【ミステリ】彼女が灰になる日まで

メフィスト賞→浦賀和宏
11 /20 2016
彼女が灰になる日まで
浦賀和弘
幻冬舎文庫
彼女が灰になる日まで (幻冬舎文庫)
浦賀 和宏
幻冬舎 (2015-12-04)
売り上げランキング: 370,735

そしてあなたを殺したい

彼女が灰になる日まで』本文より

桑原銀次郎シリーズ4作目『彼女が灰になる日まで』。
まさかの続編。
なんらかの形で続くとは思っていたが予想外の展開すぎてもうどうしたもんかと。

昏睡から覚めた銀次郎。
その昏睡から覚めた病院での謎。昏睡から覚めた人物はみな自殺する。
自らがその自殺事件をライターとして、また自分自身の問題としての捜査を開始するという謎に挑む感じでスタートするわけだが。

謎を追えば追うほどに偶然か、それとも誰かの意思が介入しているのか。
そもそも自殺か他殺なのか。
もはやそんなミステリ的なところなんてぶっ飛ぶほどにぞくっとした。
おっそろしい。
誰がなんのためにそうしたのかの怖さ。
動機というか、もはや怨嗟や呪いそのもののような強烈なものを見た。

【ミステリ】姫君よ、殺戮の海を渡れ

メフィスト賞→浦賀和宏
02 /27 2016
姫君よ、殺戮の海を渡れ
浦賀和宏
幻冬舎文庫
姫君よ、殺戮の海を渡れ (幻冬舎文庫)
浦賀 和宏
幻冬舎 (2014-10-09)
売り上げランキング: 497,242

「萩原重化学工業系列の安部総合病院に君をスカウトしたい。所在地は萩原重化学工業と同じ、川崎だ」

姫君よ、殺戮の海を渡れ』本文より


!?
まさかここで安藤シリーズに繋がった。

前半の退屈すぎる少年少女たちの夏の思い出。
そこからの後半の怒涛の展開、殺戮。
とんでもない小説だった。
予想をはるかに超える平凡だった日常からの非日常への移行。
他シリーズへの絡み、そして秘密裏に行われてきた実験。
すべての伏線が回収されるラストへの緻密な展開。
ああ。もうこれはすごいな。
すごすぎると言っても過言じゃないくらい。
読み終わった瞬間に唖然とした。

【ミステリ】究極の純愛小説を、君に

メフィスト賞→浦賀和宏
08 /29 2015
究極の純愛小説を、君に
浦賀和宏
徳間文庫
究極の純愛小説を、君に (徳間文庫)
浦賀 和宏
徳間書店 (2015-06-05)
売り上げランキング: 35,088

必ずや、究極のエンターテイメントを、そして究極の純愛小説を、あなたにご提供いたします

究極の純愛小説を、君に』本文より

浦賀和宏の『究極の純愛小説を、君に』。

なにこれwww

圧倒的に純愛小説だけど、いわゆる純愛小説ではない。
歪んでるけど、変な方向にじゃない。
変な方向に歪んでるのは小説の方だw

twitterでも映画という映画を見ている浦賀和宏だからこその面白さ。
映画好きにはもう笑いがとまらない。
そして根幹のひとつでもある『神話の法則』に関しては大学時代にスター・ウォーズと指輪物語と日本のおとぎ話から学んだことがあったので、この法則の物語へのかかわりかたもすごく楽しい。

あと八木シリーズを読んでてよかったと思う時がこようとは。
安藤シリーズは再評価されてるけど、八木シリーズは新刊が出ていた頃には話題に上がってたけどなかなか再評価されなかっただけにこの本を機に再評価されるべきじゃないかな。

【ミステリ】彼女の倖せを祈れない

メフィスト賞→浦賀和宏
10 /11 2014
彼女の倖せを祈れない
浦賀和弘
幻冬舎文庫
彼女の倖せを祈れない (幻冬舎文庫)彼女の倖せを祈れない (幻冬舎文庫)
(2014/04/10)
浦賀 和宏

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--君を殺さずに済んだ。
--君を殺さずに済んだ。
--君を殺さずに済んだ。

彼女の倖せを祈れない』本文より


桑原銀次郎シリーズ3作目『彼女の倖せを祈れない』。
もうこのシリーズ相変わらず予想外の方向へと進む物語。
笑うしかないというか、一気に読んで呆然とするというか。

シリーズではあるけれども、あくまで主人公が同じというだけ。
それをたまたま銀ちゃんが追いかけてる。

今回のアメコミコスプレ少女と政治的絡みの何かというものは何なのかというところはじまり、おそろしく予想外のところへ落ち着いた。
このラストをどう予想しろと。
いや、その予想なんてのは物語半ばで驚愕させられ、いっきに予測不能すぎる展開へと突入していく。
ラストへ衝撃をなんて甘っちょろい。
半ばからずっとラストまで怒涛のように仕掛けられる謎の解明がすんごいわ…

