The World Is Made Out Of Entertainment
本や映画・ドラマ・アニメの感想などを書いてる日記blog。
【FT】ダブ(エ)ストン街道
浅暮三文
講談社文庫
![]() | ダブ(エ)ストン街道 (講談社文庫) (2003/10) 浅暮 三文 商品詳細を見る |
なにかを見つけた時も、そりゃ悪くはないが、俺にはなにかを探してる時の方が楽しくて仕方ない。ドロドロの薄汚れた格好になりながら、さまよい歩くのも泥遊びと思えば気楽なもんだぜ。
『ダブ(エ)ストン街道』本文より
第8回メフィスト賞の受賞作『ダブ(エ)ストン街道』を再読。
文庫版の解説は石田衣良。
メフィスト賞だけど中身はファンタジー。
このあたりからある意味なんでもありという賞にメフィスト賞はなっていった気がする(笑
夢遊病で各地をさまよってしまう彼女を探して『ダブエストン』とか『ダベットン』とか呼ばれるところへやってくる主人公。
そこでは様々な人や動物たちがなにかを探してさまよっている場所だった。
一度踏み入れたら二度と戻ってこられない。
ずっとダブエストンという土地で探し物を探し続けるところになってしまうのだ。
そんな内容。
迷いながら、それでも楽しんで誰もが自分の探し物をしている。
だから出口なんてなかなか見つからなくともいつかはきっと探し出そうとするポジティブさ、そして登場人物や動物たちの会話のテンポの良さが最高に気持ちがいい本だと思う。
こういう考え方で生きていければ人生って結構楽しく思えてくるんじゃないかとも思えてくる。
さて次は何を見つけに探しいってみようか(笑
タグ : ダブ(エ)ストン街道 浅暮三文 講談社文庫 石田衣良 メフィスト賞
【ミステリ】塔の断章
THE TOWER
乾くるみ
講談社文庫
![]() | 塔の断章 (講談社文庫) (2003/02) 乾 くるみ 商品詳細を見る |
「俺はどうしてもそのことを考えてしまう。考えずにはいられない。どうして彼女は飛び降りたのか。……おまえはどう思う?」
『塔の断章』本文より
乾くるみのタロウシリーズのひとつ『塔の断章 THE TOWER』。
『イニシエーション・ラブ THE LOVE』や『リピート THE WHEEL OF FORTUNE』と同じシリーズの本。
文庫版は作者による解説つき。
作家辰巳まるみの原作をゲーム化するために湖畔の別荘にあつまるゲーム関係者。
しかしその夜ひとりの女性が別荘の塔から飛び降りる。
再読。
あらためて読むと伏線が恐ろしく仕組まれた本だよな。
犯人も十分に予想できるんだけれども、どんどん読者がその予想に振り回されるというか…
この本の特殊な構造と、小説ゆえに仕掛けられるトリックを存分に堪能できるかと(笑
明らかに事件に関係ない記述もなぜ存在するかという疑問を持ったり、なんか時系列がときどき前後するよなぁと思ったらそういうことか、と orz
『イニシエーション・ラブ』のように短めながらしっかりとラストで驚ける内容っていうのはこの初期から確立されてたのかもなー。
あとは次がいつ出るか、なのですが(笑
もう随分と長編の新作が出ていないような。
タロウシリーズもタロットの数と同じだけ出るとすると、まだあと19冊でるはずだし(笑
たまに再読しながらゆっくり待ちます。
【ミステリ】黒い仏
BLACK BUDDHA
殊能将之
講談社文庫
![]() | 黒い仏 (講談社文庫) (2004/01) 殊能 将之 商品詳細を見る |
「石動戯作? 妙な名前だな。何者だね」
『黒い仏』本文より
「名探偵だよ」
「名探偵だって?」
星慧が疑わしげに首をかしげたので、星慧はたしなめるように、
「本当に名探偵なんだ。なにしろ、ありもしないアリバイトリックを破ってみせたんだからな……。」
石動戯作シリーズの2作目『黒い仏』を再読。
あぁ。
前作の『美濃牛』では名探偵ぶりを発揮したのに(笑
このあたりから石動さんは実に迷走しはじめたように思う。
だから面白いんだけど。
やはりこのシリーズ、妙に深い知識が披露されまくる。
今回は特に洋楽だろう。
どれだけ石動は「コール・ポーター」がすきなんだよ。
さて。
これはミステリだ、ミステリじゃないと色々と喧々諤々の議論というか主張がなされている作品なわけだけれども、ぶっちゃけどうでもいいじゃないかと思う。
なにも謎があって、それを現実的に解決していく。
それだけがミステリじゃあないだろう。
この本を通してこの本の世界の謎という、それこそスケールのドデカイ謎を解決してしまうのだから。
そういう意味ではこれもミステリと言えるのではないかと思う(笑
再読というだけあって、そういう謎を知った上で読むとなんか以前と随分違って楽しめて読めた。
…やっぱり最初は「なんだよこれ orz これはないわ……」という感想を持っていたんで。
【コミック】逆転裁判 4
監修:カプコン
脚本:黒田研二
漫画:前川かずお
ヤングマガジン連載
![]() | 逆転裁判 4 (4) (ヤングマガジンコミックス) (2008/07/04) 前川 かずお 商品詳細を見る |
本当に月美さん以外の犯行は考えられないのか!?
