【小説】分岐点

メフィスト賞→古処誠二
05 /10 2015
分岐点
古処誠二
双葉文庫
分岐点 (双葉文庫)分岐点 (双葉文庫)
(2007/10)
古処 誠二

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後から言い訳するような人間は、人を指導してはいけない。人を指導するということは責任を負うということです。そして責任とは、煎じ詰めれば非難を受け止める覚悟です。

分岐点』本文より

古処誠二の『分岐点』を文庫版で再読。

沖縄が陥落し、原子爆弾が2つ投下され。
第二次世界大戦末期の動員された中学生と先生たちを描く「分岐点」。
国を信じて戦ってきて、飢えの中でもいつか勝てると信じ、負ければ捕まればこの世の地獄を見ると教え込まれた時代。
そんな中を中学生たちを主役に、って。
久々に再読したけれども、またものすごいシチュエーションであり実際にあったであろう話でもあるんだろうなと考えると…

真実を知って逃げるべきだったのか、戦うべきだったのか。
知るべきだったのか、国のいう事だけを信じておくべきだったのか。

戦争末期までの様々な分岐点とそれを間違え続けてきたからこその死を累々と積み重ねていく結果になっていくまでのなんとも言えない展開。
ほんとこういうのを書ける作家っていなくなってきてるよなぁ。

【小説】七月七日

メフィスト賞→古処誠二
04 /11 2015
七月七日
古処誠二
集英社文庫
七月七日 (集英社文庫)七月七日 (集英社文庫)
(2008/06)
古処 誠二

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日本人の子として恥じぬよう、アメリカのために全力を尽くす。
日系人の忠誠を疑う声を、戦争が終わるまでに必ず吹き飛ばす。
同期生と掲げたスローガンは決して達成不可能なものではなかった。

七月七日』本文より


文庫にて再読。
つらい。
内容をぼんやり覚えてたけど、こんなつらい戦争だったっけか。

アメリカ軍の語学兵として戦う日系人のショーティー。
アメリカでは日本人、および日系人の財産は没収。
同じ軍の中では「アメリカ人」とみなされない。
しかしナショナリズムは彼はアメリカ人である。
ゆえに戦う相手は日本兵。

自分の中のアイデンティティを揺さぶられ続ける戦場。
これほどの地獄のような場所があるのか、と。
いわば自分を認めてくれるものは日系アメリカ人しかいないという事態。

人種だけでなく、日本の文化、アメリカの文化にももまれ、日本人からは怨まれ呪われ軽蔑される。
同様にアメリカ人からも軽蔑され、日本の味方ではないのかと疑われ。

そして迎える7月7日の七夕の日。
このラストに祈られた純粋な願いを見たときに、読者としてもショーティーたちにしても心が締め上げられるかのような気持ちになるに違いない。

【小説】線

メフィスト賞→古処誠二
08 /26 2012

古処誠二
角川文庫
線 (角川文庫)線 (角川文庫)
(2012/07/25)
古処 誠二

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兵の犠牲より米の損害が切実という現状が明瞭になってきた今、確かに遠藤の判断は正当とは言えなかった。
米を取るか人を取るか。
いま立たされているのは、その岐路なのだろう。米が届かねば人は動かず、人が動かねば米は届かない。誰にも正解など出せない難問だった。

』本文より

夏である。
夏といえば古処誠二
この時期になると1冊は読みたくなるので読んでみた。

』。
まで兵站をとどける部隊。
また様々な荷物をもった部隊がいる。

そんな前線でない場所である戦場の日常であったり非日常であったり。
戦時中の日本軍がパプアニューギニアで遭遇した様々な話が収録されている。

もちろんフィクション(だと思う
だが、その描写はすさまじかった。

当たり前だが、食料がなければ人は死ぬ。
これは以前にも「ルール」の中で古処誠二が描いたけれども、今度は物資を運ぶ側。
決して戦う側でないけれども、武器も携帯し、いつでも人を殺せる状態であり、もちろんいつだって敵に狙われて死ぬこともある。

食糧を持ちながら食糧に悩み狂い死んでいく。

戦争が悪いのではない。
人間性とはなんなのかを、この平和な時代だからこそあらためて突き付けられる。
こういう極限状態を知ることで考えられる。

この人の描くリアリティ、緻密な取材もあったであろう背景を見て取れるかのような描写がやっぱりすごかった。
戦争を語り継げる人がいなくなりつつ今だからこそ、もっともっと戦争の中で何があったのか、この『線』のような本を読むと知識欲が刺激される。