このシリーズがはじまってから1年に1作以上読める上に、安藤シリーズも文庫が出始めた。
これはもう安藤シリーズセカンドシーズンもそろそろ読めるんじゃ…

【ミステリ】彼女のため生まれた

メフィスト賞→浦賀和宏
12 /01 2013
彼女のため生まれた
浦賀和弘
幻冬舎文庫
彼女のため生まれた (幻冬舎文庫)彼女のため生まれた (幻冬舎文庫)
(2013/10/10)
浦賀 和宏

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人間は本能だけでは生きられない。

彼女のため生まれた』本文より


『彼女の血が溶けていく』と同じ主人公で後日談。

母が殺され、犯人が自殺した。
そしてその犯人は主人公へあてた遺書を書いた。そこには真実でないことが含まれていた。

ジャーナリストらしくその意図を探り自らの冤罪を晴らすというスピード感あふれる物語。
そしていつもの、いや、今までと同じだけど同じではないんだけど、常識を覆していくような常識外の真実が展開されていく。

この異端っぷり。
浦賀さんだよなぁと思いながら、今回のさらにその奥の物語。
すべてが語られてなお、まだまだページ数が残っているときたもんだ。
そこでのさらに一転する展開がまた見事。
知らなくてもいいことだったのかもしれない。
知らなくても事件は全て解決していたのだけれども、気持ち悪さが実に倍増もする。

社会問題でもある30代のニートが起こした事件でその難しいニート問題という問題に取り組みながらも、本当に問題なのはどこにあるのかという問題提起にすら思える。
「彼女」のシリーズはそういった社会問題を取り上げながらのミステリにしていくのかもな。

それにしても浦賀さんが新作が年に1回以上しっかり読めるとは。
あとは安藤シリーズの続きが読みたい。

【ミステリ】彼女の血が溶けてゆく

メフィスト賞→浦賀和宏
04 /28 2013
彼女の血が溶けてゆく
浦賀和弘
幻冬舎文庫
彼女の血が溶けてゆく (幻冬舎文庫)彼女の血が溶けてゆく (幻冬舎文庫)
(2013/03/14)
浦賀 和宏

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仕事だからやるのだ。金のためにやるのだ。それ以外の目的はない。決して――。

彼女の血が溶けてゆく』本文より

浦賀さんの新作は単発ものだったか。
そして案の定のように臓器が出てきて、おおいつもの浦賀さんだとか思っていたら予想外なほどにミステリで、そしてどんでん返しのようなラストにしびれた。
もしかしたらSF設定でも入ってくるのかもしれないとかすら思ったのに。

彼女の血が溶けてゆく』。
まさに赤血球が正常通りの働きをせず、脾臓をとる手術をした今回の死亡者。
医療ミスが騒がれ、訴えられた彼女の元夫でありフリージャーナリストが雑誌の記事にすべく様々な関係者に聞き込みを続けていく。

怖いな…
誰もが仕方ない仕方ないと嘆きながら打算的に日常を送っている登場人物たちだからこそ、一体今回の事件はどこになにがあって原因で一連の騒ぎへと発展してしまったのか。
すべてにおいての悪も犯人というのもあったわけじゃない。
全部の伏線が繋がってしまったからこそわかる今回の悲劇。
そうなんだよ。
繋がってしまったことこそが驚愕した。
とんでもない大どんでん返しだ。
ラストまで目が離せないとはこのことか。

これなら、浦賀さん初心者にすごく薦めやすいな。
シリーズもので文庫化されてないものも多いだけに。


さて、若干の救いのあるラストに主人公がとった行動。
ラストが美しく見えるけれども、果たしてそのあとを考えると幸せがあっただろうか。
これに対してあの主人公ならどこかで破綻するだろうとか抱えきれんのじゃないかと考えてしまうから、若干後味が悪くかんじたかも。

【ミステリ】萩原重化学工業連続殺人事件

メフィスト賞→浦賀和宏
08 /01 2010
萩原重化学工業連続殺人事件
Knockin'on Heaven's Door

浦賀和宏
講談社ノベルス
萩原重化学工業連続殺人事件 (講談社ノベルス)萩原重化学工業連続殺人事件 (講談社ノベルス)
(2009/06/05)
浦賀 和宏

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「この世界はあなたが考えているようなものじゃないわ。あなたはこの世界で、ちっぽけな一人の市民にしか過ぎない。でもそれでいいじゃない。あなたには想像もつかないような深遠な場所が、この世界にはあるのよ。人間は平等じゃないの。分ってものがあるのよ」