『逆転裁判 4』本文より
そして月美さんが会った死んだはずの母親とは…!?
『逆転裁判』4巻目。
収録されているのは
・「天国からの逆転」前後編
・「逆転食いしん坊」前編
地味にしっかりミステリ。
謎も突拍子もないようなことを取り上げてても華麗に逆転するところが素敵だ。
特に4巻では「死んだお母さんが被告人のもとになぜ現れたか」というのが焦点になるというもの。
死んでるのになぜ現れたのか。
当時の記録では確かに死んでいる。
じゃあ被告人のもとに現れたというのは一体誰なのか。
そんな非現実的なことを取り上げていながら、しっかりミステリとして解決。
思わず「なるほどなー」と感嘆いたしました。
後半の「食いしん坊」もまだまだ謎だらけなので、後半に期待です。
果たして被害者は犯人の意図通りに死んだのか、それとも不幸な事故だったのか。
そしてなにより生放送の直前に変えられた大食いメニューの真相はどこにあるのか。
そこらへんの解決が非常に楽しみです。
脚本の黒田研二のblogが最近飼い犬の話題ばっかりになっていて微笑ましくなってた(笑
逆転裁判がはじまる前とかには宇宙旅行実験やらローラースケートなど一人で精力的に活動してたのになぁ(笑
今ではまさに愛犬家だよな(笑
【ミステリ】闇匣
黒田研二
講談社ノベルス
![]() | 闇匣 (講談社ノベルス) (2002/12) 黒田 研二 商品詳細を見る |
混乱する頭で、懸命に記憶を探る。どうして、俺は縛られている? ここはどこだ? 俺の目はどうなってしまった?
『闇匣』本文より
メフィスト小作家による密室本の1冊『闇匣』を再読。
気が付くと闇の中。
縛られ動けず何も見えない。
そしてはじまる旧友からの尋問。
特殊な空間内で行われるミステリ。
黒田研二の本には特殊な状況下におけるミステリも多いが、これもその一つと数えてもいいだろう。
ってかこの特殊状況下だからこそ活きるトリックなのがすごくよかった。
特殊状況と数人の登場人物の行動だけで驚ける結末に持っていく手法は楽しいの一言に尽きます。
読み終わってから前書き読むと「あぁなるほど」と思えるのも面白いとこ(笑
【小説】七月七日
古処誠二
集英社文庫
![]() | 七月七日 (2004/09) 古処 誠二 商品詳細を見る |
ショーティーは卓越した日本語を買われ、陸軍情報部の日本語学校へ送られた。
『七月七日』本文より
日本人の子として恥じぬよう、アメリカのために全力を尽くす。
日本人の忠誠を疑う声を、戦争が終わるまでに必ず吹き飛ばす。
同期生と掲げたスローガンは決して達成不可能なものではなかった。
古処誠二の『七月七日』。
古処誠二なのでもちろん太平洋戦争の話。
文庫版は加筆もされているようです。
日系二世としてアメリカ軍に所属するショーティー。
アメリカ軍として日本軍と戦い、日本の兵に投降を勧める。
アメリカ兵たちには敵兵と同じ顔をしていると疎まれ、日本人には裏切り者とののしられる。
そんな中で彼は何を思ったか。
もちろんハッピーエンドなんて望んでないけどさ orz
こういう展開になるのもそりゃ予想はできたさ…
日本を知らない日本人。
もちろん勉強もした、けれども彼はサンフランシスコで育ち学んだ人間。
日系人でアメリカへの忠誠を誓わなければ財産も没収。
そんな中で彼は必死に勉強し、天皇も敬わうことも許されず、ただ認められるために必死だったというのが…
そして、アメリカの地で宗教的にも弾圧を受け、それでもアメリカと日本の戦争を止める為に橋渡しになろうとする。
しかし、報われない。
もちろん言語を解すことができるというのは効果的。
それでも日本とアメリカの間の溝を埋めることができないもどかしさ。
さらに戦闘の最前線でのあまりにも非情な光景。
自分は日本人を救うために必死に説得しているにも関わらず、それを救えないことに対する絶望感。
もう読んでてたまらない orz
アメリカの日系人の話は聞いたことがあって、かなり悲惨な状況に追い込まれたというのはもちろん知っていた。
けれども、その時どんなだったかというのはこの小説で思い知らされた気がする。