特に今回のような「前線ではない」、それでも確かに戦時中の異国の中で起こる出来事という普通なかなか作家や編集者が取り上げないようなもににもかかわらず、心にずしりとくる短編のひとつひとつが強烈でした。

【小説】敵影

メフィスト賞→古処誠二
10 /12 2008
敵影
古処誠二
新潮社
敵影敵影
(2007/07)
古処 誠二

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「死んでいないのが罪だとは悲しいよ」

敵影』本文より

古処誠二の『敵影』。

昭和20年8月14日。
終戦の前日の話。

遥か南の沖縄の捕虜収容所で敗戦の色が濃くなっていく時に、ふたりの人間を探す男がいた。

なにが正しく、なにが悪なのか。
いや、正義や悪などここでは描かれない。

見えない「敵影」が描かれる。

誰が味方で敵なのか。
それすらも分からない。
本当はそんな区別などないような中で、人は「敵」を探し求める。


古処誠二の戦争小説はこれまで様々な極限状態を描いていた。
そんな中でもこれはかなり特異な小説だろうと思える。

特定の環境下での状態であるのは確かなのだが敵を求める本能というか敵を探し倒す醜さ、そして変わらないことの尊厳を描いているとでも言えばいいのだろうか…

誰が悪いわけでもない、戦争が終わりそうだからみんなハッピーに戻れる。
そういうわけではない。


戦いから離れてもなお、社会が変わっていこうとも離れられない戦いというものを見た気がした。
そこに尊厳も醜さもあり、それがまた何か読み手にダイレクトにメッセージを投げかけてくれる、そんな本でした。

【小説】七月七日

メフィスト賞→古処誠二
06 /28 2008
七月七日
古処誠二
集英社文庫
七月七日七月七日
(2004/09)
古処 誠二

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ショーティーは卓越した日本語を買われ、陸軍情報部の日本語学校へ送られた。
日本人の子として恥じぬよう、アメリカのために全力を尽くす。
日本人の忠誠を疑う声を、戦争が終わるまでに必ず吹き飛ばす。
同期生と掲げたスローガンは決して達成不可能なものではなかった。

七月七日』本文より

古処誠二の『七月七日』。
古処誠二なのでもちろん太平洋戦争の話。
文庫版は加筆もされているようです。


日系二世としてアメリカ軍に所属するショーティー。
アメリカ軍として日本軍と戦い、日本の兵に投降を勧める。
アメリカ兵たちには敵兵と同じ顔をしていると疎まれ、日本人には裏切り者とののしられる。
そんな中で彼は何を思ったか。


もちろんハッピーエンドなんて望んでないけどさ orz
こういう展開になるのもそりゃ予想はできたさ…


日本を知らない日本人。
もちろん勉強もした、けれども彼はサンフランシスコで育ち学んだ人間。
日系人でアメリカへの忠誠を誓わなければ財産も没収。
そんな中で彼は必死に勉強し、天皇も敬わうことも許されず、ただ認められるために必死だったというのが…
そして、アメリカの地で宗教的にも弾圧を受け、それでもアメリカと日本の戦争を止める為に橋渡しになろうとする。

しかし、報われない。
もちろん言語を解すことができるというのは効果的。
それでも日本とアメリカの間の溝を埋めることができないもどかしさ。
さらに戦闘の最前線でのあまりにも非情な光景。
自分は日本人を救うために必死に説得しているにも関わらず、それを救えないことに対する絶望感。


もう読んでてたまらない orz
アメリカの日系人の話は聞いたことがあって、かなり悲惨な状況に追い込まれたというのはもちろん知っていた。
けれども、その時どんなだったかというのはこの小説で思い知らされた気がする。

【小説】分岐点

メフィスト賞→古処誠二
01 /30 2008
分岐点
古処誠二
双葉社
分岐点分岐点
(2003/05)
古処 誠二

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「いいな片桐。足元を見失うな。体制がどう変わろうと、軍に身を置く人間の本懐は変わらん」
ともすれば独り言にも思える気配で、上官は最後に言った。
「子供たちを死なせるな」

古処誠二分岐点』本文より引用

古処誠二の第二次世界大戦を描いた小説『分岐点』。

1945年。
軍は中学生までも動員し、戦っていた。
下士官たちは使えない人間を統率しなければいけないことに疲弊し、物資が尽き、無謀な作戦を行おうとする軍に苛立ちを覚えていた。

そんな終戦間際の様々な立場の人間の『分岐点』を描いた作品。
中学生、女学生、下仕官、少尉etc

当時の体制による情報を制限した教育により生まれた歪んだ考えを持つ子供たち。
そういった正常、当たり前のことすら知ることを許されず動員され死地に赴かされる。
そんなのはおかしい。

