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【小説】お引っ越し

メフィスト賞→真梨幸子
09 /23 2018
お引っ越し
真梨幸子
角川文庫
お引っ越し (角川文庫)
真梨 幸子
KADOKAWA (2017-11-25)
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そう、僕はここで警告する。この本は、「読んではいけない」類の本だ。

お引っ越し』本文より


真梨幸子の『お引っ越し』。
ふんふーん。いつものイヤミスが読みたいぜ。
読んだ。

!?

ミステリと思いきや、いやーな本。
そして最後まで読んで一瞬にして全編がホラーに変貌、そして1冊の本としての作り方に驚愕する。

まさかこう…普通に短編でイヤミスっぽいやつを集めたやつかなとか思うわけじゃあないですか。
しかもそんなに長いわけではない小説。

たったこれだけのページ数でこの驚かされっぷり。
これもしかしたら真梨幸子の中でももっとも楽しめた本かもしれん。

【小説】えんじ色心中

メフィスト賞→真梨幸子
01 /21 2018
えんじ色心中
真梨幸子
講談社文庫
えんじ色心中 (講談社文庫)
真梨 幸子
講談社 (2014-09-12)
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「こんなにヤワで、すぐ傷付いて、すぐ壊れちゃう肉体だよ? こんな不良品に、なんでわたしたち閉じ込められているんだろう? だってさ、たとえば、わたしが君の口と鼻を塞いだら、君、あっというまに死んじゃうんだよ?」


真梨幸子の『えんじ色心中』。
文庫で再読。前に読んだのはもう10年以上も前か…
真梨幸子が人気が出て一向に出なかった文庫が次々出ても、この本だけは取り残されていた。
いわゆる彼女が築いてきたイヤミスじゃないもんな。
これはまた別のジャンル。

ミステリという形式はとっているんだけど、1人称でずっと綴られ、二つの時間軸の主人公たちがどんどん現実に追い詰められていく過程を見せつけられる。
小学生とフリーのライターと派遣をやってる社会人。
ふたりの目から見た一つの共通する事件。
すべてがつながった瞬間のカタルシスもすごいのだが、この本の雰囲気に呑み込まれざるを得ない筆致が絶妙。
こんなダウナーな雰囲気まで落とし込み、しかも次々にページをめくらせ主人公たちの目線と境地を追体験させられるわけだもんな…

もうほんとメフィスト賞受賞後2作目としては会心の出来じゃないだろうか。
ミステリとしてよくできているわけでも、物語として読者が何かを得るわけでもない。
ただただ雰囲気に呑まれて嫌な気分に浸らせられるという、ああ、これは後のイヤミス達に共通する筆致だよな…

【ミステリ】イヤミス短篇集

メフィスト賞→真梨幸子
10 /22 2017
イヤミス短篇集
真梨幸子
講談社文庫
イヤミス短篇集 (講談社文庫)
真梨 幸子
講談社 (2016-11-15)
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どうして、爪を剥がすのかって? それは、だから、普通じゃないからですよ。爪を剥がすことに快感を覚える変態なんですよ! 爪に執着する異常者なんですよ!

イヤミス短篇集』収録『ネイルアート』本文より

なんてド直球なタイトル!
その名も『イヤミス短篇集』。
だいたいが『プライベートフィクション』に収録されているもの。

いやな気分にされてくれながら、でもガッツリなミステリ。
しかも短編でおなかいっぱい。

長編ほど気分を最悪なところまで落としてはくれないが次々に語られるイヤミスに気分を害されながらも、でもやっぱり読んでしまう力あるよな。

収録話
・「1999年の同窓会」
・「いつまでも、仲良く」
・「シークレットロマンス」
・「初恋」
・「小田原市ランタン町の惨劇」
・「ネイルアート」

【ミステリ】パリ警察1768

メフィスト賞→真梨幸子
12 /18 2016
パリ警察1768
真梨幸子
徳間文庫
パリ警察1768 (徳間文庫)
真梨幸子
徳間書店 (2013-08-02)
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いや、違う。人間だからこそ、そういうことができるのだ。

パリ警察1768』本文より

真梨幸子の『パリ警察1768』。
いつものイヤミスというわけではなく、フランスパリの時代もの。
さてさてどんなものかと思ったら、おそろしくパリの暗黒時代というか、時代ものとしてもしっかり成り立たせながら人間の悪そのものを見た気がした。
気が重い…