【SF】夜聖の少年
浅暮三文
イラスト:橋本晋
徳間デュアル文庫
![]() | 夜聖の少年 (徳間デュアル文庫) (2000/12) 浅暮 三文 商品詳細を見る |
俺たちになにができるっていうんだ? ただの土竜だぞ。この世界の屑だぞ。俺たちにできるのは逃げることと、あきらめ、忘れることだけだ。
『夜聖の少年』本文より
メフィスト賞作家の浅暮三文によるSF小説『夜聖の少年』。
感情を失くし完璧な大人となることを拒否した子供達。
彼らは社会を捨て、助け合いながら生きていた。
しかし子供はいずれ発光し大人になる。
だが、発光したまま大人になった人物は地下の奥深くに向かいそして誰も戻ってくることはなかった。
そんな中、閉鎖された社会の中で一人の謎の巨人が発見されたときから、世界の謎が解かれていく。
かなりシビアな近未来っぽいSF。
えぇ。
結構ハードです。
SF的にもハードSFです。
設定で付いて来れなかったら多分しんどいです。
でも読んでみたらSFというよりファンタジーなのかなぁという気もする。
いやいや、これはSFという世界を借りた壮大な自分探しの旅の話なのだとも思える。
歪んだ大人社会と子供の社会を見ながら、世界の謎、自分の出生の謎を解いていく。
大人になるってどういうことなのか。
自分がどうありたいのか。
少年が大人へと成長していく過程が読んでいて実にすがすがしく感じる。
どんだけ過酷な運命でも自分で切り開いていこうとする。
あぁもう。
いいなぁいいなぁ。
成長モノはやっぱりこうでなきゃ(笑
ライトノベルとしてだけじゃなく、もっとSF好きにもぜひとも呼んでもらいたい1作。
徳間デュアル文庫の初期に出た作品だけに知名度が低いのがもったいないよな orz
ふと思ったんだがこれは「夜聖」ってどういう意味だったのだろう。
どういう意味かどころかいくつも見出せて仕方ないんだけども(笑
夜に光るって意味とか、「野生」もそうだろうし、物語の根幹の遺伝子のことにも思える。
この意味だけ考えてみてもすごく深いタイトルな気がしてならない。
【ミステリ】クラリネット症候群
clarinet syndrome
乾くるみ
徳間文庫
![]() | クラリネット症候群 (徳間文庫 い 51-1) (2008/04/04) 乾 くるみ 商品詳細を見る |
ドとレとミとファとソとラとシの音が出ない
『クラリネット症候群』本文より
まったくあの歌のとおりではないか。僕の場合、正確には、音が出ないのではなくて、言葉が聞き取れないのだが。
乾くるみの『クラリネット症候群』。
『マリオネット症候群』も収録。
『マリオネット症候群』は気がついたら自分の体が誰かにのっとられた女の子の話。
SF風味だけど、やっぱり乾くるみの本という感じの作品。
これは2001年に徳間デュアル文庫で出ていたもの。
(いわゆるライトノベルというレーベルかもしくはSFレーベル)。
感想は3年ほど前に書いたので割愛。
SF好きにはたまらんです(笑
今回文庫で初登場の『クラリネット症候群』。
『マリオネット症候群』とはさっぱり関係のないタイトルだけ韻を踏んだ作品。
リピート以来の新作なんだよな…
さてこれまた変わった作品。
クラリネットが壊れちゃったときを境にドレミファソラシという音が聞こえなくなった男の子が主人公。
突然居なくなった養父の暗号を解いていくうちにとんでもない真相が明らかになるというもの。
乾くるみで暗号ものといえば『匣の中』や『林真紅朗』が思い浮かぶんだけれども、これまた実によくできた暗号。
簡単に解けるわけでもないけれども、解けてしまえるものであるものなのがミソ。
もうホント相も変わらず凝った暗号を作るよなぁ。
そういった暗号解きがメインの中篇なんだけれども、それよりも他のどうでもいい真実の方に驚いた。
驚いたというより意外な展開にちょっと呆然としたくなった。
主人公目線で語られる話だけになんかがっくりきて「それはないわ orz」という気分になった。
そりゃ理解は出来るけどっっ。
毎度の事ながら乾くるみの本の読後感はある意味格別でした(笑
