The World Is Made Out Of Entertainment
本や映画・ドラマ・アニメの感想などを書いてる日記blog。
【ミステリ】絆
小杉健治
集英社文庫
![]() | 絆 (集英社文庫) (1990/06) 小杉 健治 商品詳細を見る |
――いわゆる正義感である。それはかたくななほど法の番人を任じており、感情に左右されず、事実をのみ重んじ、一見冷徹に見えるほど、被告人をつき放し、事実を追求しようとする。
『絆』本文より
この人物評のとおり、伊勢裁判長は細面の顔につめたい目をあてはめた表情をしていた。
小杉健治の『絆』。
夫殺しの事件の法廷劇ミステリ。
もう最初の200ページくらいがずっと淡々と法廷でのやりとりだったので読むのが苦痛だった。
が、ラスト1/3が「絆」を感じる感動方面へ。
そして読者に対していわゆる一般の人がもつ「常識」を逆手にとったひとつにトリックに言葉が詰まった。
た…確かに。
いわゆる不自由なく生きている人の常識に囚われすぎていたかもしれない。
その考えさせられるテーマに脱帽です。
これが出版されてから15年以上経っているにも関わらず、人間の一般的な考えというものはそんなに進んじゃいないのかもな orz
あとラストの1行に込められた作者の想いの力強さを感じました。
【ミステリ】隻手の声 鬼籍通覧
椹野道流
講談社ノベルス
![]() | 隻手の声―鬼籍通覧 (講談社ノベルス) (2002/09) 椹野 道流 商品詳細を見る |
「結局、すげえ頑張ってる自分を見せることが、あの人なりの子育てだったんだろうなって、思えるようになった。料理するより、一緒に遊ぶより、自分の生き様を見せることで、俺に何かを教えてきたんじゃねえかなって。あ、何かクサイな」
『隻手の声』本文より
鬼籍通覧4冊目『隻手の声』を再読。
親と子の関係を法医学の立場から見つめる話。
インターネットのMMORPGで毎日何時間も遊ぶ子とゲーム内で知り合った伊月。
彼女と仲良くなるにつれて、彼女の家の複雑な事情が次第に明らかになっていく。
インターネット社会における問題点。
逆にインターネットの中でだからこそできる利点。
ネット社会の光と影をインターネットのゲーム初体験の伊月の目を通して語られる。
それが新鮮に見えて、それでいてあらためて考えさせられる。
それに加えて現代社会の中で起こるいくつもの親と子の事件。
この本が出てから何年も経っているけれども、いまだにいくつもの事件が起こっている。
親と子ってどう接すればいいのか。
子供にとっての家庭ってなんなのか。
それがこの本の中で語られていくわけだけれども、なにかもやもやしていることを登場人物たちがスパッと言ってくれた。
そんな気がした。
本筋の中の一つに家庭というのがあった。
家庭の事情なんて物事は複雑かもしれない。
人間には声がある。
片方だけの声だとどうにもならないかもしれないけど、お互いに向かい合えば声はお互いに届く。
そんな風に単純なことなのかもなーとちょっと思わされた。
と書いてみて思った。
これもこれで「隻手の声」の意味っぽいな(笑
【ミステリ】猫丸先輩の空論
倉知淳
イラスト:唐沢なをき
講談社ノベルス
![]() | 猫丸先輩の空論 (講談社ノベルス) (2005/09/06) 倉知 淳 商品詳細を見る |
本当に、猫丸先輩だけは変わらない。
『猫丸先輩の空論』本文より
知り合った学生時代とちっとも変わらずに、興味を持った事柄にだけに仔猫みたいな好奇心で首を突っ込み、ただ「面白いこと」のみを探求してやまない、きっぱりとした生き方を貫いている。
猫丸先輩の自由な生き方と日常の謎たちに癒されるわ…(*´Д`)
講談社ノベルスでの『猫丸先輩』2冊目。
すべて短編。
すべて日常のささいな真相の難解な謎たちが描かれる。
そのところどころで出てくる唐沢なをき画伯のイラストがまた癒し系なもので(*´Д`)
