【小説】黄昏の岸 暁の天

本→十二国記
03 /30 2014
黄昏の岸 暁の天
小野不由美
イラスト:山田章博
新潮文庫
黄昏の岸 暁の天 十二国記 (新潮文庫)黄昏の岸 暁の天 十二国記 (新潮文庫)
(2014/03/28)
小野 不由美

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「天をあてにしてどうします? 助けを期待して良いのは、それに所有され庇護される者だけでしょう。戴の民はいつから、天のものになったのですか?」

『黄昏の岸 暁の天』本文より

ついに旧版が全部刊行完了。あとは新刊のみ。
十二国記』エピソード8『黄昏の岸 暁の天』。
戴国の麒麟と王が消えた。しかし死んだ兆はない。

13年ぶりに読んでみると、このなんと面白いことか。
『魔性の子』とまったく反対の十二国から現代日本へ帰ってしまうという構造。
これまでにすべてのエピソードで描かれてきたこの世界の約束事。
そのおかしさ、誰もが当たり前に享受して、読者としてもこれがルールだと自然に受け入れてきたことに対してのあらたな疑問。
この世界のシステムはいったいなんなのだ、と。
この世界そのものの不完全さを見せてくれた上に改めてルールとルール外ということも示してきた。

物語としては結果として魔性の子の逆である十二国への再帰還を描いているけれども、テーマとしてはもっと深い。
最後へ繋げるためのこの「世界そのもの」のシステムを突き付けてきた。
そのルールの中で解決し、これまでの歴史になかったことを次々にやってのけた。
さらには李斉の国を想う、故郷を失くすものかという想いからの奔走や、泰麒の言う戴国の民のひとりとしての戴のため行動も国とはどうあるべきかを再度考えさせてくれる。

物語としては綺麗に完結したにはしたけれども、気になるのはこの世界はいったいどうなるのかということ。
それに尽きる。
新作も徐々にできているようだし、ついに読める時がくるのか…

【小説】華胥の幽夢

本→十二国記
01 /05 2014
華胥の幽夢
小野不由美
イラスト:山田章博
新潮文庫
華胥の幽夢 十二国記 (新潮文庫)華胥の幽夢 十二国記 (新潮文庫)
(2013/12/24)
小野 不由美

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辛いことに慣れる人間なんて、やっぱりいないと思うから。訊けば、慣れっこだから平気だ、と言うかもしれないけど、平気なはずないよ。辛く感じないんじゃない、辛い気分を乗り越える方法を知っているだけのことだと思う

『華胥の幽夢』収録『書簡』本文より

十二国記エピソード7『華胥の幽夢』。
ついにここまで来た。
旧版を持っていた人にとっては未だ最新刊の感覚。
『丕緒の鳥』が出たからこそ、いまでこそ最新ではないにせよ。
ああ。長かったな。
そして新作長編まであと少し。

タイトルにもなっている『華胥の夢』の含めすべてが短編。
そしてそれぞれの国が舞台。
陽子の慶国も泰麒の戴国も。
これまでの人物たちの後日談、前日譚が語られる。
いわば総決算のようでもあるけれども、ただそれだけでは終わらない。

ものすっごい重たくも、現実に突き付けられる話ばかり。
人は、世界はどう生きて行けばいいのか。
しかも決して平たいばかりでない険しい人生をどう歩むのかを諭されるかのようだ。

『華胥の幽夢』が示すここに違う理想を持っているにも関わらず作り上げなければいけない国の話であったり、差別も当たり前にある世界で生きている楽俊にせよ、傾きつつある長寿の国を見つめる人々の話であったり。

なにもこれファンタジーじゃなくてもいいんじゃないかと思うけど、いや、これファンタジーじゃないとものすごく辛くて読めないかもしれない(笑

キャラクターたちのその後を知ることもできながら、この後に起こる戴国の激動の時代の前触れに相応しいところにこの完全版はこの『華胥の幽夢』を7つめのエピソードとして置いてきたよな…

