【小説】ティファニーで朝食を

ティファニーで朝食を
Breakfast at Tiffany's

トルーマン・カポーティ Truman Caporte
訳:村上春樹
新潮文庫
ティファニーで朝食を (新潮文庫)
トルーマン カポーティ
新潮社
売り上げランキング: 15,650

「ミス・ホリデー・ゴライトリー」、その下の隅に「旅行中」とあった。それはまるで歌の文句みたいに僕の耳に残った。「ミス・ホリデー・ゴライトリー、トラヴェリング」

ティファニーで朝食を』本文より


村上春樹訳で再読。
龍口直太郎版とはまた違った趣だった。

映画も見て旧訳も読み、今回読むと自由さ、ホリデー・ゴライトリーがどこにもいつかず、誰のもとにいるわけでもなく。
決して彼女は幸せをつかむかどうか、掴まないだろうとは思ううんだけれども、彼女の持つ自由さには単純に憧れる。
人生を旅行中と称する彼女の身勝手さ、地に足がつかない、誰にも彼女を束縛できない、その自由な気質。
でも自由さゆえの危ういその感じにこそ惹かれるものがある。

このホリーに振り回される主人公の作家の目線が今回気になった。
ホリーを通して人生を見て、憧れながらも手が届かずとも、彼女と反比例するがごとく地に足がついていく。
なんだろうなぁ。
この人生の観方っていうのがカポーティ的というか、必ずしも分かり合うわけではないけれども、彼は希望というか愛というか主人公が人生を生きる糧のような使命感を見つけたし、自由の象徴である彼女の猫もおそらくは生きる場所を見つけて生きている。
じゃあ彼女はどうなんだというと、先述したように多分幸せじゃない、たぶんトラブルだらけ。
でもきっとあの自由さをもってしたたかにもし仮の場所だとしても生きているだろう的な予感こそが、この本の持ち味なんかな。
いい生き方をしてるよなぁ。理解はされにくい生き方だろうけど。

収録話
・「ティファニーで朝食を」Breakfast at Tiffany's
・「花盛りの家」House of Flowers
・「ダイヤモンドのギター」A Diamond Guiter
・「クリスマスの思い出」A Christmas Memory

tag : ティファニーで朝食を トルーマン・カポーティ 村上春樹 新潮文庫

【小説】叶えられた祈り

叶えられた祈り
Answerd Prayers

トルーマン・カポーティ Truman Capote
訳:川本三郎
新潮文庫
叶えられた祈り (新潮文庫)叶えられた祈り (新潮文庫)
(2006/07)
トルーマン カポーティ

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「じゃあ何のことを書いたんだ?」
「幻想としての真実」
「そして、真実としての幻想か?」
「最初に私がいったほうだ。きみがいったのはまたべつの問題だ」

叶えられた祈り』本文より

トルーマン・カポーティの遺作『叶えられた祈り』。
未完。

「冷血」で各界から絶賛され、一躍有名人・セレブの仲間入りを果たしたカポーティ。
しかし、そこから先に何もかけず、ドラッグと酒におぼれ、
友人が次々に去り、この本に収録されている「ラ・コート・バスク」の発表によってセレブの世界からも追放された。
そんな中で彼が書きながら客死した作品がこれ。

どことなくノンフィクションノベル。
それこそが持ち味であり、前作を彷彿とさせる。
しかしあくまで創作物。だけれども見る人が見ればこれは実話を入れすぎているらしい。
ゆえにこの本でモデルとされた人が自殺したとか。


どことなく孤独な物語だった今までと同様、今度は多数の人の中にあってどこか孤独。
心においても身体においても。
そしてどことなくセレブの世界というのを見下しているような気すらする。

それにしてもこの物語はどこにたどり着こうとしていたのだろう。
書けずに悩んで悩んでたどりついた作品としてぜひ読んでみたかった。


巻末のカポーティの編集者と訳者による解説はすごく読み応えがある。

tag : 叶えられた祈り トルーマン・カポーティ 川本三郎 新潮文庫

【小説】草の竪琴

草の竪琴
THE GRASS HARP

トルーマン・カポーティ Truman Capote
訳:大澤薫
新潮文庫
草の竪琴 (新潮文庫)草の竪琴 (新潮文庫)
(1993/03)
トルーマン カポーティ

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だが、ああ、自分の本性を見すかされまいと、お互いに身を隠すのに費やすエネルギーときたら!