胎盤の落とし物というなんだよそれというはじまりから、娼婦の惨殺死体の発見からあんなものに発展させるとは。
一体誰が悪かったのか。
時代なのか文化なのか。
それとも人間という存在そのものがそうさせたのか。

すごいもの読んだ。

【ミステリ】あの女

メフィスト賞→真梨幸子
12 /05 2015
あの女
真梨幸子
幻冬舎文庫
あの女 (幻冬舎文庫)
あの女 (幻冬舎文庫)
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真梨 幸子
幻冬舎
売り上げランキング: 21,204

恨みが、わたしを救うの?
恨みなら、もうすでにわたしの体に充満している。すでにわたしの中は恨みだらけだ。きっと、生まれたその瞬間から、わたしは恨みまみれだ。それが辛くて仕方なかったけれど、でも、この恨みがわたしを生かしているのね。
なら、わたしは、もっともっと恨む。

あの女』本文より

真梨幸子の『あの女』。

あああ。
真梨幸子といえばイヤミス。
そんなことはわかってた。
ひとつの瑕疵物件。
その歴史、すべてに関わる「あの女」。
何者にもなれなかった女たちが紡ぐ気持ち悪い負の連鎖。
それだけなら気持ち悪い女の情念ものなのだけれども、過去の伝説的な事件。男のあそこをちょん切った安部定の都市伝説めいた話が物語を急加速そして収束させていく。
なにこの完璧な構図は。
イヤミスをどんどんこの作者は新しい新天地へと引っ張りあげていくかのようだ。

【小説】聖地巡礼

メフィスト賞→真梨幸子
03 /07 2015
聖地巡礼
真梨幸子
講談社ノベルス
聖地巡礼 (講談社ノベルス)聖地巡礼 (講談社ノベルス)
(2011/02/08)
真梨 幸子

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こんな不公平な世の中なんか滅んでしまえばいい。

聖地巡礼』本文より


真梨幸子の『聖地巡礼』。
パワースポット巡りに見せかけて、どこがパワーだ(笑
負のパワーだらけじゃないか。
それこそ真梨幸子のいいところ。
女のどろどろ。
嫌味でねちっこく、嫉妬深く、殺意もあり。

パワースポットで出会う人々が少しずつ関係していく連作短編ぶりもさることながら、ひとつひとつの後味悪い結末、そして他の短編へのつながりかたにはいちいちニヤリとしてしまう。

【ミステリ】鸚鵡楼の惨劇

メフィスト賞→真梨幸子
11 /08 2014
鸚鵡楼の惨劇
真梨幸子
小学館
鸚鵡楼の惨劇鸚鵡楼の惨劇
(2013/07/23)
真梨 幸子

商品詳細を見る

「……ね、もしよ。もし、自分の子供が犯罪者になったら、どうする?」

鸚鵡楼の惨劇』本文より

鸚鵡楼の惨劇』。
結婚前に付き合った彼氏が幼女連続強姦事件の犯人であり、自分の子供が、遺伝子は引き継いでいないはずなのにその犯罪者の癖を譲り受けた気がする。

最初に惨劇があり、ついで女性の上記のような話があり。
子供が成長していき。

ああ。
こうくるのか。
母親たちの噂話のイヤさはいつものこと。
それ以上に息子の少しの異常さと、それに敏感になりすぎていく母親のなんと気持ち悪いことか。

なにより2章の最初に裁判の記録として、連続強姦の供述があるからこそのイヤさがそこを起点にどんどん高まっていく。
と、同時に次々に伏線が張られていく。

1世代だけでは終わらない。
長い期間を経て語られる鸚鵡楼の惨劇事件と後の事件の真相のミステリ部分の明かし方がやっぱうまい。

最初の章と終わりの章の役目がイイ。
全部が繋がる瞬間の快感があればこそ、今までのイヤな部分が吹き飛ぶ。
吹き飛ぶというか、すべてはこのためと言わんばかりに。
いいよな。

【小説】プライベートフィクション

メフィスト賞→真梨幸子
02 /23 2014
プライベートフィクション
真梨幸子
講談社ノベルス
プライベートフィクション (講談社ノベルス)プライベートフィクション (講談社ノベルス)
(2012/09/06)
真梨 幸子

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なによ。お母さんはいつでもそうだ。駄目だしばかり。以前はそんな母に苛立っていちいち口答えしていたけれど、今は違う。聞き流すことができる。だって、もう私は以前の私じゃないのよ。