萩原重化学工業連続殺人事件』本文より

安藤シリーズセカンドシーズン1作目『萩原重化学工業連続殺人事件』。

脳が消失した死体が次々に発見される。
何のために?
すべてのキーとなるのは、萩原重化学工業という企業だったという内容なわけだが。

なんのことはないミステリかと思ったら。
脳と心のミステリ。
いや、世界を巻き込んだミステリ。
それどころかミステリなのか。
安藤シリーズも八木シリーズもそうだけれども、殺人事件などから果てしなく世界観が広がっていく。
そもそもこの世界は一体なんなのか。
そしてこの世界はそもそも存在しているものか?リアルか?
意識をもつ我々は一体何者であるのか。


世界に対する認識が激しく揺さぶられるというような内容だった。

もはやジャンル分けなぞ不可能。
1作だけでなにか分かるわけでもなく、すごくもやもやする。
この世界をもっと見てみたいと思わせてくれるよなぁ。
なんか世界の片鱗と事件の真相だけ見せつけられても、根底に流れる「何か」ってやつが気になりまくりです。

【ミステリ】女王暗殺

メフィスト賞→浦賀和宏
02 /26 2010
女王暗殺
ORDINARY WORLD SPECIAL WORLD

浦賀和宏
講談社ノベルス
女王暗殺 (講談社ノベルス)女王暗殺 (講談社ノベルス)
(2010/01/08)
浦賀 和宏

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今までずっと日常の世界(オーディナリーワールド)の中に生きてきた。
だが母を殺したその日から特別な世界(スペシャルワールド)に足を踏み入れてしまったのだ――そう久能正治は思った。

女王暗殺』本文より

浦賀和宏の小説の世界に再び戻ってしまった。
『萩原重化学工業連続殺人事件』が出たときには、やはり一度完結してから読もうと思っていた。
しかし、なんの因果かちょうど読む本がなくてこの『女王暗殺』が売っていた。
買ってしまったからには読むしかない。
そして再び長いシリーズにのめりこまなくてはいけないようになったのかもしれない。

荻原重化学工業シリーズ』2作目。
もしくは安藤シリーズ第2シリーズの2冊目。

「日常の世界」と「特別の世界」。
この2つの大きな章題。

普通のなにも変わることのない日常。
自分の意思で特殊な、そして日常の世界に戻ることが許されない「特別の世界」。

母が殺され「1101」という死に際のメッセージを受け取った男。
売れない作家としての日常を抜け出し、母を殺した男。

ふたりの物語はやがてつまらない日常を抜け出し、ひとりの人物の暗殺という大きな物語へと向かっていく。


ただそれだけであったならなんてことはない。
エディプス・コンプレックスや近親相姦といった安藤シリーズを読んできた人にとってはお馴染みの禁忌に触れたりすることすら目くらましのように思えてくる。

いや、それもおおきく物語の核へと至る配置になっているとすら思えてしまう。


ラスト数十ページ。
どんなことを思ったか。
もうさ…
SAWのテーマが頭のなかでガンガンに鳴り響いてた。

急転直下のラスト。
あらゆる登場人物の行動がラストに結びついてくる。
これは2人の男を主人公に据えながらも、おおきな物語へと続いていた。
今までミステリとすら思わなかったのに、すべての要素がひとつの終着点のために用意されたかのような展開。

とんでもねーよ、これは…


そして気になるのはやはり暗躍する安藤直樹の存在。
彼が前作・今作でなにをどう行動していたのか。
それはまだ分からない。
しかし、彼はいまなお浅倉に会うために行動しているのだろう。
シリーズの謎はなお奥深いところへと進んでしまった。

一つの女王暗殺という物語は幕を閉じたが、シリーズの謎はまだ闇の中。
これはまた…
どうやら追いかけるしかなさそうだ。

【小説】生まれ来る子供たちのために

メフィスト賞→浦賀和宏
11 /11 2008
生まれ来る子供たちのために
But, we are not a mistake

浦賀和宏
表紙イラスト:ウスダヒロ
講談社ノベルス
生まれ来る子供たちのために (講談社ノベルス)生まれ来る子供たちのために (講談社ノベルス)
(2008/11/07)
浦賀 和宏

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「違う! 俺は特別だ。 お前らなんかとは違う!」
そうだ、自分は違う。自分は違うんだ。

生まれ来る子供たちのために』本文より

八木剛士シリーズ9作目。
最終巻。

崩壊に至る物語はついに終局を迎えた、か…。

ページをめくって最初の引用に浦賀和宏の3作目『頭蓋骨の楽園』から安藤直樹の言葉を使っていたのを見て「ああ、これは本気で読者に挑んできたなと思わず身構えてしまった。
それと同時に興奮。