乾くるみの中でもSF要素を入れた2編が入っているのも魅力です。
【ミステリ】探偵小説のためのエチュード「水剋火」
古野まほろ
表紙イラスト:ゴツボ×リュウジ
講談社ノベルス
![]() | 探偵小説のためのエチュード「水剋火」 (講談社ノベルス フJ- 4) (2008/04) 古野 まほろ 商品詳細を見る |
「皆まで言うなと介錯をっ!!」
『探偵小説のためのエチュード「水剋火」』本文より
手刀が首に入る感覚。
「はっ」
「傷は浅いわよべべんべん!」
天帝シリーズの古野まほろの新作シリーズ。
今度は陰陽師探偵モノ。
舞台設定は天帝シリーズと同じもの。
探偵役の陰陽師である小諸るいかと主人公である四国の実予にやってきた水里あかねも女の子。
女の子同士ゆえの姦しい会話とボケとツッコミ。
古野まほろ特有のと擬音と濃い内容が織り成す会話が非常に楽しい。
つか「急々如律令」ということばを「はよせえ」と説明した本ははじめて見た(笑
陰陽道の話もかなり濃いというか実にマニアックな薀蓄満載。
会話のノリが非常によすぎる。
だからかミステリ部分よりもそのあたりをちょっと読んでて楽しみすぎたかも(笑
まぁシリーズ1作目ということもあり、登場人物の紹介も兼ねているだろうからこれくらいがちょうどいいのかもしれないけど。
1作目が「水剋火」ということは「木火土金水」の5つをタイトルに並べるんかな。
だとしたらまだまだ当分は楽しめそうなシリーズだ。
【ミステリ】まごころを、君に THANATOS
sweet to sweet
汀こるもの
講談社ノベルス
![]() | まごころを、君に THANATOS (講談社ノベルス (ミI-02)) (2008/05/09) 汀 こるもの 商品詳細を見る |
一瞬の美のために生まれて死んでいく。一瞬のために
『まごころを、君に』本文より
THANATOSきゅんシリーズ2冊目。
美少年双子探偵もの。
一人は探偵でもう一人は死神。
ともに美少年でナマイキ(笑
それにプラスして二人の子守である刑事が語り部。
相変わらずのアクアリストっぷりを見せ付けられ、またこの延々と続く講釈を読み続けなければいけないのかよ…
今回はグッピーの生態と遺伝について、メンデルの法則をメインに語られる。
というのが今回の魚マニア=アクアリストの死神が語ってくれるメインなんだけれども、それが関わってくる後半が面白すぎた。
認めたくないというか、なんだか気に喰わないけれども面白かった。
最初は「まごころを、君に。かよっ。エヴァかっ。今度はエヴァなのか!?美少年探偵でそれ系の属性の人たちにウケがよかったからってエヴァかよ」なんて思った。
で、やっぱりエヴァに影響を受けた世代としては気になって買った。
前作は正直うんちくは面白かったくらいにしか思ってなかったら期待しなかった分おもしろかったのもあると思うんだが。
グッピーもメインなんだけれども、今作では随所にシェイクスピアからの引用が見られる。
(正直「マクベス」と映画「ハリー・ポッター」の共通点なんてはじめて気づかされた。
その引用の量とその引用が後半にかかって来るまるでシェイクスピア作品らしき「悲劇」を描かれたとあっては興奮せざるを得ない。
なんでグッピー談義から悲劇が生まれてしまったのか謎である。
確かにグッピーなくしては、今回の話は成り立たない(笑
しかもしっかり悲劇。
それに今回の事件がシェイクスピアの「ハムレット」や「マクベス」「テンペスト」などの内容を織り込むことで、ミステリというよりも明らかに「悲劇」としか言えない展開に次から次へとつながっていったことに驚愕した。
前作より明らかに面白かったです。
【ミステリ】『瑠璃城』殺人事件
CROSS END
北山猛邦
講談社ノベルス
![]() | 『瑠璃城』殺人事件 (講談社ノベルス) (2002/07) 北山 猛邦 商品詳細を見る |
「僕たちは生まれ変わり続ける。そして殺し合い続ける!」
『『瑠璃城』殺人事件』本文より
北山猛邦の『城』シリーズ2冊目。
前回は世紀末寸前の世界。
今回は死ぬと生まれ変わり互いに殺し続ける世界。