【小説】図南の翼

本→十二国記
11 /02 2013
図南の翼
小野不由美
イラスト:山田章博
新潮文庫
図南の翼 十二国記 (新潮文庫 お 37-59 十二国記)図南の翼 十二国記 (新潮文庫 お 37-59 十二国記)
(2013/09/28)
小野 不由美

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「あなた、眼があるんでしょう? 耳があるんでしょう? そこにあるものを眼を開いて耳をそばだててちゃんと受け止めていれば、分かることだってたくさんあると思わない?」

『図南の翼』本文より

十二国記エピソード6『図南の翼』。


旧版と同じ表紙イラストを現代の山田画伯がセルフリメイク化と思う程に似ていて違う表紙に思わずうなる。

思えばこの話がもっとも好きで、やっぱりこうして読み返してみてもやっぱり好きな話。

12歳の子どもが大人顔負けの正論で突き進み、大人たちのズルさに辟易し、世間の辛さや悪さや良さに触れ自分の国や人と人との関わり合いを学び、そして自分の国と未来を考えていく。

その真っ直ぐさに心を打たれるし、読んでいても自分に正直であろうとか自分の国への無関心が生み出す諦めというものに憂いたり。
まっすぐさ、ひたむきさが産む明るさを持つ主人公の行く手を阻むいろんな障害にはらはらし、、どうにもならないところまで来ていた人心を彼女が王になればきっとなんとかいい方向へと進めて行ってくれるはずという救いのある結末を願うがためにもうページを捲るスピードがとまらない。

そして案の定一気に読んでしまった。

この十二国はどこもどうしようもないけれども、この国に関してはきっと彼女が居る限り大丈夫だ。

【小説】丕緒の鳥

本→十二国記
07 /14 2013
丕緒の鳥
小野不由美
イラスト:山田章博
新潮文庫
丕緒の鳥 十二国記 (新潮文庫 お 37-58 十二国記)丕緒の鳥 十二国記 (新潮文庫 お 37-58 十二国記)
(2013/06/26)
小野 不由美

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けれども、じきにいい時代がきますから

『丕緒の鳥』収録『風信』本文より

ついにでた。
新刊。
耐えた人たちの物語ともいうべきだろうか。
王でもなく、麒麟でもなく、民衆たちから見た国の物語たち4つ。

ああ。これが十二国記だ。
暗くて、現実とも置き換えられるある種の社会派であり、また耐え忍ぶ物語で。
けれども希望はある。
慶国「丕緒の鳥」や「風信」の新王誕生までの酷い政治・世相があって、ついに再起できそうだという希望であったり、
雁の「青条の蘭」のそれでも人は生き延びようとする生の強さもそう。

人はどれだけ苦しくとも生きようと、生きてやろうとするものなのだ、と。

この強さこそがやっぱりこのシリーズの魅力だよな。

ついに新刊が読めてしまった。
次はまた今度は長編が待機してる。泰麒がどうなるのか、非常に楽しみです。

【小説】風の万里 黎明の空 下

本→十二国記
06 /30 2013
風の万里 黎明の空 下
小野不由美
イラスト:山田章博
新潮文庫
風の万里 黎明の空(下) 十二国記 (新潮文庫)風の万里 黎明の空(下) 十二国記 (新潮文庫)
(2013/03/28)
小野 不由美

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「どこにでも賢者がいて、どこにでも愚者がいるものなんだ」

『風の万里 黎明の空 下』本文より

十二国記エピソード4『風の万里 黎明の空』下巻。
もっとも長いエピソードも完結。

暗く重く、妬み嫉みが飛び交う本作。

自分の弱さを認めて前へと進もうとする。
そこにいたるまでがほんとうううに長かった。

長かったがこの国のこの世界の持つ問題点、民がいて国が成り立っているという当たり前だが見えにくいところがあらためてしかり描かれたと思う。
そのうえ、王としての陽子が本当の王として育っていく様や、彼女の「友人」ともいえる人物たちの苦難とそれを乗り越え陽子と出会ったことから、これから陽子をしっかりと支えていくであろう様子が目に浮かぶよう。

