【小説】箱庭のカレイドスコープ

本→桜宮サーガ
09 /05 2015
箱庭のカレイドスコープ
海堂尊
宝島社文庫
カレイドスコープの箱庭 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
海堂 尊
宝島社 (2015-07-04)
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……そうでした、白鳥導師。あなたのおっしゃる通りです。
それにしてもボンクラの最上級がドボンクラなんて初めて聞いたぞ。

『カレイドスコープの箱庭』本文より

バチスタシリーズ。最後の最後のエピローグのためのエピソード。
AIを世界へ。
田口くんの最後の挑戦。そして白鳥との最後の事件が描かれた。

AIの主張の行き着くところでもあり、最後の総決算らしく、次から次へと懐かしい面々があらわれる。
それがもう本当に最後なんだなぁと実感させられた。

単純に楽しかった。
そしてこんなにも桜宮サーガをこれまで楽しめたことそれ自体に感謝。

ラストのエッセイも読みごたえあり。
「ジェネラル・ルージュの伝説」の続きで作家生活5年目から10年目。
この作者はフィクションのようなAIを通して何をしていくか、その戦いの様がいかに作中に反映させられていたか。
こんなにも大変なことをやりながら、小説を書いていたのか…

【小説】玉村警部補の災難

本→桜宮サーガ
08 /30 2015
玉村警部補の災難
海堂尊
宝島社文庫
玉村警部補の災難 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
海堂 尊
宝島社 (2015-06-04)
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今だってこの大学病院を必要としている人は大勢います。大切なことは何ひとつ変わっていませんよ

玉村警部補の災難』本文より

短編集『玉村警部補の災難』。
田口くんと玉村警部補のなんと仲良きことか。
同類というかなんというか、災難ばっかり降りかかるふたりだな(笑
実に苦労人。

すべての短編が桜宮で起きた事件にリンクするのは、もうこの作者ならお手の物だとして、ミステリとしても面白い。
ミステリでは常識になっていることそれ事態を医学を用いてトリックにしているところなんてもう見事としか言いようがない。

短編だから軽く読めるし、それぞれの濃さにも満足。

【小説】ナニワ・モンスター

本→桜宮サーガ
10 /12 2014
ナニワ・モンスター
海堂尊
新潮文庫
ナニワ・モンスター (新潮文庫)ナニワ・モンスター (新潮文庫)
(2014/03/28)
海堂 尊

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「何をたくらんでいるのかわからんが、せいぜい世の中を引っ掻き回してこい」

ナニワ・モンスター』本文より


桜宮での話が終わったら、あらたな浪速府の物語が開始。
ケルベロスと同時期の物語であり、Aiをめぐるバチスタシリーズのその先の医療の未来。
それに極北の物語が示した経済と医療をめぐる話が継承し、日本を医療から見つめた場合のあるべき未来を、ナニワが日本を引っ掻き回す嚆矢となった。

ゆえに桜宮サーガが終わったあとの、さらなる後日談となるべき「未来」の話のように思えた。

今までバチスタで延々と描き、バチスタを補完するかのようにいくつもの医療の物語があって、それが統合されたその先が浪速の物語なんじゃないだろうか。
そんなふうに思えた。

【小説】輝天炎上

本→桜宮サーガ
07 /26 2014
輝天炎上
海堂尊
角川文庫
輝天炎上 (角川文庫)輝天炎上 (角川文庫)
(2014/02/25)
海堂 尊

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人々を死の淵から生の世界に引き戻す。これが、医学のチカラなのか。

輝天炎上』本文より


『螺鈿迷宮』の続編であり完結編である『輝天炎上』。
そしてバチスタシリーズ最終作『ケルベロスの肖像』と同じ時間軸の物語。
さらには『ブラックペアン1988』からの三部作の結末でもあり、『ナニワモンスター』も絡む。

あらゆる意味でこれこそ完結編じゃないか。
すべての物語がこの物語で交差する。

桜宮の最後の謀略であり、螺鈿迷宮の時代から少しずつ仕組まれてきた計画が発動。
命とはなんぞや、医療とはなんぞやのすべても詰まっており、つまるところはこれこそ海堂尊が描きたかったもののすべての解決編じゃないだろうか。