目次でも驚かされた。

第二章「美穂」
第三章「南部」
第四章「剛士」
第五章「純菜」

うわ…
そして内容もそのとおり、ひとりひとり物語が終了していく。
もちろんこれまでに張り巡らされた伏線も回収され…

あのSFのように思える展開や、奇跡の「力」。
もちろんある解答が出される。

なによりも八木と純菜という美女と野獣。
彼らがすれ違い、間違っていった先で迎えるエンディングは見事としか言いようがなかったです。

ああ。
ここに辿りつくのか、って。

そんなエンディングを迎えた先のページ。
第六章「終局、あるいは始まり」。
この物語のラストに実にふさわしい終わり方でした。


完結まで3年9月。
浦賀和宏の本をこの巻に9冊も読めるとは。
最初はミステリじゃなく、なんじゃこりゃ、とも思ってた。
でも話がどこに向かうのかさっぱり分からない展開や巻を重ねるごとにキャラクターたちに愛着がわいてきた。

八木シリーズ。
十分に堪能できたシリーズでした。

次回作にもめっちゃ期待しております。

【小説】地球人類最後の事件

メフィスト賞→浦賀和宏
09 /21 2008
地球人類最後の事件
The Beginning of The End

浦賀和宏
表紙イラスト:ウスダヒロ
講談社ノベルス
地球人類最後の事件 (講談社ノベルス ウF- 17)地球人類最後の事件 (講談社ノベルス ウF- 17)
(2008/07/08)
浦賀 和宏

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そうだ。俺には《力》があるんだ。死なないのだ。死ぬはずがないのだ。確かに、防ごうとも、避けようとも、もう間に合わない。どうにもできない。でも、きっと助かる。助かるはずなのだ。

地球人類最後の事件』本文より

八木シリーズ8作目。
ついにクライマックス突入。

ようやく…
ようやくこのシリーズの構成が見えてきた。

最初はただ鬱屈した少年の歪んだ青春を描き出し、やがて『力』という少し不思議な印象が出てきた。
そして転換期を迎えてからは怒涛の展開と変化球の連続。

ただのコンプレックスを持つ少年の変化を描くだけではない。
もっと大きな「何か」がこのシリーズにはある。
しかし最も重要なものは主人公の八木剛士と松浦純奈の関係にある。

それは分かっていた。
分かっていたが、まさか最終巻1歩手前でこの展開とは!??

様々なことを経験し、自ら変わり続けてきた八木を待っていたのはこんな最後かよ!?

いいのか。
いや、今後どうなるんだ。

この巻で今まで描かれてきた人間関係のすべてが変化してしまった、そういう印象だ…
さすがにそろそろ真相が暴かれていくだろうとは思っていたが、ある意味それ以上の衝撃だった。

もうこれは最終巻の『生まれ来る子供たちのために But, we are not a mistake』に期待せざるを得ないです。

【小説】松浦純菜の静かな世界

メフィスト賞→浦賀和宏
08 /11 2008
松浦純菜の静かな世界
matsuura junna no shizukana sekai
浦賀和宏
表紙イラスト:ウスダヒロ
講談社ノベルス
松浦純菜の静かな世界 (講談社ノベルス)松浦純菜の静かな世界 (講談社ノベルス)
(2005/02/08)
浦賀 和宏

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「――私には分かるよ。あなたの気持ちが。殺したい奴って、確かにいるもの」

松浦純菜の静かな世界』本文より

新刊をまだ買えてないけど八木剛士のシリーズ1作目『松浦純菜の静かな世界』を再読。
そろそろ最終巻がでるので、それに合わせて新刊である8作目はを読もうかなと。

連続女子高生殺人事件。
その女子高生たちは体の一部が持ち去られていた。


八木剛士という卑屈な少年を主人公とした作品。
この作品が出たときはやっぱり今までどおりどこか突き抜けた感のあるミステリ風味なものじゃないかなと期待してた。
そうしたらSFのような要素がはやりあるものの、一人称で独特な語り口だけど物足りない。

そう思っていたら、続刊が出るほどにあまりに特異なシリーズとなっていった。
もはや1作1作で語れるようなものじゃない(笑

読み返してみたら、この序盤から随分と伏線が張られているし。
最初の八木剛士への銃撃。
そして松浦純菜たちの「力」に関すること。
「撃った男」に関する不自然な行動。
また、ほぼ八木剛士の一人称なんだけれども、それ以外の人間からみた記述が明らかに後の伏線じゃないか。