このエピソードをもって十二国記という世界が完成された、そんな気すらするエピソードだ。

【小説】風の万里 黎明の空 上

本→十二国記
05 /26 2013
風の万里 黎明の空 上
小野不由美
イラスト:山田章博
新潮文庫
風の万里 黎明の空(上) 十二国記 (新潮文庫)風の万里 黎明の空(上) 十二国記 (新潮文庫)
(2013/03/28)
小野 不由美

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「生きるということは、嬉しいこと半分、辛いこと半分のものなのですよ」

『風の万里 黎明の空 上』本文より

十二国記エピソード4『風の万里 黎明の空』。

シリーズでもっとも長いひとつの話であり、3人の女性の苦難に満ちた生き方が描かれる。
その上巻。

こんなに暗澹としていたっけ。
暗い話と、そして長いから再読はしていなかったからいろいろ考えさせられる。
「なぜ自分だけが」。誰もがそう思っていて、一歩を歩み出せない焦燥感。
あの国でも、もちろん現実の世界でももちろんあることで。
共感しながらも読めるし、そのうえあの国でのいかに政治と王がどれだけ密接に民衆の生き死にに影響するかというのは読んでてどんどん世界が広がっていく。

国ごとに色がまるで違うし、歴史もまた違い、そして歴史は次々に生まれていく。
どの国でも苦境があって、さぁいまから乗り越えていくぞという下巻を楽しみにしたいところ。

【小説】東の海神 西の滄海

本→十二国記
03 /17 2013
東の海神 西の滄海
小野不由美
イラスト:山田章博
新潮文庫
東の海神 西の滄海  十二国記 (新潮文庫)東の海神 西の滄海 十二国記 (新潮文庫)
(2012/12/24)
小野 不由美

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「俺の首ならくれてやる。首を落とされる程度のことが何ほどのことだ。民は俺の身体だ。民を殺されるは身体を刳られることだ。首を失くすよりそれのほうが余程痛い」

『東の海神 西の滄海』本文より

十二国記エピソード3『東の海神 西の滄海』。

エピソード1でこの十二国記という世界に流れ着いた王について描かれ、
エピソード2で麒麟が王を選ぶ行為について描かれ、
そしてこの雁国での治世について描かれるエピソード3。

そうだよ。
これこそ王であり、麒麟とともに国を作っていく。
エピソード1で豊かな国とされていた雁国の初期のひどさ、そこからの復興や王としての資質、麒麟としての資質っていうのを見た気がする。

王が王である。
それだけでこの世界では豊かさを求められる1つの指針だよな。
うん、こういう王ならばついていこうと思える。
民をどう考え、実際民の中に入っていける人物。

それを表現するための反逆者との戦い。
反逆者がどう国を作ろうとしたか、なぜ民に好かれなかったのか。
この対比が、この世界における王ってなんだろうってあらためて見せつけられるな。

さて、このエピソード3でこの十二国記の世界観があらかた出てきたな。
ここからが本番だ。

【小説】風の海 迷宮の岸

本→十二国記
02 /03 2013
風の海 迷宮の岸
小野不由美
イラスト:山田章博
新潮文庫
風の海 迷宮の岸  十二国記 (新潮文庫)風の海 迷宮の岸 十二国記 (新潮文庫)
(2012/09/28)
小野 不由美

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それは泰麒にしか、決められないことなのです。

『風の海 迷宮の岸』本文より

十二国記』エピソード2。
今度は麒麟の物語。

魔性の子から直接このエピソードに続いてくる。

自分をいかに信じるか。
自分が何者なのか決断を信じることができない麒麟がなんとも愛おしい。
だからこそ周りのみんなの視線や愛情がたまらんよなー。
それに応えようとするのがなんとも。

前作での生きる強さを見せつけてくれた陽子とはまた別の、自分の存在を肯定していく強さというのがすごく感じられた。
久々に読むと、泰麒がいつもと違う世界にきたことも面白いけれども、他の人からどう泰麒が見えるんだろうっていう面白さがあるよなー。