すんごいオールスター小説だ。

【小説】ケルベロスの肖像

本→桜宮サーガ
05 /17 2014
ケルベロスの肖像
海堂尊
宝島社文庫
【映画化原作】ケルベロスの肖像 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)【映画化原作】ケルベロスの肖像 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
(2014/01/09)
海堂 尊

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「イエス、マイボス」
「マイボスはやめろ」
俺が顔をしかめると、島津はモニタの向こうで笑顔になる。
「行灯もダメ、マイボスもダメ、いちいち細かいヤツだなあ。それじゃあお前のことも一体何て呼べばいいんだ?」

ケルベロスの肖像』本文より

田口・白鳥シリーズ最終章。
Aiを巡る物語と問題もひとつの区切りがつき、Aiという技術の現場での実用性と提案が世界中に向けて発信された。
海堂尊の実際の医療の現場での問題提起も兼ねた物語としての側面も役目を終えたわけだな…

このシリーズは確かに決着を迎えたけれども、いろんな物語の終着点であり、交差点であったわけだよなぁ。
だから最終章、最終エピソードといわれてもなんだかなー。
なんかそれは違う気がする。

高階先生の問題は、88,90,91年の事件から続いてきたものだし、
桜宮市と大学病院の行く末は「モルフェウス」「医学の卵」へと繋がる布石でもあるし、
速水は極北へ、そしてナニワ市に続く物語への布石でもある。
もちろん「螺鈿迷宮」「輝天炎上」の物語はこのケルベロスの裏で動いている話でもある。

すべてのピースがここで交差しているあたりがすんごいが、だからといって一作だけじゃただのひとつのエピソードでもあるんだよなぁ。

【小説】極北ラプソディ

本→桜宮サーガ
11 /24 2013
極北ラプソディ
海堂尊
朝日文庫
極北ラプソディ (朝日文庫)極北ラプソディ (朝日文庫)
(2013/10/08)
海堂 尊

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医療を救うには、医療を取り巻く空気を変えなければならない。

『極北ラプソディ』本文より


桜宮サーガのひとつ。
極北クレイマー』の続編。

今中先生にさらには世良先生と速水先生が参戦。
財政破綻した医療に対してまさにメスを入れていく。
果ては財政破綻から医療を見て、いま日本に必要な医療ってなんだろうと呼びかけてくる。
呼びかけてくるだけじゃない。
財政を立て直す世良先生、ドクターヘリ構想をもって救急医療を発展させる速水先生。
彼らふたりがおおきく動いた時に見えた医療先進国の最先端のさらに先を見せてくれる構想。

あれはさすがにどきどきした。

桜宮サーガはいつもながら新しい見方や実際にある現状の問題を見せてくれるよな。

【小説】モルフェウスの領域

本→桜宮サーガ
09 /14 2013
モルフェウスの領域
海堂尊
角川文庫
モルフェウスの領域 (角川文庫)モルフェウスの領域 (角川文庫)
(2013/06/21)
海堂 尊

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「記憶を喪わせるのは、その人を殺すことです」

モルフェウスの領域』本文より

コールドスリープに関する人権というテーマともとれる『モルフェウスの領域』。
医学のたまごの主役の少年と、ゲーム理論で「マドンナ・ヴェルデ」で活躍する曾根崎伸一郎が活躍。

これはまた近い将来起こってきそうな、もしコールドスリープが実現したとして被験者の年齢はどう扱うのかなど覚醒時に現況では確実に問題となりそうなことがたくさんでてきていた。

単に近未来の技術であり輝かしいものというだけでなく、まだまだ問題も多く、そして早急に検討すべき事項というのがこれほどまでに多いとはな。

また睡眠時の世話や、もしかしたら可能であるかもしれない睡眠時の学習なども実に面白い。
もしこういったコールドスリープができたとしたら、睡眠時の学習が可能であるのなら。
もしかしたら世界の情勢なんてものは一気に変わってしまう技術そのものなのかもしれない…