さすがにシリーズも長くなってきたので最後を目前にして1作目を読んだのは正解だったかも。

【ミステリ】学園祭の悪魔

メフィスト賞→浦賀和宏
07 /03 2008
学園祭の悪魔
ALL IS FULL OF MURDER

浦賀和宏
講談社ノベルス
学園祭の悪魔 (講談社ノベルス)学園祭の悪魔 (講談社ノベルス)
(2002/02)
浦賀 和宏

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生きることも、死ぬことも、変わらない。
愛することも、殺すことも、変わらない。

学園祭の悪魔』本文より

安藤シリーズ6冊目。
シリーズの中でもっともショッキングとも言われる1作。


これまでのシリーズでも反探偵主義や、人間としての禁忌に触れていた。
だが、これほどまでにショッキングかつこれまで作品上で取ってきた姿勢をもっとも顕著に表した作品もなかったと思う。

そして内容すべてがシリーズ上の伏線やトリックに触れてしまいそうで、内容に触れるのも躊躇われるんだよなぁ。
そもそもシリーズを読んでいなければこの作品については楽しさが半減以下になるだろうし。


テーマのひとつであるホンの些細な「殺意」や「悪意」、「欲望」。
そういった誰もが持ちえる感情に正面から向き合い、またシリーズを通した壮大な伏線に仕上げた点でも評価できる1作だと思います。

残念なのはこの後1作だけしか安藤シリーズが刊行されてないこと。
もしシリーズが続いていればこの話は大きな伏線になっていただろうに…

【ミステリ】記号を喰う魔女

メフィスト賞→浦賀和宏
04 /22 2008
記号を喰う魔女
FOOD CHAIN

浦賀和宏
講談社ノベルス
記号を喰う魔女 (講談社ノベルス)記号を喰う魔女 (講談社ノベルス)
(2000/05)
浦賀 和宏

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いいか? 死者を喰う。それは腐敗という悪夢から死者を解放し、生者を死者の墓場とする至善な儀式なんだ

記号を喰う魔女』本文より

安藤シリーズ5冊目。

自殺した学生の遺書により天文部の面々が招かれた孤島。
そこで起こる人肉を食べたことからはじまる連続殺戮。
誰が生き残れるのか、というミステリというよりサバイバル。
いや、でもやっぱりミステリなのか。
うーん。

中期の浦賀和宏がカニバリズムをやたら色々といわれるきっかけにもなった作品。

大いにカニバリズムや人類史が語られます。
歴史学から宗教学からアニミズムから色んな方面から。
そしてカニバリズムの生々しいまでの表現は気持ち悪いことこの上ないです(笑
登場人物も狂気の臨界点突破して暴走しまくります。
下手なホラーよりずっとホラーだよなぁ。


まぁ、でもとにもかくにも安藤シリーズ先の4冊を読んでないことには話にならないと思う。
1,2,4作目にも大きく関わってきてるし。

5冊目は2冊目のように安藤裕子の話。
そして今回もシリーズの伏線がまた一つ紐解かれていく。
安藤直樹の真実の出生の謎とか。


…でもその謎は解かれてないよなぁ。
なぜ裕子があの人を求めたのか。
この話のミステリ部分のもっとも至極単純な人間の野生ともいうべき動機から考えると、すでに裕子はこの先に自分に何が起こるのかを知っていたっていうことになるんじゃないかとも思えたり。
じゃないとある意味今回行われた壮大な実験に他人を巻き込むはずもないし…。


シリーズの中でも最もスピード感があり狂気を垣間見れる作品だと思う。
残りは2冊。

【ミステリ】とらわれびと

メフィスト賞→浦賀和宏
04 /10 2008
とらわれびと
ASYLUM

浦賀和宏
講談社ノベルス
とらわれびと―ASYLUM (講談社ノベルス)とらわれびと―ASYLUM (講談社ノベルス)
(1999/10)
浦賀 和宏

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「ずっと子供の頃から抑圧されていた。女の子の服を着たかった、化粧もしたかった、でもそんなことを男の自分がやるのは変なことだってことも、十分理解しているんですよ、頭の中では。だから必死に自制した。でも――僕ももう社会人なんだから、好きなことやってもいいなって思い始めたんですよ」

とらわれびと』本文より

安藤シリーズ4作目。
こっから読むのはまったくお薦めできないのでしっかり順番に読んでからたどり着きましょう(笑

随分時間が空いたけれども安藤シリーズ再読、と。

表面的には男女のセックスとジェンダーのことを語っているような作品に思えるけれども、さらに根源的な人間の深遠まで覗いている作品のような気がしてならない。


子供を孕んだ男性が次々に失踪する事件が発生する。
その男性たちはジェンダー的には女性であるということが共通点だった。
また腹をかき回され惨殺されるという事件も同時に起こる。
それをシリーズの登場人物である金田、そして3作目から登場した安藤の彼女である留美が事件に関わっていく。