ある時は密室の図書館で殺された女性の事件。
またある時は城から6人が消失、後にありえない場所で発見されたり。
いくつもの時間を舞台にし輪廻転生というファンタジーを用いながらも、それらが一つの大きな事件へと収束してしまうのには再度読んでみても驚かされた。
あとはなんと言っても感情論抜きにして物理的なトリックという今はあんまり見かけない手法にもこだわっているところや、どことなく終末的な雰囲気漂う登場人物たち同士の会話っていうのがよかった。
【メフィ】夜を買いましょう
浅暮三文
集英社文庫
theどくしょ連載
![]() | 夜を買いましょう (集英社文庫 あ 51-2) (2007/10) 浅暮 三文 商品詳細を見る |
夜を買いましょう。夢を買いましょう。投資効果は抜群。金より安全確実です。
『夜を買いましょう』本文より
インドネシアで見つけた新種の生薬。
あまりにも効果的な催淫剤かと当初は思われていたが、どうやらそれは使い方によって睡眠を吸収し、吸収した分を別に人に使うことが可能と分かり、「睡眠時間」を売る世界を相手にした商売がはじまるっていうストーリー。
またえらく変わったものを…
浅暮三文だから一風かわったものになるとは予想したけれども、今回は「性欲」「睡眠欲」にスポットを当ててきてんのかなーと最初の方読んでたけど経済小説かよ!?
睡眠というものを商売にして世界に売り出していく過程。
そしてその睡眠自体を通貨として認めさせる手法。
その結果として世界がどう動いていくのか。
そういう経済の流れの描き方が読んでいてかなり面白かった。
面白かったどころか一気に読んでしまった。
特に倫理すれすれで開発していくところや、世界に広まったあとの国/個人の動き方が興味を持って読めた。
経済小説として終わっていくのではなく、謎そのものへ迫っていくというラストもかなり好きだ。
【メフィ】うた魂♪
小路幸也
原作:栗原裕光
朝日文庫
![]() | うた魂♪ (朝日文庫 し 37-1) (2008/03/07) 栗原 裕光、小路 幸也 他 商品詳細を見る |
ハートは、心は、大切なのだ。何十人もの声を合わせる合唱は。ハーモニーは、ただ合わせれば綺麗には聴こえる。でも、それはただ綺麗なだけ。
『うた魂♪』本文より
「それだけじゃ、人の心は揺さぶれないのよ。そんなの、あなただって音楽好きなんだからわかるでしょ?自分の好きな音楽に、心揺さぶられた経験はない?」
揺さぶられた。
思いっきり心を揺さぶられたぜっヽ(゚∀゚)ノ
邦画の「ノベライズ」か、まぁ小路幸也の本だし買っとくかくらいのノリで買ってみたら恐ろしく面白かった。
そして色々と直球ストレートにソウルフルにコトバを投げつけられた気分だ。
もっと自分に正直に生きてみようと思わされた(笑
歌が大好きなちょっと自惚れが入った女の子とヤンキーだけど尾崎豊の「15の夜」を聞いてから歌に目覚めた男の子。
彼らがみんなでがんばって合唱コンクールに向けて練習、けれども色々いざこざがあったけど仲直りして優勝なんていうありふれた邦画ノベライズなんかじゃなく、えらくハイテンションなノリとラブコメと熱血が見事なハーモニーを奏でているような感じで語られる話。
みんなで何かをやってみよう!という高校生が主人公の映画っていうのは「スウィング・ガール」だったり「青春デンデケデケデケ」などがあるが、そういうものともまたちょっと違った感じ。
なんというか登場人物みんな素直なのだ。
まっすぐ生きてるのだ。
だから挫折もするし、落ち込む。
それでも自分の「好き」なものが見えている。
そういうのってうらやましいよなぁ。
現実的なちょっと先のことを考えて現実的に妥協する大人が忘れかけているようなことをコメディという中でひっそり丁寧に描かれていた。
それがなんとも心地いい。
というか小路幸也に家族や暖かい人間関係を描かせたらやっぱりスゴイものができあがってくるよなぁ。
いい本でした。
200ページちょいで文字も大きめという読みやすい本なので、あんまり本を読まない人にもおすすめ。
【メフィ】高く遠く空へ歌ううた
pulp-town fiction