そしてこの物語が描かれたことで「医学のたまご」と「マドンナ・ヴェルデ」および「ジーン・ワルツ」との時系列のおかしさが解かれたわけか(笑
きっかけは年齢がおかしいというところから、まさかこんな物語まで生み出してしまうとは恐るべし。

【ミステリ】アリアドネの弾丸

本→桜宮サーガ
06 /09 2013
アリアドネの弾丸 上下
海堂尊
宝島社文庫
アリアドネの弾丸(上) (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)アリアドネの弾丸(上) (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
(2012/06/07)
海堂 尊

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「僕の代わりなんてごまんといる。だけど忘れちゃダメだよ。僕を撃てば司法は医療を敵に回す。そしたらいつの日か必ず、医療が司法に復讐する日がやってくるよ」

アリアドネの弾丸 下』本文より

バチスタシリーズ5作目『アリアドネの弾丸』。

極北からの登場人物もあり、マドンナ・ヴェルデとジーン・ワルツとも若干すれ違う。
まぎれもなく桜宮サーガであり、もっとも作者の専門分野が炸裂してる。
もちろんAIについても随分言及されてるし、ああいつものAIについての議論が延々と。
なんて思ってたら後半に入ってから実に面白いトリックを用いたミステリへと変貌していった。

医療と司法の関係すらもミステリへと取り組み、AIについての再度の言及もされている。
医療×ミステリの面白さの真骨頂とはまさにこのことだ。

白鳥のぶっとんだ台詞と論理が炸裂する解決編はやっぱり見もの。

【小説】マドンナ・ヴェルデ

本→桜宮サーガ
04 /06 2013
マドンナ・ヴェルデ Madonna Verde
海堂尊
新潮文庫
マドンナ・ヴェルデ (新潮文庫)マドンナ・ヴェルデ (新潮文庫)
(2013/02/28)
海堂 尊

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「ママ、私の子どもを産んでくれない?」

マドンナ・ヴェルデ』本文より

桜宮サーガのひとつ。
不妊治療の内容で曾根崎理恵が主人公の物語の裏側で起こるもうひとつの物語。
今度は代理出産で、主人公は曾根崎理恵の母である曾根崎みどり。
マドンナ・ヴェルデ』。日本語にすると聖母みどり。

ジーン・ワルツと同じ10か月を描くマリアクリック最後の10か月であり、ジーン・ワルツで子供たちを生むことになる人たちとももちろん出てくる。
って、え??
ジーン・ワルツの55歳の山崎さんが曾根崎みどりなのかよ。

娘の子を産む。
もちろんそれは理由があってのことだけれども、子供が欲しいという女性たちの希望である代理出産。
しかし、もちろん日本では法整備がまったくされていない。
いつもの桜宮サーガのようにその辺の問題ももちろん指摘されている。
そして産む子供は誰の子どもなのか。
そして産んだ後の問題はないのか。

現代もしくは、近い将来に議論するべき問題がたくさん描かれていて。
しかも今回は面白さがいろいろ。
代理出産という問題。
子供の母としての子どもを想う気持ちと医師として人類の未来を想う気持ちのぶつかりあい。
さらにはサーガとしての面白さ。

ジーン・ワルツと同時進行するマドンナ・ヴェルデという物語の面白さ。
そして「医学のたまご」へと繋げる物語でもある。
最後の子どもたちが、どんな周りの人物とともに育って行ったのかがこの物語を通して伝わってきた。
思わず、こうきたか、と。

現代医療の問題としても、エンターテイメントとしてももう楽しいとしか言いようがない。

【小説】ブレイズメス1990

本→桜宮サーガ
08 /03 2012
ブレイズメス1990
海堂尊
講談社文庫
ブレイズメス1990 (講談社文庫)ブレイズメス1990 (講談社文庫)
(2012/05/15)
海堂 尊

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「天城先生がムダなものとして削ぎ落とす中には、"こころ"が含まれているんですね。実に危険です。市場原理に掉させば、医療は壊れてしまう」
天城は即座に言い返す。
「それは甘えだ。医療も社会の一要素なのだから、経済原則から逃れられない」
高階講師は食い下がる。
「市場原理に従えば、次は不採算部門の切り捨てと患者の選別になる。それは医療の自殺行為でしょう」