それが今回の話のメインとなる事件でもあるのだけれども、1作目の伏線である安藤直樹の父親の自殺も事件に絡み、また安藤の友人の金田がおおきくシリーズのダークサイドの中へと踏み込んでいく。
さまざまな登場人物の狂気に触れながら怒涛のラストへと流れ込んでいく様は圧巻。

これまでのシリーズでも人間のタブーに抵触しながら人間の歪んだ愛情を描いてきたシリーズだけれども、中でも今回は実になにかの境界線を突破したかのような出来に感じる。


…というふうに4冊目を読んだときは思うわけだけれども、やっぱり5冊目のほうがキてるよなぁと思ったり6冊目では驚愕過ぎる事実に唖然としたり(笑

4冊目でも人間の昏い感情をひしひしと感じれます。
この感じこそがやっぱり安藤シリーズだよな(笑
いつか『透明人間』から先の話も書いてくれないだろうか。


表紙の男性器と乳首と腹という背景に、何者かが閉じ込められてるというのは実に見事にこの本を表してるよなぁ。
男性という中に閉じ込められたパーソナリティ。
それが核でありきっかけでもある。
その閉じ込められているのが副題でもある「ASYLUM」。
精神病棟なんて使われ方をするのが一般的だけれども…

確かに狂気が解放されるさまとかにはゾクっとした。


あと、ミステリでなくやはり1作目から貫かれている「探偵小説」をまったくしない反ミステリという体裁を取り続けている姿勢には感心。
もうあっぱれである。
ミステリのようにラストであらゆる伏線が回収され謎が解かれる。
しかしそれは読者には解けることはない。
そしてシリーズの伏線がさらに増えていく(笑

もう今回二つのラインで話が進んでいくことに対しての結末っていうのはものすごく好みな展開だ。


次は『記号を食う魔女』。
あの作品でたぶん「浦賀和宏らしさ」っていうのが確立された気がしてならない(笑

【小説】堕ちた天使と金色の悪魔

メフィスト賞→浦賀和宏
09 /17 2007
堕ちた天使と金色の悪魔
Another Green World

浦賀和宏
表紙イラスト:ウスダヒロ
講談社ノベルス
堕ちた天使と金色の悪魔 (講談社ノベルス)堕ちた天使と金色の悪魔 (講談社ノベルス)
(2007/09/07)
浦賀 和宏

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目には目を、だ。復讐するしかないと思った。それだけが、俺の生きがいだった。どんなに強くなっても、俺を侮辱した連中全員に思い知らさなければいけない、そう思って昨日まで生きていた。

堕ちた天使と金色の悪魔』本文より引用


八木剛士シリーズの7作目。
残り2冊でラスト予定(だったと思う


再び主人公は八木剛士に。
『力』を手に入れ、何者をもひれ伏させることができるようになったが、結局なんも変わっちゃいないじゃないか orz

…と思っていたが、そうじゃない。
一人称で描かれているからそう見えるのであって、周りの反応は明らかに今までと違っていたし、人間関係もずいぶん変化したように思える。

でも、八木のフィルターを通して描かれているので他のキャラクターの心情がつかみにくい。

それどころか、ところどころで挿入されている謎の会話や、章が変わる前後のつかみ所の無さなどが余計に混乱させられる。


いったい今現在でいくつの物語が同時に進行し、物語の核心がどこにあるのか。
それがどうにも分かりづらい。

ただ、今回の八木の選んだ選択は実際に彼の選んだ選択なのか。
それとも選ばされた選択なのか。

とにもかくにも、ものすごくいいところで終わってしまったから続きをーー。
正直『史上最大の事件』の時よりも気になって仕方ない(笑


副題の『Another Green Wold』はブライアン・イーノのアルバムタイトルであってるんだろうか。
浦賀和宏らしい副題ではあるけれども、あんまり詳しくないんで今回の物語とどう関連付けてこの副題なのかが分からないです('A`)

軽く色んなレビューを見たところブライアン・イーノが決定的に変わったのはこのアルバムであり、境界線を引くならここ、ってのは分かった。
……ということなら今回の話と結構絡んでくるような気がする。


表紙は相変わらず暗いな(笑
(実際、ウスダヒロさんはそうリクエストされたらしいけれども
対立する天使と悪魔の構図ってのもある意味いろんなことを暗示してていいなぁ。

【ミステリ】頭蓋骨の中の楽園

メフィスト賞→浦賀和宏
06 /01 2007
頭蓋骨の中の楽園
LOCKED PARADICE

浦賀和宏
講談社ノベルス
頭蓋骨の中の楽園 (講談社ノベルス)頭蓋骨の中の楽園 (講談社ノベルス)
(1999/04)
浦賀 和宏

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「それ以上知ると。
もう、戻れなくなるぞ。

そうだ。
僕等はもう、戻れない。」

頭蓋骨の中の楽園』本文より



安藤シリーズ第3弾『頭蓋骨の中の楽園』。


連続して起こった殺人事件の共通点は首が何者かによって持ち去られていたこと。
笑わない男「安藤直樹」らは恋人を殺された刑事の依頼から事件に関わることに。
この事件に安藤は「俺の事件だ」とつぶやく。