小路幸也
講談社文庫
![]() | 高く遠く空へ歌ううた (講談社文庫 し 80-2) (2008/02/15) 小路 幸也 商品詳細を見る |
寝て起きれば、忘れちゃいけないことだけが残っています。それをどうやって受け止めていけるか。それが、大切なんですよねぇ
小路幸也『高く遠く空へ歌ううた』本文より引用
パルプタウン・フィクション2作目『高く遠く空へ歌ううた』。
でも1作目読んでなくてもまったく大丈夫です。
なぜか幼少のときから死体を見つけてしまうことが多々ある主人公のギーガン。
義眼だからギーガン。
小学校の6年生。
彼はついに10人目の死体を見つけてしまう。
そこからどんどんミステリ風味に…なることもなく、ギーガンの身近な話がずっと続く。
友達と遊んだり、先生のライブに行ったり etc
最初に起きた事件が少しミステリのように思えてくるのはずっとあと。
それよりもこのギーガンの周りに起こる事のなんとノスタルジーあふれることか。
みんなで近所を冒険したり、はじめて友達の友達と遊んだ事、野球の練習場をめぐっての試合とか、なんか最近は見慣れない風景というかずっと昔に「こんな風に遊んだよなー」とノスタルジーに浸れる。
そんな郷愁や、大人が子供に教える当たり前のこと。
例えば大人が叱る時って子供の事を考えて怒るのが当たり前だし、それが経験から来るものであったりするもの。
そんな今では失われた(いや、実際には失われてないんだろうけど、最近のニュースやご近所を見ているとそうも思える)当たり前の光景がすごく懐かしくて新鮮に思えてしまう。
それがすごく心があったまる。
ミステリの部分も決して陰惨なものであったりするわけじゃなく、何らかの感情を読者に残してくれるような読後感がする。
そういう本としての暖かさっていうのがすごく感じられた。
タグ : 小路幸也 講談社文庫 高く遠く空へ歌ううた
【メフィ】エコール・ド・パリ殺人事件
Un meurtre de l'Ecole de Paris
深水黎一郎
講談社ノベルス
![]() | エコール・ド・パリ殺人事件 レザルティスト・モウディ (講談社ノベルス フK- 2) (2008/02/08) 深水 黎一郎 商品詳細を見る |
つまり栄光に満ち、天寿を全うした芸術家の作品は、大抵の場合死後その評価を下げるが、不幸のうちに夭折した芸術家の作品は、むしろ逆に死後その評価を高める傾向にあるということである。まるで実人生における不幸こそが、芸術を完成させるという共同幻想に、人類全体が取り憑かれているかのように――。
深水黎一郎『エコール・ド・パリ殺人事件』本文より引用
深水黎一郎の第2作目『エコール・ド・パリ殺人事件』。
ウルチモ・トルッコに出てきた登場人物も出てきてます。
「エコール・ド・パリ」。
一言では言い表せないが、まぁ第一次世界大戦あたりにパリで活躍した芸術家。
その大半が不幸な芸術家である、というくらいに考えた方がいいんだろうな…。
そこらへんの絵画事情は読んで興味は沸いたけどまだ分からないことだらけ。
一つの絵画を知るための指針のようなものはこの本からもらったような気もする。
さて、ミステリとしてのこの本について。
前作と同じように読者への挑戦状付。
やっぱり前作同様しっかりミステリをしていたと思う。
密室殺人事件、それは自殺かそれとも他殺なのか。
ミステリの中でも使い古されてるけれども、未だに誰もが興味を惹かれる内容からはじまり、「エコール・ド・パリ」というこの本のテーマと関わりが出てくる。
その密室殺人の方法についても驚けた。
この本に挿入される被害者の「エコール・ド・パリ」に関しての本の中の内容も専門的ながらも興味が惹かれることもさることながら、事件とのかかわりがなんとももう素晴らしい。
確実に事件とかかわりがあるんだろうなと思って読んでいたけれどもまさか…
前作『ウルチモ・トルッコ』のラストにも唸らされたけれども、今回の内容も素敵でした。
タグ : エコール・ド・パリ殺人事件 深水黎一郎 講談社ノベルス
【メフィ】分岐点
古処誠二
双葉社