ブレイズメス1990』本文より


桜宮サーガのひとつ『ブラックペアン1988』の続編『ブレイズメス1990』。
前作と同じく後に極北市に向かう世良くんが主人公。
今回は天才外科医の天城雪彦と共に東城大学と日本の医療をゆるがす大手術を行う。

1990年を舞台にしながらも、現代に通じる医療問題が刺激的だった。
人の命に優先順位はあるのか。
そして命と金の狭間で揺れる医療に携わる人間たち。

その永遠ともいえるテーマと、滅私奉公のように医療に携わるままでいいのか。
いや、医者がお金をかせぎ、それをどう還元していくのかということこそが、実は必要なのではないのか。

それをまざまざと今回の主人公といえる変人で天才的な外科医の天城雪彦という人物を通して語っているかのようだった。

90年の医療との対峙。
たいへん興味深く読めたと思う。


それにしても最初のニースとモナコのシーンでカジノで運を見せつけ、全財産の半分を手術費用としてもらっていたという天城の設定にもぶっとんだわけだけれども、日本における医療の閉塞感をぶっとばすかのような持論の展開はとてもとても魅力的な題材でした。

あとは桜宮サーガならではの登場人物たちの過去も見れたので満足。
高階先生を含め、このあとの「ジェネラル・ルージュの伝説」に収録されている「伝説1991」のオペメンバーも揃っているところにぐぐっときた。


しかし、これは最初の問題提起を起したにすぎず、このあと天城先生はどうなっていくんだろうというのがとても興味深い。
いつか語られる日が来るのを待ちたいものです。

【小説】医学のたまご

本→桜宮サーガ
05 /10 2011
医学のたまご
海堂尊
理論社
医学のたまご (ミステリーYA!)医学のたまご (ミステリーYA!)
(2008/01/17)
海堂 尊

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世の中で一番大変なのは、ゴールの見えない我慢だ

医学のたまご』本文より

桜宮サーガのひとつ。
これに関しては少し未来の話であるため他作品の登場人物が跋扈することはないので、単独で読んでも面白い。
リンクに気づけたら楽しいかも。
もちろんところどころに楽しい名前なんかは見ることができる。

全国の中学生向けに行われた特殊なテストで高得点をとって東城医大に入ることになった主人公の曽根崎薫くん。
そこで医学の研究をすることになるというあらすじ。

桜宮サーガのひとつなので一応主人公もほかの作品に大きく関わっているっちゃあ関わってる。
主人公は「ジーン・ワルツ」の曽根崎理恵の息子。
ただし離婚後なので、夫のゲーム理論研究の一人者である曽根崎伸一に引き取られてる。
が、息子とも別居中でいろんな助言をメールでして息子を助ける役目かな。
どうやら「モルフェウスの領域」でもお父さんはちらっと名前が出てるみたい。


中高生向きに書かれた小説。
だが、あなどるなかれ。
大人にとってもすごく重要なことがいっぱい再発見できる。

医学ってなんなのか。
研究ってなにしてるの?
研究のいいところと悪いところってどうだろうというところからはじまり、社会の一員としての生き方と医学に対する向き合い方っていうのを考えさせられた。

医学に興味があるなしにかかわらず多分考えるところがすごく多いことだと思う。

大人の社会のおかしさ、立ち向かうべきかそれとも波風をたてないべきか。
正義は誰にとっても分かりやすい形で現れないし、すごく理不尽な形で襲い掛かってくることもある。
実におかしな話。
でも実際にもすごく多いことでもある。

こういうのを読んでると自分の身の置き方振舞い方、そしてなによりも自分が貫くべきところってのがなんなのか自問自答したくなってくる。

単に起承転結があって、ああ面白かっただけに終わらない。
こういう未来を考えさせる小説こそ、中高生に、そしてなんとなく生きてしまっている大人こそ読むべき小説だと思う。