だから戦争は悲惨でするべきではないのだ。
そうした戦争を生み出したということを記憶にとどめて生きる必要がある…


確かにそうだ。
けれどもそんなことを言うのは簡単なんだけど、この小説はもっと深いところまで考えさせられる小説だった。
なんというかよくこれを書いた古処誠二っ(笑

この本を読んだときにそうしたよくある反省ばかりする日本ということも考え物だと思わされた。

なぜ日本は戦争ということをはじめたか。
それをはっきりといえる人ってどれだけいるんだろうか。
そもそもの原因はいつからはじまり、何がきっかけで戦争がはじまることになってしまったのか。
後者は学校で教えられることだけれども、前者を答えられるような人って意外と少ないのではないか。
それを知っていれば一概に日本がすごく悪いということは言えないような気がするのだけれども(笑

アジアを占領し、搾取していた欧米を追い出し平和をもたらそうとしたなどの理由もある。
そして自分たちの国を家族を守るために戦って死んでいった人たちもたくさんいる。
その人たちの犠牲の上にいま生きている人たちがいる。

戦いがあるところにはそうした誰かのために戦っていたという想いがあるものだと思う。
だから映画でも戦争を扱ったものにはそういったところに敬意を払っているシーンが多くある。
なぜアメリカはそうした映画を作ってもまったく批判されないのに、日本はある国などから批判されるんでしょうね(笑

そこに戦争を正当化するなんてことは誰も考えてないだろうに…

などということを書いてみたけど別に筆者は右でも左でもないです。


少々話がそれたのでこの本の話へ。
戦時中どんな立場の人たちがどんなことを考え戦争というものに接していたか。
それがこの本の中で描かれている。

日本の内部も攻撃を仕掛けてくるアメリカ兵の誰もがおかしくなっていく戦争の果て、そんな第二次世界大戦の終わりと戦後の始まりという分岐点にたった時に起こった衝突。

戦争の最後に人々は何を考え、何を受け入れ、何を拒否したのか。
まざまざと当時の様子を再現しながら進む物語を読むにつれて、当時のことを考えさせられるそんな本でした。


「ルール」以降の古処誠二の戦争ものは秀逸なのが多いな…
参考文献とかにも結構惹かれます。

【小説】接近

メフィスト賞→古処誠二
07 /29 2006
接近
古処誠二
新潮文庫
接近 (新潮文庫)接近 (新潮文庫)
(2006/07)
古処 誠二

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昭和20年。
沖縄にアメリカ軍が上陸した時の話。

古処誠二の描く戦争もの。



沖縄の少年から見た第二次世界大戦。
守ってくれるはずの日本兵は沖縄に住む人たちを守るべきものとみなさず、アメリカ兵からも攻撃を受ける。

沖縄に住む人たちにとってあの戦争は一体なんだったのか。
なぜ巻き込まれなければならなかったのか。
食料を奪われ、それが済んだら用済み。
スパイと疑われ無実の罪でも殺されていく。


戦時下での過酷さと厳しさと虚しさが短い物語の中に密度濃く描かれています。



次に文庫化されるとしたら「分岐点」かな。

【小説】ルール

メフィスト賞→古処誠二
07 /24 2005
ルール
古処誠二
集英社文庫
ルール (集英社文庫)ルール (集英社文庫)
(2005/07/20)
古処 誠二

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太平洋戦争末期のフィリピン「ルソン島」。
日本兵はマラリアやゲリラによる攻撃、そして飢餓によって人としての限界に近づいていく。

古処誠二の戦争小説第一弾に加筆修正がされた文庫版。

遠い異国の地で食糧も装備も十分に与えられないまま任務を命ぜられる。
道なき道を歩けば、死体に出くわし、病気も蔓延する。
薬もない、傷が化膿すれば傷口を直接焼く。
食糧もないので、近くにいる虫や植物を食べて飢えをしのぐ。
さらにいつゲリラや敵兵に襲われるかもしれない恐怖。
発狂し、敵兵のところへ笑いながら突撃していく兵士。

人類史上ずっと守られてきた最低限のルール。
そのルールによって人は人として己を保ってきた。
しかし、極限状態まで追い込まれた者たちは暗黙のルールと直面し対峙することになる。


重たいです。
全編ずっと緊張感がただよっていて読む人にも疲労を少々与えてくれます。
が、読む価値は十分にありました。
これが、新生古処誠二か。

∀ki(あき)

自由に生きてます。
色々読んだり見たりしてます。

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