![]() | 分岐点 (双葉文庫 こ 17-1) (2007/10) 古処 誠二 商品詳細を見る |
「いいな片桐。足元を見失うな。体制がどう変わろうと、軍に身を置く人間の本懐は変わらん」
古処誠二『分岐点』本文より引用
ともすれば独り言にも思える気配で、上官は最後に言った。
「子供たちを死なせるな」
古処誠二の第二次世界大戦を描いた小説『分岐点』。
1945年。
軍は中学生までも動員し、戦っていた。
下士官たちは使えない人間を統率しなければいけないことに疲弊し、物資が尽き、無謀な作戦を行おうとする軍に苛立ちを覚えていた。
そんな終戦間際の様々な立場の人間の『分岐点』を描いた作品。
中学生、女学生、下仕官、少尉etc
当時の体制による情報を制限した教育により生まれた歪んだ考えを持つ子供たち。
そういった正常、当たり前のことすら知ることを許されず動員され死地に赴かされる。
そんなのはおかしい。
だから戦争は悲惨でするべきではないのだ。
そうした戦争を生み出したということを記憶にとどめて生きる必要がある…
確かにそうだ。
けれどもそんなことを言うのは簡単なんだけど、この小説はもっと深いところまで考えさせられる小説だった。
なんというかよくこれを書いた古処誠二っ(笑
この本を読んだときにそうしたよくある反省ばかりする日本ということも考え物だと思わされた。
なぜ日本は戦争ということをはじめたか。
それをはっきりといえる人ってどれだけいるんだろうか。
そもそもの原因はいつからはじまり、何がきっかけで戦争がはじまることになってしまったのか。
後者は学校で教えられることだけれども、前者を答えられるような人って意外と少ないのではないか。
それを知っていれば一概に日本がすごく悪いということは言えないような気がするのだけれども(笑
アジアを占領し、搾取していた欧米を追い出し平和をもたらそうとしたなどの理由もある。
そして自分たちの国を家族を守るために戦って死んでいった人たちもたくさんいる。
その人たちの犠牲の上にいま生きている人たちがいる。
戦いがあるところにはそうした誰かのために戦っていたという想いがあるものだと思う。
だから映画でも戦争を扱ったものにはそういったところに敬意を払っているシーンが多くある。
なぜアメリカはそうした映画を作ってもまったく批判されないのに、日本はある国などから批判されるんでしょうね(笑
そこに戦争を正当化するなんてことは誰も考えてないだろうに…
などということを書いてみたけど別に筆者は右でも左でもないです。
少々話がそれたのでこの本の話へ。
戦時中どんな立場の人たちがどんなことを考え戦争というものに接していたか。
それがこの本の中で描かれている。
日本の内部も攻撃を仕掛けてくるアメリカ兵の誰もがおかしくなっていく戦争の果て、そんな第二次世界大戦の終わりと戦後の始まりという分岐点にたった時に起こった衝突。
戦争の最後に人々は何を考え、何を受け入れ、何を拒否したのか。
まざまざと当時の様子を再現しながら進む物語を読むにつれて、当時のことを考えさせられるそんな本でした。
「ルール」以降の古処誠二の戦争ものは秀逸なのが多いな…
参考文献とかにも結構惹かれます。
【メフィ】シー・ラブズ・ユー 東京バンドワゴン
小路幸也
集英社
![]() | シー・ラブズ・ユー―東京バンドワゴン (2007/05) 小路 幸也 商品詳細を見る |
淋しいってよ、わんわん喚いたり暴れたりするのも、まぁ子供らしくていいけどよ。男の子はよ、やせ我慢ってものをしなきゃならねぇんだ。どんなに淋しくてもよ、辛くてもよ、自分一人で頑張るんだっていうやせ我慢ってやつをよ、覚えなきゃあなんねぇんだよ
小路幸也『シー・ラブズ・ユー』本文より引用
『東京バンドワゴン』第2弾。
今のご時勢めったに見られない大家族の物語。
大家族で生活して、古本屋とカフェを営みながら過ごす毎日。
一日の夕方にはみんなで集まって夕食を食べ、問題があればみんなで考えetc.
なんというかホームコメディとでもいうんだろうか。
コメディとも違うな…
人情もの?
ちょっとした日常の謎系のミステリ?
