【ミステリ】春から夏、やがて冬

本→歌野晶午
09 /28 2014
春から夏、やがて冬
歌野晶午
文春文庫
春から夏、やがて冬 (文春文庫)春から夏、やがて冬 (文春文庫)
(2014/06/10)
歌野 晶午

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「あの世で二人に会える。今の希望はそれだけだ」

春から夏、やがて冬』本文より


歌野晶午の季節の名がタイトルにつくシリーズの1冊『春から夏、やがて冬』。
また、これは…
なんの説明すらも不要。
あらすじすらも何かネタバレを含んで説明しそうだ。

ラスト付近で訪れる急転直下の展開。
さらに一転。

妻と娘を亡くした男と、日常がもはや崩壊している少女の出会い。
それがまさか、あんだけ驚愕の展開を見せてくれようとは。

妻と娘に会うためにあとは死ぬだけと日常を無味乾燥に生きる男と、家庭内の暴力などに苦しむ少女の、ふたりの本来の生きる目的。
その交差のさせ方が絶妙。

これがミステリの面白さだ。
二度読みしろといわんばかりに。

【ミステリ】舞田ひとみ11歳、ダンスときどき探偵

本→歌野晶午
11 /20 2010
舞田ひとみ11歳、ダンスときどき探偵
歌野晶午
光文社文庫
舞田ひとみ11歳、ダンスときどき探偵 (光文社文庫)舞田ひとみ11歳、ダンスときどき探偵 (光文社文庫)
(2010/07/08)
歌野 晶午

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「ところで、いま電話している最中に思ったのだけど、いや、べつに電話の内容と関係あるわけじゃなくて突然閃いたのだけど、そういうことってあるだろう?問題解決の糸口が、その問題についていっしょうけんめい考えている時ではなく、食事や入浴の時にふと思いつくってこと」

舞田ひとみ11歳、ダンスときどき探偵』本文より

ぐぅ。
こんな大人になりたい。

そしてこんなひーちゃんのような時々生意気で慕ってくれる娘っていいよな。
連作短編『舞田ひとみ11歳、ダンスときどき探偵』。

連作です。
歌野さんです。
もちろん独立した短編でありながら軽く読めて、時々凶悪な事件だけど悪すぎる後味もなく。
一編一編のの面白さもあるけど、それ以上に短編同士の絡みや1冊の本としての構成が非常に面白い。
ちょっとほっこりミステリをまったり楽しむ系かと思いきや、いい読後感を得られようとは。


ひーちゃんの可愛さしかり、彼女を支える回りの大人たちの優しさや大人としての在り方に心を打たれた。

【ミステリ】さらわれたい女

本→歌野晶午
12 /06 2008
さらわれたい女
歌野晶午
角川文庫
さらわれたい女 (角川文庫)さらわれたい女 (角川文庫)
(2006/01/25)
歌野 晶午

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「私を誘拐して、主人に脅迫電話をかけてほしいんです」
もう一度つぶやき、女はゆっくり顔をあげた。
ガルボ・ハットのつばが、ふわりと揺れた。
それが、小宮山佐緒里という女との出会いだった。

さらわれたい女』本文より

1991年に書かれた『さらわれたい女』。
解説は法月綸太郎

えぇ。そのまんま「さらわれたい女」です。
誘拐を便利屋に持ちかけた女。
そして便利屋は実際に誘拐の電話を女の主人であり、会社の社長へと電話をかけるのだが。

あまりに完璧な誘拐計画。
だが、その誘拐はあまりに予想外な方向へと向かって爆走していく。


途中からページを捲る速度が異様にはやくなっていく。
先が気になって気になって仕方ない。

やはり歌野晶午だけにただの誘拐犯罪だけに終わらないとは予想していたが…

ただの「誘拐」が劇的に変化してからの展開が面白すぎる!

【ミステリ】ジェシカが駆け抜けた七年間について

本→歌野晶午
11 /23 2008
ジェシカが駆け抜けた七年間について
歌野晶午
角川文庫
ジェシカが駆け抜けた七年間について (角川文庫 う 14-5)ジェシカが駆け抜けた七年間について (角川文庫 う 14-5)
(2008/10/25)
歌野 晶午

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「競技場で殺人を実行するのは不可能です。分身でもいないかぎり」

ジェシカが駆け抜けた七年間について』本文より

歌野晶午の『ジェシカが駆け抜けた七年間について』。
解説は千街晶之。

またえらく長いタイトルだよな(笑
『葉桜~』もそうだけど。

さて、どういったもんか。
申し分なく面白い。
しかし、それをどう説明したもんか。


のっけから語られる「もし分身がいたら」という話。
西澤保彦みたいなミステリへと突入するのかと思ったのも少しだけの間。
それ以降はジェシカのいる陸上競技のクラブチームの話がたんたんと語られ、実際に死人がでるのは中盤に入ったくらいだろうか。