東城医大はやっぱり東城医大らしい問題を発生させてくれていてそれはそれでなんだか安心w
やっぱりこうでなくちゃ(笑

【小説】極北クレイマー

本→桜宮サーガ
05 /09 2011
極北クレイマー 上下
海堂尊
朝日文庫
極北クレイマー 上 (朝日文庫)極北クレイマー 上 (朝日文庫)
(2011/03/04)
海堂 尊

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「それならいいのです。けれどもこの一件に関しては不穏な動きがある、という情報が上がってきています。それは医療と司法の確執という、社会の枠組みの変貌とその未来を懸けた権力闘争の変形、その代理戦争でもあるのです。そのために私のような者がこうしてここに派遣されてきた、というわけでして」

極北クレイマー 上』本文より

桜宮サーガのひとつ。
だけれども桜宮市ではなく、極北市という別のところが舞台。

財政再建団体となった市の中にある腐敗した、というより無気力にならざるを得ない医療に携わる者たちの話。

面白かった。
どこかの実在するところを彷彿とするような地域医療の現場のやりようもない現状の描写。
医者不足やお金の不足によるサービスの低下。
もちろんそこから人材の低下や医療を行う側のモチベーションの低下も起こってくる。
この負のスパイラルの描き方といったら見事と言わざるを得ない。
一体医療は何を優先するべきなのか考えさせられる。

財政難を立て直すための様々な策を練ったりしても、今度は現実の資金難と司法による壁が阻んでくる。
もうほんと救いようのない状態からの最後の希望を捨て去らない医療人たちを見ると、もうそれだけで読んでて救われる。
あらためて地域医療とは、ってことに想いを馳せたくなるってなもんです。


もちろん極北市を舞台にしながらも桜宮サーガにかかわる人たちの跋扈するさまも楽しい。
姫宮がすごすぎてもうどうしようかと(笑

【小説】ひかりの剣

本→桜宮サーガ
11 /20 2010
ひかりの剣
海堂尊
文春文庫
ひかりの剣 (文春文庫)ひかりの剣 (文春文庫)
(2010/08/04)
海堂 尊

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君が私に勝てない理由は簡単さ。私は毎日、手術室という命を削る戦いの場に身を置いている。メスという刃は竹刀より小さいが、その下で繰り広げられる世界は、一歩間違えば相手の命を奪う真剣勝負。剣道場で行われている勝負よりも厳しい。そこで毎日メスを振るっていれば、剣筋はおのずと磨かれる

ひかりの剣』本文より

高階先生ーーー。
一生ついていきます!

速水が医療だけでなく剣術でも天才というところに納得がいかないw
なにあいつ。
完璧超人かw

桜宮サーガは医療問題を飛び越え剣術の世界へ進出。
黄金地球儀のようなクライムノベルとしてもすでになんでもありの世界だったから問題なんてない。
そして読んでみたらアニメ化したら面白くなりそうなものになってるとは思わなかった。

医療を学ぶ者たちの中でも剣術に青春を賭けた者たちの物語はあまりに予想外で面白い。
って現実問題をせっせととりあげセンセーショナルなラストを迎える今までの桜宮にとどまらず、医療をめぐる問題という根底はそのままに奥義飛び交う剣術の世界ですぜ。

しかも主人公はジェネラル・ルージュの速水とジーン・ワルツで登場した清川が主役。
それだけでもワクテカがとまらない。
それなのに、ああそれなのに。
なんであんなガチンコで剣術の極みまで達するところにある「何か」を求める過程の描き方っていったら、まるで哲学。
自分の哲学という竹刀をもって相手と刃を交える。
言葉にしにくいけれども、こんな描き方をしてくるかと驚いたくらい。


天才とすばらしき指導者の織り成す非凡という日常の中でも田口くんはやっぱり田口くんだったのでなんか安心した(笑

【小説】ジュネラル・ルージュの伝説

本→桜宮サーガ
08 /17 2010
ジェネラル・ルージュの伝説
海堂尊
宝島社文庫
ジェネラル・ルージュの伝説 (宝島社文庫) (宝島社文庫 C か 1-9)ジェネラル・ルージュの伝説 (宝島社文庫) (宝島社文庫 C か 1-9)
(2010/06/04)
海堂 尊

