよく話したりする。
しかし、あるとき父親が外に女性を作り、家を出て行ってしまう。
突然の家庭の崩壊。
そのときあらゆる困難を乗り越えてでも、運命を変えたいと思う者の前に現れる「幻界」への扉が亘の前に開き…


全3巻を一気に読了!
ものすごくおもしろかった。

ファンタジー要素もたいへん面白い。
それ以上に、これでもかというくらいに現実パートに時間を割き、少しずつ少しずつ幻界と現実をリンクさせていくさまは見事なもんです。

亘は現実/幻界を旅することで成長していき、この旅の終焉に待ち受け自らの運命を見出していく。
その過程で仲間とのやりとり、幻界で会う様々な事情を抱えた人との出会い、悪人との出会い。

ファンタジー世界でありながら、現実世界となんら変わらない。
いろんな人がいて世界が構成されている。

その中で亘自身が本当に望むものはなんなのか、自分の生きている世界ってなんなのかを向き合い模索しながら成長する様にはどきどきしながら見守っていくかのように読めた。
そうだよな。世界、社会ってのはなんとも理不尽で自分勝手だったりする。でも絶妙なバランスでなりたってるんだよなぁ。


様々な冒険を経て、ラストを迎えたときの亘の行動にはじーんと来た。
まったく……いい男になりやがって (;´д⊂


大人から子供まで、誰もがわくわくしながら読めるそんなファンタジー小説だと思います。

∀ki(あき)

自由に生きてます。
色々読んだり見たりしてます。

リンクやトラックバックは自由にどうぞ。