そこからいわゆるミステリのように探偵が出てきたり、謎解きがされるわけでもない。

ただ漠然と「謎」だけが置かれる。

それこそ「分身」でもいない限り実行不可能。


謎はそれとなく、しかし整合性のある解答が読者の前に提示される。

そういうことか!?という驚きというよりは「なるほど。こういうことだったのね」という感じ。
謎が放置されたまま頭のなかがもやもやしているところに、手品のタネを明かしてもらったときのように納得できた。

それがまた気持ちいい。
ミステリらしさはほとんど感じられないが、実にミステリ的に紐解かれる内容が素敵な作品でした。

【ミステリ】長い家の殺人(新装版)

本→歌野晶午
06 /03 2008
長い家の殺人(新装版)
歌野晶午
講談社文庫
長い家の殺人 (講談社文庫 (う23-11))長い家の殺人 (講談社文庫 (う23-11))
(2008/04/15)
歌野 晶午

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冗談じゃない! これは殺人事件なんだぜ。百パーセントの推理が組みあがるまでは何もいわない、いえるもんか。

長い家の殺人(新装版)』本文より

ごもっとも。
こういう文が含まれることが時代を感じさせるよなぁ。

歌野晶午の88年のデビュー作『長い家の殺人』の新装版。
解説はノベルス版の時と同じ文章である島田荘司のもの。

新装版刊行にあたってという歌野晶午による序文が含まれた他には誤字脱字修正以外はほとんど変更点はなしだそうです。


消失したはずの死体が元の場所に戻る。
そんなメイントリックを使ったミステリ。


なんか読んでいてひどく懐かしい感覚に浸れた。
ちょうど新本格ミステリのブームが訪れるもっとも初期。
その頃だけに今のようにややこしかったり、ミステリ以外の要素を多く含んだり。

そういうこともほとんどなく、ただ単にミステリを楽しめる本だと思う。
コンパクトな内容で、かつ楽しめる。
それでいてトリックもかなり大胆なものでした。


昨今の歌野晶午の作品とはかなり作風が違って驚いた。
ここまで真正面からミステリを描いていた時期もあったのか…

あと音楽に詳しかったのは意外だった。

【ミステリ】安達ヶ原の鬼密室

本→歌野晶午
12 /14 2007
安達ヶ原の鬼密室
歌野晶午
講談社文庫
安達ヶ原の鬼密室 (講談社文庫)安達ヶ原の鬼密室 (講談社文庫)
(2003/03)
歌野 晶午

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「いえ、そうではないのです。もしも、万が一ですよ、真相がわからなかった場合には、適当なお話を作っていただきたいのです」

安達ヶ原の鬼密室』本文より引用

葉桜の歌野晶午の『安達ヶ原の鬼密室』。

昭和20年代に起きた「鬼」が起こしたという一晩で7人が殺された事件などいくつかの話をまとめた構成の『安達ヶ原の鬼密室』。
ある種、ひとつのまとまりはあるんだけども、1冊の本としてこれはどうかな…、と。

最初の事件が解決される直前で次の話に移行し、その話のラストが分かるのはずっと後っていうのはな…
確かに事件自体がとても魅力的なものだから、続きがどうなるんだよーーというふうにはなるんだけれども、いざ解決編を読むとところどころ忘れていたりしたのが残念。

一気に一冊読めるような時間がある時に読めたらとても楽しめたとは思うんだけども。

【ミステリ】家守

本→歌野晶午
09 /07 2007
家守
歌野晶午
表紙イラスト:松本圭似子
家守 (光文社文庫)家守 (光文社文庫)
(2007/01/11)
歌野 晶午

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声がする。
―オマエガイケナイノダ
頭の中で繰り返される。
―オマエガイケナイノダオマエガイケナイノダオマエガイケナイノダオマエガ

家守』本文より引用


歌野晶午の連絡短編集『家守』。
また歌野晶午orz
いや、おもしろいからいいんだけども。
母から次々に貸される歌野晶午ものは多分これでラストのハズ。


収録作品
・人形師の家で
家守
・埴生の宿
・鄙
・転居先不明


表紙からして('A`)
気持ち悪いような雰囲気がにじみ出ているが、よくこの本を一言で表したような感じに仕上げてきたよなぁ。
まさにこんな感じ。
家に囚われ、同じ家に住んでいても理解しあえないかのように背を向け合っているとことかすっごくいい。


収録されている短編はどれも恐ろしく不気味。
ある一点から急に日常から非日常に突き落とされたような感じがする話が多かったように思う。

本のタイトルでもある『家守』が最もよく表しているように、どれも『家』が重要な役割を果たしている。
そしてそんな『家』の住人たちはみな何らかの理由で屈折し、捻じ曲がっていく。
傍から見れば、彼らは何の変哲もない普通の人間なのだが。

そしてそんな非日常に至る人間ドラマがどれも秀逸だった。
特に最初の2編「人形師の家」や「家守」が。

【ミステリ】世界の終わり、あるいは始まり

本→歌野晶午
06 /20 2007
世界の終わり、あるいは始まり
The End of the World, or the Beginning.