「子ねこを救え」でのなぜ子ねこのうち1匹だけが差別されて育てられていたか、という謎。
「魚か肉か食い物」で誰にも負けない胃袋を持つ子が、超大盛りのステーキを前に敵前逃亡してしまったかという謎が好み。
後者はずっともしかして逃げた子は実はナイフが使えないのではないのかとか思ったりもしたもんだけど、そうきたか。
明らかな伏線が張られてたのに存在すら忘れてた orz
おかげで驚けたんだけど(笑
あとこのシリーズの男性陣のなんともリアルで滑稽な感じもする描かれ方って結構好きかもしれない。
しゃーないんですよ。
日々妄想と現実の狭間で生きてるようなもんなんです orz
だからほんの少しの下心くらい仕方ないんです(笑
そういう下心が話が面白くなる原点にもなってりするんだけど、意外とこの心理って間違った描き方されてないよなぁ(笑
読んでて親近感沸きまくりだ。
収録話:
・水のそとの何か
・とむらい自動車
・子ねこを救え
・な、なつのこ
・魚か肉か食い物
・夜の猫丸
【ミステリ】亡羊の嘆 鬼籍通覧
椹野道流
講談社ノベルス
![]() | 亡羊の嘆 鬼籍通覧 (講談社ノベルス フ I-06) (講談社ノベルス フI- 6) (2008/06/06) 椹野 道流 商品詳細を見る |
どんな人間にでも、多かれ少なかれ裏表はあるもんだし。公共の場でどんなに『いい人、普通の人』でも、自宅の扉を閉めた瞬間からの姿がどんな風かは、誰にも分からないわ。
『亡羊の嘆』本文より
鬼籍通覧シリーズ6冊目『亡羊の嘆』。
うわー、もう随分久しぶりなんじゃないだろうか。
舞台が地元ということもあり好きなシリーズです。
そしてサイン会が非常に楽しみでございます。
さて6冊目。
懐かしい面々と再会したような感覚と同時に、いつどこで起きてもおかしくない舞台設定が目を引く内容でした。
料理研究家が惨殺されたことを発端に、引きこもりの『完全自殺マニュアル』を利用した自殺事件、ネット社会が現実に及ぼす暗い影。
いままさに現実社会で起きている、または起きてもおかしくないと思える。
そういったことに対して法医学教室的な意見、また事件の外側から事件の真相を知った上でこの現実をどう感じたかという意見に対してはおおむね同意。
むしろよく言ってくれたとすら思えた。
読んでいて思ったのが、やっぱりこのシリーズの事件が進む本編と幕間の「飯食う人々」で語られる素直な人間としての感覚の緩急のつけかたが好きだ。
ホントいわゆる探偵や警察ものではなく法医学という特殊な環境にいながらも、かなり一般に近い客観的視点で事件を語ってくれるというスタイルはどこか「ハッ」とさせられるところがあると思えます。
2008.06/21
サイン会いってきました。
予想はしてたが、やっぱり女性ばっかりだったか(笑
鬼籍通覧シリーズの地元あたりに住んでるので、高槻とかの話をちょっとさせていただきました。
【ミステリ】猫丸先輩の推測
倉知淳
イラスト:唐沢なをき
講談社ノベルス
![]() | 猫丸先輩の推測 (講談社ノベルス) (2002/09) 倉知 淳 商品詳細を見る |
とにかく世の中の森羅万象を面白いか面白くないかだけの判断でくっきりに分割して、己の興味のある対象にのみ突き進むその生き方は、おバカなのか賢いのか、傍目にはちょっと区別がつかない。
『猫丸先輩の推測』本文より
猫丸先輩のシリーズ4冊目。
講談社ノベルスではこれが1冊目のハズ。
倉知淳の本を読むのはかなり久しぶり。
3〜4年前に『星降り山荘の殺人』を読んで以来だろうか。
猫丸先輩を読むのははじめて。
女性のミステリ読者に人気と言うのは聞いたことがあるけど、さてどういう意味なのだろうかとも思いつつ読んでみた。
30過ぎだけれども童顔。
ひょうひょうとしていて掴みどころがなく、職にもつかずふらふらと色んなところでバイトしたりしている。