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「さあ、今からが本番だ。みんな、準備はできてるな」
真っ赤に塗られた口から発せられた怒号が、殺風景な救急外来の灰色のコンクリートの壁にぶつかって響き渡った。看護婦たちの力強いうなづきが返ってきた。

ジェネラル・ルージュの伝説』収録『伝説-1991』本文より

桜宮サーガのひとつである速水ことジェネラル・ルージュの短編だったり、自作解説があったりする本。
2010年時点での作家としての海堂尊や医療に携わる者としての海堂尊が満載。

短編は…
速水カッケー!というのが感想。
そんなキャラクターものとしてもOKだし、ジェネラル・ルージュで語られた緊急医療の現場と指揮の齟齬というのも興味深く読めたかな。


しかし実際に面白かったのは海堂尊の歴史。
どうやって受賞に至ったか、作家となって以降のAiの推進とその実情というのが読めたことは非常によかった。
一体この作家が何をもって、日本の現状もしくは近未来に起こりえるであろうと推測される医療問題を書いているのかっていうのがひしひしと伝わってきた。
そして読みおわってみると、ふっと腑に落ちた。

まだまだこの作者の頭の中から現在の医療に物申すと言わんばかりの問題点って出てきてくれそう(笑
出てきたら、そりゃあもう読みますよ、っと。



短編収録話:
・「伝説 1991」
・「疾風 2006」
・「残照 2007」

【小説】ジーンワルツ

本→桜宮サーガ
07 /08 2010
ジーンワルツ Gene Waltz
海堂尊
新潮文庫
ジーン・ワルツ (新潮文庫)ジーン・ワルツ (新潮文庫)
(2010/06/29)
海堂 尊

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「お産は赤ちゃんも母体も生まれるのが当然だとみんな思っている。でも、それは思い違い。そんな風に感じられるのは、産婦人科医療が懸命に努力してきたから。でも、そうして築き上げたものが壊れるのは一瞬です。ぎりぎりのところで、現場の医師の奉仕に近い努力で成立していた産婦人科医療は、今や崩壊寸前です。誰が悪いのか、みなさんも考えてみて下さい」

ジーンワルツ』本文より

桜宮サーガのひとつ。
舞台は東京だけれども、極北大学や桜宮もしっかり絡んでくる。
産婦人科医療、不妊治療や首都東京と地方医療について描かれた『ジーンワルツ』。

現実問題をテーマにしながら小説にしたててくるのもナイチンゲールの小児医療やジェネラル・ルージュの緊急医療のときみたい。
少子化社会と言われている現在の日本において、産婦人科の立ち位置とはどのようなものなのか。
産科医療や医学の障壁となっていることはなんなのか。

実際に起きた福島県立大野病院の産科医が起訴された事件を参考にしたような事件も取り上げながら読ませてくる。

また登場する5人の妊婦の問題もそれぞれが不妊治療や代理出産、経済的自立ができていない女の子の妊娠など産むといってもさまざまな問題を孕んでいることを実感させてくれた。


そりゃ子どもを育てにくい、また生みにくいとされる時代とされるわけだ。
産むほうにとっても、それを手助けする医療に従事する人たちにとっても。
まだまだ日本の未来にとって何が足りていないかっていうのは考えなきゃいけない時代だよなぁ。

【小説】ブラックペアン1988

本→桜宮サーガ
06 /09 2010
ブラックペアン1988 上下
海堂尊
講談社文庫
ブラックペアン1988(上) (講談社文庫)ブラックペアン1988(上) (講談社文庫)
(2009/12/15)
海堂 尊

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「医者はボランティアではない。病気を治すプロフェッショナルだ。慰めの飴玉が欲しいなら、カウンセリングにでも行けばいい。それは外科医の仕事ではない」
渡海の言葉にうなずく速水。その隣で田口の震える唇が、かろうじてひとひらの言葉を吐き出す。
「それでも、たとえそうであったとしても、僕は患者の言葉に耳を傾けたいです」