歌野晶午
角川文庫
世界の終わり、あるいは始まり (角川文庫)世界の終わり、あるいは始まり (角川文庫)
(2006/10)
歌野 晶午

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顔見知りのあの子が誘拐されたと知った時、
驚いたり悲しんだり哀れんだりする一方で、
わが子が狙われなくてよかったと胸をなでおろしたのは私だけではあるまい。



歌野晶午の「世界の終わり、あるいは始まり」。


自分の子供がもしかしたら世間で騒がれている連続誘拐殺人事件の関係者かもしれない。
いや、もしかしたら犯人なのかもしれない。
子供はまだ小学生。
未来に夢を持っている我が子に限ってそんなことはありえない。


そんなショッキングな場面からはじまる物語。

あぁもう。
またか。
また歌野晶午の本だ。
下手に内容を語れるものじゃなかった。


親から見た心理はすごくおもしろかった。

親って子供のことをどれだけ知ってるだろう。
自分が子供のときっていうのもあんまり学校のことは親に話さなかった気がする。
話したのは結構表面的なこととか、おもしろかったこととか。
もちろん話さなかったことの方が圧倒的に多い。
そりゃあ秘密だっていっぱい持ってた。
絶対親にもばれてない(笑
親の気持ちなんて全然考えられてなかった。
そんなに器用でもなかったし。

ミステリとして、そしてこの本自体に隠された仕掛けも最高に楽しめるんだけど、そのほかにも「親と子」ってなんだろうって考えさせられた。

以下ネタバレあり。

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【ミステリ】ガラス張りの誘拐

本→歌野晶午
06 /11 2007
ガラス張りの誘拐
歌野晶午
角川文庫
ガラス張りの誘拐 (角川文庫)ガラス張りの誘拐 (角川文庫)
(2002/05)
歌野 晶午

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警察が私の言葉すべてを公表するとはかぎらない。それなのにメディアは、すべてを知っているかのような顔をして私を分析し、批判する。結果、世に出て行く私と真の私の間にずれが生じる。これでは憶測飛び交う現在の状況となんら変わらないではないか。



歌野晶午の『ガラス張りの誘拐』。

その名のとおり誘拐事件を扱ったミステリなのだが…


なぜか解決編からはじまる。
犯人の自供。
なぜ自分は殺人に至ったか、その心情を警察に捕まる前に手紙でマスコミに流した。


おいおいおい、解決編からはじまるのかよ。
そんな不思議な構図。
しかし、犯人は誰なのかは分からない。
それでも、続く事件。
そして誘拐事件へ。


ポカーン。
こういうことだったのかよっ。
だから自供からはじまるのか…


歌野晶午作品を読むのは2作目だけど、こういう叙述系のが多いんだろうか。
あと1作は読む予定。

【ミステリ】葉桜の季節に君を想うということ

本→歌野晶午
05 /15 2007
葉桜の季節に君を想うということ
歌野晶午
文春文庫
葉桜の季節に君を想うということ (文春文庫)葉桜の季節に君を想うということ (文春文庫)
(2007/05)
歌野 晶午

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『でも』は言うなよ



このセリフ結構好きです。
恐ろしく印象的なシーンだった。


文藝春秋のミステリーマスターズから出ていた『葉桜の季節に君を想うということ』が文庫化。
2004年の「このミス」こと「このミステリーがすごい!」の1位。


当然3年前には噂はそりゃもう聞き及んでいた。
けれども単行本ということから読むのを後回しにしているうちに3年が過ぎて文庫になった。

ここまでくればもう買って読むしかあるまい。

帯を見る。

「あまり詳しくはストーリーを紹介できない作品です」

…………そこまでなのか。

心して読んでみた。


いや……コレは…………

確かに説明できない。
あらすじを言った瞬間にネタバレしそうで怖い。
いや、違う。
真相を知った上であらすじをうまいこと語れるのだろうか。

そんな全編がミステリのような本である。


本格ミステリか?と問われるとそうだとは言い切れないような。
でも、これほどまでに騙されることに対して狂喜乱舞でえぇぇぇぇえぇ、となれるようなそんな本だった。

これがあの「葉桜」か。
納得した。

そりゃ大抵いろんなところでみる簡単な書評が高評価なわけだ。


未読のミステリ読みは一度は読んでみるべきものかもしれません。

∀ki(あき)

自由に生きてます。
色々読んだり見たりしてます。

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