そんな猫丸先輩に絡まれた友人や遭遇しちゃった人たちの話。
収録されている短編はすべて日常の謎なんだけれども、猫丸先輩の類稀なる妄想力によって解決したりしなかったり。
なんせタイトルどおり「推測」だし(笑
そんな感じなので軽い気持ちで読み進められた。
あと、猫丸先輩の人柄というか自由すぎる生き方を見てるとなんか和むなぁ。
収録話:
・夜届く
・桜の森の七分咲きの下
・失踪当時の肉球は
・たわしと真夏とスパイ
・カラスの動物園
・クリスマスの猫丸
【ミステリ】長い家の殺人(新装版)
歌野晶午
講談社文庫
![]() | 長い家の殺人 (講談社文庫 (う23-11)) (2008/04/15) 歌野 晶午 商品詳細を見る |
冗談じゃない! これは殺人事件なんだぜ。百パーセントの推理が組みあがるまでは何もいわない、いえるもんか。
『長い家の殺人(新装版)』本文より
ごもっとも。
こういう文が含まれることが時代を感じさせるよなぁ。
歌野晶午の88年のデビュー作『長い家の殺人』の新装版。
解説はノベルス版の時と同じ文章である島田荘司のもの。
新装版刊行にあたってという歌野晶午による序文が含まれた他には誤字脱字修正以外はほとんど変更点はなしだそうです。
消失したはずの死体が元の場所に戻る。
そんなメイントリックを使ったミステリ。
なんか読んでいてひどく懐かしい感覚に浸れた。
ちょうど新本格ミステリのブームが訪れるもっとも初期。
その頃だけに今のようにややこしかったり、ミステリ以外の要素を多く含んだり。
そういうこともほとんどなく、ただ単にミステリを楽しめる本だと思う。
コンパクトな内容で、かつ楽しめる。
それでいてトリックもかなり大胆なものでした。
昨今の歌野晶午の作品とはかなり作風が違って驚いた。
ここまで真正面からミステリを描いていた時期もあったのか…
あと音楽に詳しかったのは意外だった。
【ミステリ】双面獣事件
二階堂黎人
講談社ノベルス
![]() | 双面獣事件 (講談社ノベルス ニF- 13) (2007/12/07) 二階堂 黎人 商品詳細を見る |
「究極の悪は常に究極の悪でしかない。家畜のように飼い慣らすことなど、絶対にできないのだ!」
『双面獣事件』本文より
二階堂黎人のラビリンス・サーガ3作目『双面獣事件』。
前作『魔術王事件』と対になる事件。
二階堂蘭子のシリーズを読み続けていてキャラクターにも愛着を持つ人にとってはもはやテンションあがりっぱなしなんじゃないだろうか(笑
ついにあのラビリンスの尻尾が見え始める。
そしてラビリンスがなにを成そうとしているのかも。
次だな。
今回あそこまで描いてしまったらから、おそらく次あたりがラビリンスとの最終的な対決になるはず。
もうそれが楽しみでならない。
目から光線を出し人を焼き、怪力のような力で人をねじ伏せ、吐く息は毒ガスという二つの顔を持ち四つの腕を持つ不気味な生命体「双面獣」。
その「双面獣」によって滅ぼされた村があり、それにあの蘭子を苦しめた犯罪者ラビリンスが絡んでいる。
名探偵vs魔獣という怪奇ものであり、冒険もの。
蘭子シリーズの1作であるために当然古きよき名探偵たちの冒険ものかのような本だった。
この決死の覚悟で怪物という怪奇現象に挑んでいく様がハラハラドキドキもの。
それがまた懐かしい感覚だった(笑
子供の頃に読んだ冒険ものってこんなだったよなぁ、と。
そんな大人でも楽しめる冒険ものかと思います。
あと『魔術王事件』は先に読んでおいたほうがいいかと思う。
というのも2つが対を成す事件でもあるのだけれども、『双面獣事件』を先に読むと『魔術王事件』の楽しみがちょっと減ってしまうような気もするんで。
【ミステリ】一の悲劇
法月綸太郎
祥伝社文庫
![]() | 一の悲劇 (ノン・ポシェット) (1996/07) 法月 綸太郎 商品詳細を見る |
「俺は気が短いと言ったはずだ。もう取引はない。子供は殺した」