草の竪琴』本文より

カポーティの長編2作目。

またしても人間関係のややこしさというか、繊細さというか、壊れやすさというか。
かといって前長編の時のような直接的に訴えかけることもなく、より客観的により繊細になったような感じがする小説だ。
しかも16歳の少年が主人公。
ああもう。
カポーティのもっとも得意とするような内容を再現する年齢だよな。

タイトルのように草の揺れるさま=人のささやく声すら聞こえてくるような騒々しさ。
決して涼やかとは言えないあたりがカポーティだよなぁ。

tag : 草の竪琴 トルーマン・カポーティ 大澤薫 新潮文庫

【小説】冷血

冷血
IN COLD BLOOD

トルーマン・カポーティ Truman Capote
訳:佐々田雅子
新潮文庫
冷血 (新潮文庫)冷血 (新潮文庫)
(2006/06)
トルーマン カポーティ

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本書の素材は、わたし自身の観察によるものを除けば、すべて、公の記録か、直接の関係者とのインタヴュー、それも多くは相当の長期にわたって何度となくなされたインタヴューから得られたものである。

冷血』謝辞より

トルーマン・カポーティによるノンフィクション・ノベル『冷血』。
カンザスで起きた一家惨殺事件を取材し、小説化したもの。

小説という形態はとっているものの、ほぼ客観的に描かれており、また実際に起きた事件に対して5年と言う歳月を費やしただけに相当な臨場感が味わえた。

被害者の隣人・知人・裁判に関わった人。
また、犯人にもインタヴューを試み、相当この事件を掘り下げて書かれている。
それが家族という視点、また犯人のバックグラウンドとなる生い立ちに至るまで。

これらの素材を丹念に取材して書かれたものだとするとゾッとする。
一家の死に関わった人たちを実際に掘り下げていき、さらに得たものを本という形態へアウトプットしていったのだとするとよく精神的にもったな、と…

そのあたりについては映画『カポーティ』を既に見ていたので、この本を執筆するにあたってのカポーティの苦悩を知っているからこそ、なおよくもこんな本が書けたなと思えてしまう。


この冷血以降、晩年に至るまでアルコールと薬物による中毒に悩まされたのも理解できた気がする。

tag : 冷血 カポーティ 佐々田雅子 新潮文庫

【小説】遠い声 遠い部屋

遠い声 遠い部屋
OTHER VOICES, OTHER ROOMS

トルーマン・カポーティ Truman Capote
訳:河野一郎
新潮文庫
遠い声遠い部屋 (新潮文庫)遠い声遠い部屋 (新潮文庫)
(1971/07)
カポーティ河野 一郎

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《まっとうな》少年はどんな様子をしていてしかるべきか、彼には彼なりの考えがあったのだ。してこの坊やはいささかその基準からはずれている。

『遠い声 遠い部屋』本文より

トルーマン・カポーティの処女長編。

のっけからしてイヤな光景からはじまる。
そして登場人物たちがなんとも人間くさくて、なんだか的を得た人間の描き方のようでキモチ悪い。
そしてこう…なぜに暗澹たる未来を待つだけの人生を持つ人しか出てこないのだろうか(笑

過去は語るのだけれども、未来は語らない。
むしろ過去にしがみついているというか…

そして主人公を含む少年たちもまるで子供っぽくない。
彼らなりの悩みを抱え、考え行動する様はまるで大人である。

そしてその大人たちが前述したような人たちなものだから、どうしても暗い雰囲気が出てしまう。
40年代後半という時代を考えると、このカポーティの出す小説の空気が受けたというのも時代の流れの影響があったのかもしれない。
そして子供と大人の境界がまるでないかのような描き方がされているのも、どことなくリアリティを感じる。