まぁいろんな要素が詰まった心温まる4つの話が収録されてます。
昔から伝わる家訓で守るべきものは守る。
しっかりと。
そんな家族なもんだから、現代では忘れられているような家族の姿っていうのを見ることができるのがなんだか心にグッとくる。
暖かい心を持っている人が多いし、怒るべきところではしっかり怒る。
こういうのがニュースとか見ててもなんだか欠けてきているんじゃないかと思えるんだよな。
感動した、泣ける。
そういうものではなく、読んだら心がほっこりと暖かくなる本だと思う。
【メフィ】パラダイス・クローズド
Paradise Closed THANATOS
汀こるもの
講談社ノベルス
![]() | パラダイス・クローズド THANATOS (講談社ノベルス ミI- 1) (2008/01/11) 汀 こるもの 商品詳細を見る |
彼はこの中で一番プロに近いアマチュア名探偵。日本一死体に詳しい高校生。刑事よりも詳しいのだ。
汀こるもの『パラダイス・クローズド』本文より引用
高校生名探偵。彼の本当のリングは孤島の館などではない。彼の得意ジャンルは"本格"ではなくバリバリの社会派なのだから。
第37回メフィスト賞受賞作。
双子の美少年探偵。
ひとりは周りに死者を次々に呼び出し、ひとりは名探偵。
ミステリ作家が集まる孤島の館で起こる殺人事件がこの『パラダイス・クローズド』。
帯の推薦文は有栖川有栖。
ラストが気が抜けないというか、薀蓄を頑張って読んでよかったと思えた。
あの膨大な量の水棲生物についての文を読んだら「こう関わってくるのかっ」と。
さりげなく挿入されてる様々なネタにもくすっと笑わしてもらいました。
遊戯王やロマンシング・サガ、ナウシカにキューブリック、バトロワもキル・ビルも、さらには夏目漱石などの文芸作品まで。
どんだけ元ネタ多岐にわたってるんだよっ(笑
タグ : 汀こるもの 講談社ノベルス パラダイス・クローズド メフィスト賞
【メフィ】掘割で笑う女
浪人左門あやかし指南
輪渡颯介
講談社ノベルス
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何か気配を感じたのだろうか。不意に女が振り向いた。其十郎と目が合った。そして彼は、女が歯をむき出して笑うのを見た。
輪渡颯介『掘割で笑う女』本文より引用
すごい勢いで女は其十郎のいる小屋めがけて走ってきた。彼は恐怖で思わず後退りする。そして筵に足をとられて尻餅をついた。
女の白い顔が格子から覗いた。
第38回メフィスト賞受賞作『掘割で笑う女』。
描写が恐ろしく怖かった。
受賞作でこの出来かっ。
女の幽霊を見たらその人は死ぬ。
突然死、または何者かにより殺されたり。
そんな江戸時代を舞台にした怪談もの。
それでいてミステリ。
女の幽霊と見た人の死を繋ぐ線。
その明らかにする過程も見事だったけど、やはりこの人のホラーに対する描写がすごかった。
時代劇のホラーというよりも日本の映画で言うところのホラー的な感じ。
映像化するとものすごく映えるような気がする。
200ページちょいとメフィスト賞作品にしては短めだったのだけれども、ものすごく楽しめた。
【メフィ】ナナフシの恋
黒田研二
表紙イラスト:イナアキコ
講談社ノベルス
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だが、このメールを麻帆が打ったはずはない。
『ナナフシの恋』本文より引用
彼女は二十五日前――終業式が終わった直後に新校舎の三階から飛び降り自殺を図り、今もまだ意識が戻らぬ状態が続いているのだから。
黒田研二の久々の小説の新作。
絶対にメールを送れるはずのない人から呼び出された6人の学生。
呼び出してきた本人は自殺未遂で現在は病院で昏睡状態。
いったい誰がなんのためにそんなメールを送ったのか。
ひとつの教室を舞台に繰り広げる、誰がこのメンバーを呼び出し、なぜ彼女は自殺をしたのかという謎に迫る物語。
ミステリ…というよりも群像劇だろうか。
あまりに印象が薄すぎて、友人と呼ばれる人以外は顔も思い出せない自殺した「彼女」。
自殺現場の不思議な光景からはじまり、彼女の謎が深まっていき、そこからとんとんと謎が繋がり解き明かされていく展開は楽しめた。
けれども、やっぱりこれは「高校生6人+1人」の心のやりとりが非常に印象に残った。
がちがちのミステリじゃなくてもこういうライトなミステリで、ジュブナイル要素も多々含まれるものを読むことになるとは。
黒田研二の小説=本格に近いミステリというイメージがあったもんだから、ちょっと肩透かしくらったけども十分おもしろいじゃないか。
でもそろそろ黒田研二の本格なミステリも読みたいです(笑





