【小説】月の影 影の海 下

本→十二国記
12 /31 2012
月の影 影の海 下
小野不由美
イラスト:山田章博
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月の影 影の海(下) 十二国記 (新潮文庫)月の影 影の海(下) 十二国記 (新潮文庫)
(2012/06/27)
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「あのなぁ、陽子。どっちを選んでいいか分からないときは、自分がやるべきことを選んでおくんだ。そういうときはどっちを選んでも必ず後悔する。同じ後悔するなら、少しでも軽いほうがいいだろ」

『月の影 影の海 下』本文より

十二国記エピソード1下巻。

この世界はなんなのかが明かされ、王とは麒麟とはが明かされ、
そしてこの世界に迷い込んだ陽子が苦難と向き合う旅を終えて王の座に。

あれ、こんなところで終わってたっけ。
いや、これでいいのだ。
物語のクライマックスは陽子の中の葛藤そのものだし、この世界の謎を解いていくことそのものにあるわけだし。

最初のエピソードをこの独特な世界の紹介であって、陽子に旅させるという構図はほんと正解だよなぁ。
力強く生き抜き、自分自身の醜さと向き合い、そして受容していく。
この世界の王の資質っていうものが垣間見えるし、これから先も苦難を乗り越えながらの治世となることが余韻としてなんとなくうかがえてしまう。
それに、こんなんだともっともっとこの世界のことを知りたくなるじゃないか、ってな内容だよなー。

プロローグのエピソード1は終わった。
ここからが十二国記の本領発揮だな。

【小説】月の影 影の海 上

本→十二国記
12 /16 2012
月の影 影の海 上
小野不由美
イラスト:山田章博
新潮文庫
月の影 影の海(上) 十二国記 (新潮文庫)月の影 影の海(上) 十二国記 (新潮文庫)
(2012/06/27)
小野 不由美

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強くなくては無事でいられない。頭も身体も限界まで使わなくては、生き延びることができない。
――生き延びる。
生き延びて、必ず帰る。それだけが陽子に許された望みだった。

『月の影 影の海 上』本文より

十二国記』エピソード1。

うわ、もう、すべてが懐かしい。
これが十二国記だ。
『魔性の子』もエピソード0として十二国記のひとつに数えられてるが、十二国記の中の話じゃないからなー。

これを読んでて、ようやく十二国記を読んでるって感じがした。

唐突に現実の世界から違う世界へと行かされ、そこで苦汁を嘗めながらも生きぬいていく。
彼女のその強さと、現実よりも困難の多い中でも生きることをあきらめないことが心に響いてくる。

こんだけヒロインを辛い目に遭わせながらも、それでも読ませてくるっていうのはやっぱりこの世界観の不思議さと冒頭の謎めいた人たちの真意はなんだったのか、
そういった謎とヒロインの魅力なんだろうな。

【小説】魔性の子

本→十二国記
11 /17 2012
魔性の子
小野不由美
イラスト:山田章博
新潮文庫
魔性の子 十二国記 (新潮文庫)魔性の子 十二国記 (新潮文庫)
(2012/06/27)
小野 不由美

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お前は人間だ。もともと何だろうと、いまは人間だろう。この世に生を享けてここに存在している。いったんは向こうへ行ったが、結局戻ってきた。お前は……こちらに戻ってきたんだ

魔性の子』本文より

十二国記』序章。

十二国記を読んでからこれを読むと非常に面白い。
以前に読んだ時には十二国記の存在を知らず、小野不由美のホラーというだけで読んだから「異邦人」的なホラーとして楽しんだ。

ここではないどこか、の住人でありそこに還るための物語。
人間から少しずつ離れていく異常な現象の数々はじんわりと怖いものだった。
一体彼は何者なのか、神隠しの時になにが起こったのか。

どこかが変わっている「高里」と、彼のように高校時代に周りから浮いていて現実をどこか客観的に見ている主人公の少しずつ心を寄り添わせ理解していく様もまたほっこりする。
彼らが孤独でないからこそ、次々に起こる現象が実に怖い演出になってるよな……


さて、序章の新装版も読み終わった。
ゆっくりと本編の完全版にも手を出していくことにしますか。
ついにこれを読み続けていけば新作、そして完結編までも目にすることができるのかと思うとどきどきする。

∀ki(あき)

自由に生きてます。
色々読んだり見たりしてます。

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