プライベートフィクション』本文より


真梨幸子の短編集『プライベートフィクション』。
気持ち悪さが素晴らしい。
イヤミスだけじゃなく、もちろんミステリではなく普通に気持ち悪いだけで終わるものもある。
「1999年の同窓会」のどこか真梨幸子を思わせる描写と別作品との関連を持たせながらも、最後の最後でげんなりさせられ、
「いつまでも、仲良く」のタイトルどおりでありながら、やっぱり気持ち悪い親子や世界をすべて見下しながら生きる彼女に気持ちが若干わかりながらもやっぱりげんなり。
「小田原ランタン町」はもういやーな描写続きだったのに、最後の最後でそれかよっという後味の悪さを見せつけられ、
プライベートフィクション」2作もタイトルにあるだけある出来。

やっぱ真梨幸子の短編は強烈だなぁと思いながらも、どうしてここまで気持ち悪いのかと考えるとタイトルにもある、どことなくどこかにいる人物で誰しもに心当たりのある感情を埋め込んできているからこその、親近感こそが気持ち悪さの原点かもしれないな…

収録話:
・「1999年の同窓会」
・「いつまでも、仲良く」
・「小田原ランタン町の惨劇」
・「プライベートフィクション」
・「プライベートフィクション2」

【小説】深く深く、砂に埋めて

メフィスト賞→真梨幸子
10 /27 2013
深く深く、砂に埋めて
真梨幸子
講談社文庫
深く深く、砂に埋めて (講談社文庫)深く深く、砂に埋めて (講談社文庫)
(2011/08/12)
真梨 幸子

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「要するに、日柱が丙午の女は、強すぎるの。欲望も性格も我も愛情もすべてに対して強すぎて、その強さゆえに潰されることが多いってこと」

深く深く、砂に埋めて』本文より

3年ぶりに文庫で再読。

真梨幸子の3作目である『深く深く、砂に埋めて』。
強烈なインパクトを残してくれた作品でもある。
思えばフジコでの大ヒットの前に文庫化された作品でもあるんだよな。
当時はなぜえんじ色心中文庫化しないんだよと思ったもんだ。

さて有利子という稀代の悪女を巡る非常に気持ちの悪い話が展開するこの作品。
天真爛漫に誰とでも寝てお金のあるところに赴いていく。
ある意味では成功を続ける女である彼女と、彼女に惹かれ身を滅ぼしていった人たち。

女の強さを前面に出しながら様々な方向からの嫉妬をねっとりと描きながらも、一つの殺人事件と裁判に至るまでを通して描かれるミステリとしての側面の合わせ技。
ふたつを同時進行しながら、ものすんごいところに着地させたというか、あくまでも最初から最後まで脇役でありながら、かつ主役であり続けた女を描きよった。

1冊を通して読んでみるといかに、この本が「彼女」のすべてを描いているか。
悪女でありながら彼女がいったい何者であったのか。
本当の謎は「彼女」であるという結末の魅せ方がしびれる。

真梨幸子のイヤミスの最初の到達点ってここだったんじゃないだろうか

【ミステリ】インタビュー・イン・セル

メフィスト賞→真梨幸子
01 /20 2013
インタビュー・イン・セル 殺人鬼フジコの真実
真梨幸子
徳間文庫
インタビュー・イン・セル 殺人鬼フジコの真実 (徳間文庫)インタビュー・イン・セル 殺人鬼フジコの真実 (徳間文庫)
(2012/11/02)
真梨幸子

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このまま生きていても、あなたの人生なんてロクなものではない。どうせ親と同じ道を生きるのよ

インタビュー・イン・セル 殺人鬼フジコの真実』本文より

『殺人鬼フジコの衝動』の派生作品。
フジコが死刑にされ、その後判明するさらなる悲劇。

だけれども、決してフジコを表に出さなくてもと思うけど、文庫版があんだけヒットしたとなれば続編的なものは出版社は欲しがるよなぁ。

続編として読んでも良し、これ単体でもそうとう気持ちの悪い体験をすることができる。

そもそもが「殺人鬼フジコ」という不気味なタイトル。
さらには「インタビュー・イン・セル」という主題の気持ち悪さ。

そこから予想を覆すほどにおぞましい真実と、ミステリの騙され感が味わえた。

メフィスト賞作家であの実際に起きた事件を参考にした作家って2人目か…
いくつもの視点を交える面白さもいいんだけど、逃れられない恐怖というホラー要素も存分に扱っていた。

ああ。もうやっぱり「殺人鬼フジコ」という先入観があったからこその、嬉しい裏切られ方だ。

【ミステリ】クロクヌレ!