それにしても、まぁなんともげんなりする小説だった。
でもこれがカポーティの出発点となった小説と考えると納得である(笑

tag : カポーティ 河野一郎 新潮文庫

【小説】ティファニーで朝食を

ティファニーで朝食を
Breakfast at Tiffany's

トルーマン・カポーティ Truman Caporte
訳:龍口直太郎
新潮文庫
ティファニーで朝食を (新潮文庫)ティファニーで朝食を (新潮文庫)
(1968/07)
カポーティ、竜口 直太郎 他

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眠りたくもなし、
死にたくもない、
ただ旅して行きたいだけ、
大空の牧場を通って。

ティファニーで朝食を』本文より

映画『カポーティ』を見て以降、興味を持ち始めたので読んでみた。

映画『ディファニーで朝食を』は好きである。
見たのは随分前だから場面の細かなところはあんまり思い出せないんだけど。
というかヘプバーンが好きなだけだけども。

その時に感じたオシャレな感じは小説版からはあまり感じられなかった。

というよりも、ヒロインのホリーの奔放さへの憧れがかなり前面に出ているように思えた。
それと対比するかのような主人公のどことなく感じる孤独さと当たり前に縛られることに対する微かな苛立ち。

さらにティファニーというう普通ならオシャレや高級な場所に対する感じ方の違いも面白かった。
なにぶんホリーのあらゆるものに対する感覚の持ち方が常識とは外れている、いや自由に楽しんでいるように思える。
その自由さが不安から逃れるための行動であっても。

そういった自由さと不安の同居している人物の描かれ方というのがカポーティの独特の空気を出すよなぁ。
なにか寂しげに見えてくる。

そのような描き方がすごく人間的で好きである(笑



次あたりにはそろそろ『冷血』を読みたいところ(笑


龍口直太郎訳版の収録話:
ティファニーで朝食を (Breakfast at Tiffany's)
・わが家は花ざかり (House of Flowers)
・ダイヤのギター (A Diamond Guiter)
・クリスマスの思い出 (A Christmas Memory)

tag : ティファニーで朝食を カポーティ 新潮文庫 龍口直太郎

【小説】夜の樹

夜の樹 A TREE OF NIGHT
トルーマン・カポーティ Truman Capote
訳:川本三郎
新潮文庫
夜の樹 (新潮文庫)夜の樹 (新潮文庫)
(1994/03)
トルーマン カポーティ

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みんながぼくのことをなんといっているか、そんなことはよくわかっている。ぼくの味方になってくれるか、それともあの連中の肩を持つか、それはきみが勝手に決めることだ。

夜の樹』収録の『ぼくにだって言いぶんがある』本文より引用


トルーマン・カポーティの短編集『夜の樹』。

収録話:
・ミリアム Miriam
夜の樹 A Tree of Night
・夢を売る女 Master Misery
・最後の扉を閉めて Shut a Final Door
・無頭の鷹 The Headless Hawk
・誕生日の子どもたち Children on Their Birthday
・銀の壜 Jug of Silver
・ぼくにだって言いぶんがある My Side of the Matter
・感謝祭のお客 The Thanksgiving Visitor

2005年に映画化された『カポーティ』の予習のために読んでみた。
収録されているのはカポーティが20代の頃に描いたものがほとんど。

カポーティの中でも有名な『ティファニーで朝食を』の印象で読み始めると随分とそのギャップに驚かされた。

どの話を読んでも孤独感があふれていた。
最終的に他人を自分の中に受け入れることができないような拒絶感を感じた。

もしかしたらそれは後のカポーティが自分は同性愛者であるとカミングアウトしたことと関係があるのかもしれない。
当時同性愛者はまったく認められていない時代であったわけだし、口が裂けても言ってはいけないことだった。

だからこそこの短編集にも当てはまる「自分を本当に分かってくれる人は誰もいない」というような話が多いように思えるのかもしれないな…

tag : 夜の樹 トルーマン・カポーティ 川本三郎 新潮文庫 カポーティ ティファニーで朝食を

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∀ki(あき)

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  • 自由に生きてます。
    色々読んだり見たりしてます。

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