ブラックペアン1988 上』本文より

桜宮サーガの1作。
1988年の桜宮市を舞台にした『ブラックペアン1988』。
田口や速水というシリーズで主役を張った人物も出てくる作品。

だが、それはそれ。
あくまでサーガを結び、そしてこの物語のつむいだ慣例というものを蹴散らしながら医学と手術という命を扱う仕事においての世界を切り拓いていくおかずにすぎない。


昭和の世界の医局を描きながら、桜宮サーガで描かれた斬新な取り組みの数々。
その世代を率いていった先人たちの活躍のカッコいいことといったらない。
こうして田口や速水といった世代が育っていったんだな、と。

それに物語の根本に医師としての在り方の問い方という、こういった医療モノといわれるものではよくあるパターン。
その描き方がもう…
原点に立ち返ったかのようで、しかも登場人物たちも人間的についていきたいと思えるようなやつばっかり。
これを胸が熱くなるといわずになんと言おうか(笑

【小説】イノセント・ゲリラの祝祭

本→桜宮サーガ
05 /15 2010
イノセント・ゲリラの祝祭 上下
海堂尊
宝島社文庫
イノセント・ゲリラの祝祭 (上) (宝島社文庫 C か 1-7)イノセント・ゲリラの祝祭 (上) (宝島社文庫 C か 1-7)
(2010/01/08)
海堂 尊

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医学は死肉を喰らって生き永らえる学問。そしてシステム維持のため、個人を圧死させて平然としている官僚。医学と官僚は、実はよく似ている。医学を司るのに官僚ほどの適任者はいない。そこまではわかっているけど、その先の、官僚が医学を有効運用するというイメージがどうしても浮かんでこないんです。

イノセント・ゲリラの祝祭 上』本文より

この現代医療を司る部分への疑問の提示こそがすべてのはじまり。
海堂尊という作家による小説という媒体を使った医療の実態、はては日本の現代医療の在り方を世に問うた傑作じゃなかろうか。
エンターテイメント性はもとより、いま実際の医療はどのように運営されているのか、どうあるべきか、なぜ医療の世界は崩壊しつつあるのかという実態がここにあった。


田口・白鳥コンビの4作目『イノセント・ゲリラの祝祭』。
もうどう考えてもいまの日本では映像化不可能。
これを映画化でもしたら大きな波紋を呼ぶに違いない。
もし映像化しようものならどこからともなく圧力がかかる気しかしない。


一見するとまったくの別物である医療と司法の関係。
現代の増大する医療費に対しての国のできるだけ支出を抑える対策。
一体誰がどう考えて現代のシステムになってしまったのか。
そりゃあもう司法が関わって施行しているわけだから、もちろん官僚が関わってくるわけだ。
なぜ医療関係でもない人間が医療に関わるのか。

もうこの切り口のなんと鋭いことか。
白鳥・田口というバチスタから連なるシリーズで一般の人が見ることのできない部分に切り込んでいったふたりだけに、今まで以上の大きな根本的問題に対して彼らを関わらせることで物語として面白く見せる以上に本当の医療問題とはなんなのかを見せてくれた。

もうねぇ。
なんとバカバカしいことか。
なんでこんな医療に対してひたすら疲弊するだけの国になってしまっているのか理解に苦しむ。


今までのシリーズ以上に色々と考えさせられ、また気づかされる本でした。

【ミステリ】夢見る黄金地球儀

本→桜宮サーガ
01 /29 2010
夢見る黄金地球儀
海堂尊
創元推理文庫
夢見る黄金地球儀 (創元推理文庫)夢見る黄金地球儀 (創元推理文庫)
(2009/10/30)
海堂 尊

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「黄金地球儀、頂戴しよう」
ガラスのジョーは呆然とした表情で、俺と、目の前から消えたイチゴがあったはずのフォークの先を交互に見つめていた。
「本気かよ」
俺はうなずく。
「本気さ。絶対に、神かけて」

夢見る黄金地球儀』本文より

桜宮サーガの1作『夢見る黄金地球儀』。
町工場の主人公と昔のバカやった相棒とで桜宮が誇るお宝「黄金地球儀」を奪う計画が立ち上がる。

奪えれば1億5千万円。
奪ってしまったら市との契約により損害賠償を払わされる。
どちらにしてもよろしくない。

そんな中で本当に二転三転という言葉がしっくりくるような強奪計画が練られしながらコミカルに進んでいく。
ところどころで思いっきり笑わされる。
内容は思いっきりコメディなのに、なぜか伏線が張られて張られてラストにどどーんと真実が明かされる。