メフィスト賞→真梨幸子
12 /09 2012
クロクヌレ!
真梨幸子
講談社文庫
クロク、ヌレ! (講談社文庫)クロク、ヌレ! (講談社文庫)
(2012/10/16)
真梨 幸子

商品詳細を見る

分かっている。そんなこと、言えない。知らぬが仏。そう、知らなくていいことが世の中にはごまんとある。なんでもかんでも秘密を暴き真実を知ろうとする人は、ただの、たちの悪い出歯亀だ。世界の九十パーセントは秘密でできている。それでいいじゃないか。

クロクヌレ!』本文より

真梨幸子の『クロクヌレ!』。

タイトルからしてまたどろどろのぐちゃぐちゃなのを予想していたら予想外の内容だった。

確かに真梨幸子の女性同士のどろどろや、現実の見えてない登場人物にイライラさせながらも、この本の本質がそうじゃないところにあるからこそ、物語が非常にシャープだったと感じた。

ミステリの到達点が設定されていて、それを味付けするかのようにこれまでの作品で見せてくれた現実にありそうなどろどろした人間関係が描かれてる。

お金を無心する兄の数々の手紙に辟易し、女性派遣社員の過去の栄光にすがりながら勤められる限界の年齢におびえながら仕事をこなしていく毎日というふたつの大きなストーリーもまたいいんだよな。

芸術家であり、けれど売れないからこそのお金の無心という奔放ながら地に足がついていない生活。
対比して地に足はついているけれども30を越え、派遣社員という働き方がそろそろできなくなることにおびえるという。
どちらもなんとかしろよと言われてもいますぐにどうにかなるものでもなく、すでに地に足をつけることは手遅れみたいな描写が実に今も問題になっているようなことで、そのぎりぎりの生き方にキリキリするんだよな。

ああ。
かと思いきや、結局この物語がそんな「イヤミス」で終わらなかったことがすごかった。
すべてがひとつに繋がると同時にあらたに登場人物たちが別の側面から全く違ったものを見せ始める。
ここで一つ目の真梨幸子というジャンルが結実したとすら感じてしまった。

フジコ以来の怒涛の真梨幸子の文庫化ラッシュもこれでラスト。
次からはあらたな真梨幸子の歩みが見れそうでそれも楽しみ。

【ミステリ】弧虫症

メフィスト賞→真梨幸子
08 /02 2012
孤虫症
真梨幸子
講談社文庫
孤虫症 (講談社文庫)孤虫症 (講談社文庫)
(2008/10/15)
真梨 幸子

商品詳細を見る

なんで私だけこんな目にあわなくちゃいけないの? なんで私だけ? あの子も私の気持ちを知るべきよ。あの子も私と同じ目にあうべきよ!
クソガキ。
娘の生意気な顔が蘇った。

孤虫症』本文より

真梨幸子の『孤虫症』を7年ぶりに再読。
単行本の時の本の作りの気持ち悪さもよかったけれども、文庫カバーの綺麗そうに見えてどことなく不安感を煽ってくるつくりもまたいいものだ。

寄生虫小説であり、ミステリであり。
なによりも現在の真梨幸子を形作る「気持ち悪さ」「イヤさ」がしっかり詰まってる。

自分がなによりかわいい母親でセフレが3人以上もいて、他人をいつもうらやんでいる。
そんな女が主人公であり、またどうしようもない男と結婚した彼女の妹もまた主人公である。

最初に毛じらみをうつされたところから、すべてははじまり、ある種の寄生虫との戦いがはじまる。
この寄生虫との戦い=ミステリへとなっていくんだけれども、それ以上に自分本位な母親の描写がつくづく気持ち悪い。
もちろん虫が自分の体内にいたりだとか、自分とセックスした相手が原因不明の病気で死んでいく奇妙さもまたすごくイヤな感じで伝わってくる。

人間関係のいやらしいところを掘り下げることで、登場人物たちを作り上げ、そこに目を奪われていくとこの事件の結末にいつの間にか驚かされる。
ラストで一気にたたみかけるミステリはある種爽快。
ここまで読んだご褒美といわんばかりだ。