やはり安藤シリーズはシリーズをどれだけ読んでいるかによってこの本に対する感想は異なるものだと思う。
一つの事件に対してのすべての記録ではあるのだけれども、安藤が関わらなければ事件の全貌を明らかにすることはできなかったし、このシリーズの輪郭をさらに知ることもなかった。

けれどもミステリとして見た場合には安藤の事件としての真相はどうしても突飛に思えてしまう。
それこそが面白いところなんだけど、一見さんお断りみたいな雰囲気を出してしまうのが残念。
とりあえずは「記憶の果て」からここまで辿りついた人ならば相当に楽しめる話なんだけれども。



この「頭蓋骨の中の楽園」で浦賀和宏の作風って決定付けられたような気がする。
今までも確かにアンチ・ミステリという態度をとっていたし、人間の根源的なところを崩しにかかる衝撃的な作風だったけれど、その壁をさらに突き破ってきたのはここからだと思う。
まさに「Locked Paradice」=閉ざされた楽園。
その楽園こそが頭蓋骨の中にあり、その楽園の中で考えられていることといったら…


はじめてこの本を読んだときは読後かなりネガティブな感じに気分を落とされたもんなぁ。
かなり刺激的な本との出会いだった。


次は「とらわれびと」。

頭蓋骨の中の楽園 頭蓋骨の中の楽園
浦賀 和宏 (1999/04)
講談社

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【ミステリ】時の鳥篭

メフィスト賞→浦賀和宏
05 /03 2007
時の鳥篭
THE ENDLESS RETURNING

浦賀和宏
講談社ノベルス
時の鳥籠 (講談社ノベルス)時の鳥籠 (講談社ノベルス)
(1998/09)
浦賀 和宏

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「愛なんてものは、只の言葉だ。
『友達』と『恋人』の間には何の違いもない。『LIKE』と『LOVE』の間には何の違いもない。
ただ、言葉が違うだけだ。
人は人間関係を、そういった言葉で説明して、それで安心するのだ。」

時の鳥篭』本文より


安藤シリーズ2作目『時の鳥篭』。
1作目『記憶の果て』と対を成す存在であり、安藤直樹と安藤裕子を巡る一連の作品群の方向性を決定付けた作品。

主人公は記憶の果てで出てきたバンドのベースの浅倉幸恵。


時の鳥篭』というタイトルと『THE ENDLESS RETURNING』という英題があまりに適している。

いきなりSFのような話からはじまり、その謎に対してはまったく何の説明もなされない。
ただそういったことが"あった"というだけで。
もはや読者なのでそれは受け入れざるを得ない。
このシリーズは大抵そうなんだけど。
しかし、読み進めていくと、次から次へと作品の骨組みが現れていくのに驚く。
記憶の果てだけで完結せず、少しずつ作品の奥深くを覗き見るような感じ。

浅倉幸恵は鳥篭に囚われたままこの本の物語の中で延々とリピートされ続けるんだろう。
様々な恋愛を経て、けれどもどの核心にも迫れないまま。
そんな物語を読み終わって、読者が手に入れたのは物語の片鱗と次の物語に進むための権利。


1冊の本としてみると、なぜ彼女は「ここ」にいるのか。
父親が言った言葉の真意を探る冒険。
そして親と子の確執ということを語っているといえるし、だからこの本だけ読んでもまったく問題はないんだろうけど。
一連の物語の一つとして読むことを前提にされているだけに、やっぱり『記憶の果て』を読んでおくのは必須だろうなぁ。


よし、次は『頭蓋骨の中の楽園』。


時の鳥籠 時の鳥籠
浦賀 和宏 (1998/09)
講談社

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【ミステリ】記憶の果て

メフィスト賞→浦賀和宏
05 /01 2007
記憶の果て
THE END OF MEMORIES

浦賀和宏
講談社文庫
記憶の果て (講談社文庫)記憶の果て (講談社文庫)
(2001/08)
浦賀 和宏

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「俺は名探偵が嫌いなんだ。完全無欠で、小説内の世界で絶対的な権力を持ち、最後には容疑者を集めて得意そうに犯人を指し示す名探偵が。俺はそんな名探偵が登場するたびに思っていた。お前が最初に殺されればいいのにと。」