黄金を巡る桜宮市とどこか抜けてるガラスのジョーという相棒に、天才なのに明らかに変な父親に。
とんでもないキャラクターと内容に目を奪われすぎてたわwww

最後の最後までミステリだとは露ほども思わなかった(笑
だまされた。
ちくしょー(笑


でも非情に愉快な内容で大好きです。

【小説】ジェネラル・ルージュの凱旋

本→桜宮サーガ
03 /08 2009
ジェネラル・ルージュの凱旋
海堂尊
宝島社文庫
ジェネラル・ルージュの凱旋(上) (宝島社文庫)ジェネラル・ルージュの凱旋(上) (宝島社文庫)
(2009/01/08)
海堂 尊

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それなら聞きたい。医療を、いや、救急医療をここまで追い詰めてしまったのは一体誰だ?

ジェネラル・ルージュの凱旋 下』本文より

田口・白鳥コンビの3作目。
2作目の『ナイチンゲールの沈黙』と同時進行で進むもうひとつの物語がこの『ジェネラル・ルージュの凱旋』。
映画の予告では何度も見たのだが…あれ?まったくの別物なんじゃないか(笑


今度のテーマは救急医療。
現在のと言っても過言ではないような描写で救急医療における不正をテーマに描かれていくのだが…
ジェネラル・ルージュ=速水先生がカッコイイ!

彼がジェネラル・ルージュと呼ばれる所以となった事件での行動も含め、彼の行動力ひとつをとっても非常にさまになる。
もうこの本は彼が主人公だろ(笑

田口先生や白鳥はあくまで脇役のようだ。
…なんていいつつも白鳥のいつもの論理戦も見所。

現場と病院のお上の対立、そして息もつかせぬ救急医療の現場の描写。
それに激しい心理戦が繰り広げられる会議。
なによりあまりに個性豊かなキャラクターたちや、「桜宮」という街を舞台にし様々な事件が絡まりあう様は圧倒的。
「ナイチンゲールの沈黙」は同時進行だから、そりゃもう見事なまでにリンクしているのだが、「螺鈿迷宮」へ至る姫宮の行動や、「チーム・バチスタの栄光」が病院に与えた影もものすごく小説内で活きている。

だからか、それらの本を読んでいるとものすごく楽しめるかと思う。
ってかミステリ性を排除してエンターテイメントに徹してるだけにただただ面白いです。

【小説】螺旋迷宮 下

本→桜宮サーガ
01 /19 2009
螺鈿迷宮 下
海堂尊
角川文庫
螺鈿迷宮 下 (角川文庫)螺鈿迷宮 下 (角川文庫)
(2008/11/22)
海堂 尊

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「一体何なんですか、この病院は。僕がきてからもう三人の患者さんが亡くなった。患者なんて十人そこそこしかいないのに、こんなに短期間でこの数は異常です」

螺鈿迷宮 下』本文より

螺鈿迷宮』下巻。

言いたいことはほぼ上巻の感想で書いてしまったし…

まぁとにかく下巻は伏線の回収がすさまじかった。


白鳥という東城大からの刺客や、新聞社のバイトとしてもぐりこんだ主人公の天馬。
その二人がメインでいろいろなものを桜宮病院の実態を目にしてしまうわけだが、それ以上に上巻で語られた内容がとんでもないところで引火していくかのような展開は凄まじかった。

小説の面白さってまさにこういうもののことだよな、と思えた。
もちろん白鳥というチームバチスタで活躍した人物の登場や、同じ世界観を舞台に展開するストーリーも見もの。

なんとなく「チームバチスタ」と「ナイチンゲール」を読んでいたのが、この作品で読んでいてよかったって思えたしなぁ。

また、いつものことながら医療の闇とでもいうべき問題に対する提起の仕掛け方と見せ方も非常に興味深く読めました。

∀ki(あき)

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