もちろん真梨幸子のデビュー作なので、やはり現時点の2012年の文章と比べてもイヤらしさが直球だったり、ミステリとして明かす部分がとってつけた感じがなきにしもあらずなんだけど、再読して見て思うのがイヤミスというジャンルを作り上げていった作家の原点はやっぱりここにあると感じた。

【ミステリ】女ともだち

メフィスト賞→真梨幸子
02 /18 2012
女ともだち
真梨幸子
講談社文庫
女ともだち (講談社文庫)女ともだち (講談社文庫)
(2012/01/17)
真梨 幸子

商品詳細を見る

でも痛いほど分かるんです、その気持ち、あなたも分かるでしょう? 三万円でワンピースを買ったあとに、普段なら手が届かない有名ブランドのワンピースがバーゲンで三万五千円で売ってるのを見つけた。これって、悔しくありませんか?

女ともだち』本文より

真梨幸子のドロドロ三部作1作目。
なんで2作目が先に文庫化なんだよ(笑
たぶんドロっぷりが抜きんでてたからだと思う。
そしてその時はまだフジコのブームが来る前だったからだろう。

さて、「女ともだち」。
タイトルからしてどろどろっぷりが臭ってくるようだ。

決していい意味なんかじゃない。
妬み合い、自分の格下に見せようとし合う、でも彼女ら自身がすべて同類かのような。

それをこれでもかという程に見せつけられる。

そのために冒頭で起きるいくつかの殺人事件と、それを追いこのどろどろ世界を表に出そうとする独身ルポライター自身が書いた記事という「メタ」要素はまるで気にならない。
どろどろに目がいっていたら、あら不思議。
思いっきり騙された。
そうじゃん。
これミステリじゃないか…

女性同士の羨望と嫉妬。
アラフォーという壁と女の価値と年齢。
売春と出産と堕胎とお金と資産。

年齢ならではのお金や資産に関する問題や、結婚という壁。
なにかどこかのワイドショーでにぎわせてくれそうな女性のニュースの「ネタ」をそこかしこに配するのもいやらしい。
その様子を見てもっと知りたいと思って読み進めさせてくれる様こそが、もはや仕掛けだよなぁ。
日本人のワイドショー好き根性を読者がもっていると途端に面白くなる、そしてミステリ好きでどろどろも大丈夫ならばもっともっと楽しめる小説でした。

さて、この本の登場人物が「深く深く、砂に埋めて」にも登場しているとのことだったけど、だめださっぱり覚えてない。
あの小説のいやらしいドロ系の感覚はよーーーく覚えてるんだけど、「続編」的なところがあまり覚えてないので読み返したいところです。

【ミステリ】みんな邪魔

メフィスト賞→真梨幸子
12 /24 2011
みんな邪魔
真梨幸子
幻冬舎文庫
みんな邪魔 (幻冬舎文庫)みんな邪魔 (幻冬舎文庫)
(2011/12/06)
真梨 幸子

商品詳細を見る

そうだ、これは夢なのだ。夢なのだから、自分の意志で、都合のいいように変えればいいのよ。どんなふうに変えれば、ハッピーエンドになるかしら。
……ううん、愛は、いつも涙で終わるものなのよ。そうなのよ。だからこそ、愛は美しい。そうでしょう?

みんな邪魔』本文より

真梨幸子の『みんな邪魔(「更年期少女」改題)』。

記憶している限り真梨幸子のヒットはまさにここからはじまったんじゃないかと思う。
ここからはじまり、フジコが文庫化で大ヒットし次から次へと文庫になるのは、このイヤな気分を満載にしてくれる。
そしてなによりミステリとしてものすごく綺麗に構成されてる。

あとは単行本時のタイトル『更年期少女』というのも実にその聞こえからして気持ち悪さがある。

6人の30代前半から40代後半で構成される25年前に絶版になり、カルト的存在となった少女漫画のファンクラブが舞台。
彼女らはお茶会と称して、まるで妙齢の頃のような服装でお高い喫茶店に行ったりお食事をしたり。
そんな優雅な彼女らも実際の生活は借金に追われたり、家庭が崩壊していたり、とにかくひどい有様。
現実逃避にファンクラブへと足しげく通うときたもんだ。
さらにはハンドルネームがそれぞれエミリーやミレーユとかマルグリットとか。
一体何十年前の女学生が好むかのような名前だよ、と。