記憶の果て』本文より

第5回メフィスト賞受賞作『記憶の果て』。
浦賀和宏安藤シリーズ1作目。

安藤直樹の父が死んだ。
彼が残したのは一台のパソコン。
その中には安藤直樹の姉がいた。
なぜパソコンの中に?
プログラムなのか、それとも。


ある種の偉大な青春小説だと思う。
"探偵"が謎を解けば解くほどに壊れていく世界。
人と人との関わりも信頼も友情も何もかも。

今現在の『八木シリーズ』の原点とも言える。
一人称で進められる世界。
そして外に対しての圧倒的な不信感とか。

でも実際に中高生の時ってそうじゃなかったかなぁ、と思う。
反抗心とか世の中に対する不信とか。
言葉には出さないし、大人の前では決して言わないけれども多かれ少なかれ誰もが思うことだと思う。

そんなことを実際に言葉にしたら?
もうグイグイこのダークな話に引き込まれる。



そしてあとアンチ探偵小説という形をとってるのも特徴かなぁ。
謎はすべて解かれる必要はない。
あくまでこれは「安藤直樹」の物語であり、不必要な謎は解く必要すらない。
安藤直樹によるアンチ探偵論をはじめ、途中からその立場を明確にして最後まで突っ切るのは読んでて気持ちがいい。

……それがまさか、このあとのシリーズの伏線になろうとは思ってもなかったわけで。


これから『透明人間』までゆっくりと再読するつもりだけれども、もう1回構造を知ってて読むのがすごく楽しみ。


文庫版の『時の鳥篭』って出ないんかなぁ……

記憶の果て 記憶の果て
浦賀 和宏 (2001/08)
講談社

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【ミステリ】ファントムの夜明け

メフィスト賞→浦賀和宏
04 /18 2007
ファントムの夜明け
DAWN OF THE PHANTOM

浦賀和宏
幻冬舎文庫
ファントムの夜明け (幻冬舎文庫)ファントムの夜明け (幻冬舎文庫)
(2005/03)
浦賀 和宏

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絶望した。
私はなんて無力なのだろう。
この力を友達に信じてもらうことすら、できない。
なのに、いったい、なんのためにこんな力が――?

ファントムの夜明け』本文より


浦賀和宏の『ファントムの夜明け』を再読。


別れた恋人を探す主人公の真美。
探し始めた折に真美は頭の中に声が聞こえるようになる。
それは死んだ人間からの声だった。


ファントムの夜明けというタイトル。
なんかタイトルから察するにこの物語が大きな物語の序章のように思えるんだよなぁ。
でも、ある意味その序章のように思えるこの『ファントムの夜明け』こそが語るべき物語であって、それ以降は書いたとしても蛇足のように思えるから、きっとこれが最適な物語としての終わり方なんだろう。


一種の恋愛がらみの物語でもあるし、なぜ自分に死体を見つける力があってその能力をどうやって使っていくのかというミステリでもあるように思える。
ジャンルはどこにも分けられそうにないけれども、確かにこの本は面白かった。


浦賀さん……。
青春もののように思わせてもやっぱり一度はどん底まで落とすんだよな…
そのもっとも奥深い心理にまで落として、そこからなにを語るのか。
それこそがやっぱり浦賀和宏が語る物語の魅力だ。

ファントムの夜明け / 浦賀 和宏

【ミステリ】彼女は存在しない

メフィスト賞→浦賀和宏
04 /13 2007
彼女は存在しない
She is not there...

浦賀和宏
幻冬舎文庫
彼女は存在しない (幻冬舎文庫)彼女は存在しない (幻冬舎文庫)
(2003/10)
浦賀 和宏

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「しっかりしろ、しっかりしろよ。俺はお前の兄貴の有希だよ。亜矢子は――亜矢子はおまえ自身じゃないか――」
「亜矢子が――私?」

『彼女は存在しない』本文より


浦賀和宏の「彼女は存在しない」。


久々に再読。


妹が多重人格になってしまっていた。
妹と、妹のもう一つの人格をたどる兄。
同時期に恋人を何者かに殺された香奈子は亜矢子のもう一つの人格である由子と関わることに…



本の中に出てくるあらゆる人物がラストに向かって崩壊していく様はやっぱり異常だ(笑

一見普通の恋愛小説に多重人格を絡めて、最後に「あっ」というラストを迎えるように思わせて、実はそんな驚く程度で済まされないのが浦賀さんテイストだなぁ。
登場人物同士の関係や過去を掘り下げていくと、序盤から張られていた微妙ななんでもないような伏線がどんどん活きてくる。

なにげない一言。
けれどもその一言が実は真意が読者の思わぬところにあったり。


自分がなぜ自分であると言い切れるのか。
この本のテーマはまさにそれだよな。


彼女は存在しない / 浦賀 和宏

∀ki(あき)

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