そしてそれが醸し出す気持ち悪さの不協和音は現実とファンクラブの間のギャップだけでなく、どこかでありそうな現実感。
更年期の年齢と言えば不惑の40代であるはずなのだけえども、未来への閉塞感があり、自分の半生に後悔しつづけていたり、10代の女の子のように幻想のような恋や愛にもものすごく憧れてたり。
そういうのも分かる。
分かるけれども、そこは現実じゃないんだよ、と。
ありもしないものにあこがれ続ける女の子のままで育ってきてしまった登場人物たちの目線がなんとも怖い事このうえなかった。

そんな気持ち悪さは真梨幸子の著作の中でも群を抜いているかも。
読んでて忘れてたけど、これはれっきとしたミステリだって。
ラスト数十ページに戦慄した。
見事なまでに気持ち悪い描写に圧倒されてて、伏線の数々をまったくもって見過ごしててた。

気持ち悪いイヤミスとしてもう最高。

【小説】ふたり狂い

メフィスト賞→真梨幸子
11 /30 2011
ふたり狂い
真梨幸子
ハヤカワ文庫
ふたり狂い (ハヤカワ文庫JA)ふたり狂い (ハヤカワ文庫JA)
(2011/11/10)
真梨 幸子

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「あたりまえじゃない。だって、私は正常だもの」

ふたり狂い』本文より

真梨幸子の『ふたり狂い』。

実に怖い。
ほんと怖い(褒め言葉

読んでいて思考がぐんにゃり歪んでくるかのようなラストでした。
読んでるこちらが狂いそう。

本作は連作短編集。
それぞれ、少しずつ狂った人たちが登場する。
狂ったといっても、ほんの少しだ。
ほんとうに少しだけズレているだけとも言ってもいい。

だからこそ、それが「ある」かのように思えるし、どんどん話の中に引き込まれていく。
そして一つ一つの物語が繋がるラストへと引っ張られてしまう。

ああもう。
ほんとイヤなものをよんだ(褒め言葉
まったく…どろどろどころじゃないよこいつは(笑


フジコに続いてこの本も文庫化されたし、
今までは文庫化に至らなかった本もどんどん文庫化されると嬉しい。
真梨幸子の本はもっと読んでみたいのです。
彼女の描くどろっとした嫌な空気はどうも病み付きになるみたい。

【ミステリ】殺人鬼フジコの衝動

メフィスト賞→真梨幸子
06 /13 2011
殺人鬼フジコの衝動
真梨幸子
徳間文庫
殺人鬼フジコの衝動 (徳間文庫)殺人鬼フジコの衝動 (徳間文庫)
(2011/05/07)
真梨幸子

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「それでも、人の死を望んでは駄目。人の死を望めば、自分の人生を差し出すことになる。もう元には戻れない餓鬼畜生の道に落とされる。ただひたすら欲望だけに生きる苦しみを、どんなに貪っても充たされない悲しみを、あなたは想像できる?耐えられる?その覚悟もないのに、そんなことを口にしては駄目」

殺人鬼フジコの衝動』本文より

15人もの人を殺害したフジコの一生を描いた『殺人鬼フジコの衝動』。
彼女はどこかおかしかったのか。
いや、そうか。そうでもないだろう。
ただ幸せになろうなろうとしていただけだろう。

それがどうしてあんな殺人鬼に…
殺人鬼という言葉がまるで当てはまらない。しかし結果として間違いなく殺人鬼なのは間違いないんだよなぁ。

彼女の行動のなんともいえぬ気持ち悪さを堪能した。
気持ち悪い。本当に気持ちの悪い内容だった。

だがしかし、それでも先へ先へ引っ張られるように読み切ってしまう。
そして作者にしてやられた。
驚愕した。
恐ろしく不安で気持ち悪くて、それでも面白いとはどういうことだ(笑

最初の「はしがき」で興味を一気に惹かれ、最後の最後まで気が抜けなかった。
至上の読後感!もう最高!
これはもう一回読み直したい。

【小説】深く深く、砂に埋めて

メフィスト賞→真梨幸子
05 /17 2010
深く深く、砂に埋めて
真梨幸子
講談社
深く深く、砂に埋めて深く深く、砂に埋めて
(2007/10/16)
真梨 幸子

商品詳細を見る

あの有利子がいけないんだよ。あの女は、正真正銘の悪魔だ。あの女は男を狂わせる。狂わされた男は、金の亡者になる。

深く深く、砂に埋めて』本文より

そういえば真梨幸子の本を読んだのは随分久しぶり。
4年半ぶりか…

世間から稀代の悪女と言われた女性の一生を様々な人の視点から描いた作品。

しかし彼女はいわゆる悪女であろうとしたのではない。
ただ自然体が悪なのである。
しかも純真な。
彼女自身は彼女らしく贅沢に生きようとしているだけで人との価値観が少し違っているだけ。
本当に純真であるがために回りの男性の人生の歯車が狂っていく。

その少しずつ狂っていく様、しかしそれでも幸せを感じてしまい引き返さなくなる様が恐ろしい。
男性視点をここまで描いてしまうか!?
描写がすごい。

もちろん女性の視点もたくさんあるのだが、それも実にどろっとしていて気持ち悪さがものすごく伝わってくる。


嫉妬と狂った幸せと金が混ざり合ってどろどろ具合がとてつもなく不快で魅力的な小説でした。
そして根底に様々な登場人物の純粋な想いがあるからもう余計に気持ち悪くて仕方ない。
この危うくもアンバランスな世界を描ききってくるんだからとんでもないよな…
まさに大人の読書家のためのエンターテイメントだ。

【小説】えんじ色心中

メフィスト賞→真梨幸子
11 /20 2005
えんじ色心中
真梨幸子
講談社
えんじ色心中えんじ色心中
(2005/11)
真梨 幸子

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あらすじ

西池袋事件。
15年前、中学受験を控えたAはX中学合格までのドキュメンタリー番組に出演。
しかし中学合格後Aは豹変した。
家庭内暴力、架空の殺人日記と残虐性が増していき親の手に負えなくなっていき、このままではすべてが崩壊してしまうと思った親がAを絞殺した。

中学生とフリーのライター。二人の視点から西池袋事件の真実を抉っていく。


感想とか

うわ…
(いい意味で)この本に騙された orz
こういう真実で構成だったわけですか

世の中の閉塞感とかが大人の視点、子供の視点どっちからもよく描かれてるよなぁ。
読んでる最中軽く世を儚めた(笑。
ある意味浦賀和宏の安藤シリーズに通じるものがあるのかもしれない。

【ミステリ】孤虫症

メフィスト賞→真梨幸子
06 /11 2005
孤虫症
真梨幸子
講談社
孤虫症孤虫症
(2005/04/01)
真梨 幸子

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あらすじ
姉が失踪した。
右手首と書置きを残して。
書置きには「虫が湧いた。特に右手がひどいので切り落とす。
この家には虫がいる。だから逃げる」という内容だった。
姉の交友関係を調べていくと、姉は夫の外に3人の男と関係があったらしい。
出版社からかかってくる電話。
どうやら姉は小説を書いていたようだった。
主人公の名前は私と同じ。
内容は3人の男性との関係を綴ったものだった。


第31回メフィスト賞受賞作。
ケータイで配信された試験的な小説でもある。
ジャンルはバイオ・サイコ・ホラー(と帯に書かれている)。

端的な感想。
気持ち悪い。
気持ち悪いのにも関わらず、どんどん物語の中へ引き込まれていく。
そして驚愕のラスト。
人に自身を持って薦めれます。
そしてこの小説もメフィスト賞じゃないと世に出なかったかもしれません。

この小説の随所に様々な気持ち悪いと思わせるモノが散りばめられている。
人から人へと感染していく寄生虫。
家のどこかにいる虫が蠢く音がずっと聞こえ続けるという表現。
閉塞ともいえる環境で毎日を過ごすマンションの主婦たちの関係。
姉が書いた淫らな生活を描いたノンフィクションとも思える小説。

けれどもこれらの要素があってこそ驚愕のラストが楽しめるんだよなぁ。

孤虫症というタイトルが決定する前の仮のタイトル「風土病」。
これも頭の隅っこにでも覚えておけばより楽しめるかも。


この小説に出てくる寄生虫は現実に存在する。
けれどもこの小説を読んだ後だととてもじゃないけど調べようとは思えない。
実物を見るのが怖い。
この小説を読んだ後に、寄生虫について調べてから再読までした人がいたら感想を聞いてみたいものです。

∀ki(あき)

自由に生きてます。
色々読んだり見たりしてます。

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