『一の悲劇』本文より
「――殺した?」
「最初からそういう約束だったろう。青梅市郊外にある、青梅保養院のそばの工事現場に、殺して捨てた。いいか、山倉さん。これは、俺の責任じゃない。あんたのせいなんだ。あんたが一番悪いんだ」
法月綸太郎の悲劇シリーズ1冊目。
すべて一人称で描かれる少々特異な長編。
親本が91年ということもあり、時代を感じた。
とすると頼子や雪密室はそれよりも前なんだな…
主人公は法月綸太郎ではないので、読み始めて興味を少々削がれたけれどもラストまで一気に読めた。
やっぱ法月作品だ(笑
ちなみにこの事件では法月警視や法月綸太郎は登場人物のひとりとして登場する。
非常に人物同士の関係が濃密であるために、誘拐殺人事件からはじまる悲劇が実に「悲劇」として描かれている。
主人公も悩む悩む(笑
もうどうしようもないくらいに。
これだ。
こーゆーのが読みたかったんだ(笑
事件の方もいわゆる誘拐殺人ではなく、誘拐する子供を間違えた誘拐ということからも複雑。
複雑なのは冒頭の大きな事件だけでなく、人間関係のややこしさにこそあったんだけども。
その関係が解きほぐされ、事件に関わっていく様は爽快でした。
しかし読後感が激しく悪い(褒め言葉
『頼子のために』と『ふたたび赤い悪夢』の間に書かれた本ということで納得。
ミステリとして見事でいて、どうしようもない読後感もやっぱり魅力でした。
【ミステリ】本格推理委員会
日向まさみち
表紙イラスト:壱河きづく
角川文庫
![]() | 本格推理委員会 (角川文庫) (2006/12/22) 日向 まさみち 商品詳細を見る |
ああ、そうさ。俺はコスプレしてたさ。痛すぎることにネタじゃなく、三日に一度はその格好でご近所をうろついてたさ。鏡の前で「……犯人は、あなたです」って言う練習もしてたさ――ああ畜生ッ。過去の俺、死ね!
『本格推理委員会』本文より
第1回ボイルドエッグズ新人賞の受賞作品。
文庫版の解説はタニグチリウイチ。
小中高一貫のマンモス高「木ノ花学園」で結成された「本格推理委員会」。
理事長が結成した理由は事件が起こるから。
彼女が探偵の素質ありと認めたものだけが強制的に入らされる委員会。
メンバーは勘だけですべてを見抜く関西弁少女や凛々しく強く少女好きな女の子などかわいい子ばっかり。
その中に入った男子学生。
しかもシスコン。
これでもかと萌えに特化しキャラクターを掘り下げる様は情熱すら感じた。
登場人物も小学生と高校生だし(笑
でもしっかりと論理を組み立てるミステリ。
いわばラノベ+ミステリ。
けど実態は青春小説であると思う。
自分の中にある大きな壁を仲間たち、そして親や妹と共に乗り越えていく。
自分を乗り越える。
なんと痛い表現だろう(笑
確かに使い古され素晴らしい作品をいくつも生み出したテーマなんだけど、あらためて考えるとイタい。
主人公が高校生で、周りが女の子ばっかの状況というのもあいまって、ね(笑
そんな青さと痛さが同時にあるような感じだった(笑
もうそこがなんともよい!
直球ストレートに狙ってるよなー(笑
背表紙の「痛いほどに純真な〜」という表現はまさに的を得ていると思う。
ここまでやってくれるような作者なら他の作品も読んでみたいと思ったんだけれども、この作品以降は活動してないのか。
残念 orz
【ミステリ】アインシュタイン・ゲーム
佐飛通俊
講談社ノベルス
![]() | アインシュタイン・ゲーム (講談社ノベルス) (2006/08/08) 佐飛 通俊 商品詳細を見る |
生粋の日本人なのに名をザナドゥ鈴木といって――本名は鈴木ザナドゥなのだが、格好がいいからという理由で対外的には姓名をひっくりかえして名乗っている
『アインシュタイン・ゲーム』本文より
作家で評論家、歴史人類学者だったり探偵だったりするザナドゥ鈴木が活躍するミステリ。
アインシュタインが来日した時に残した不可解なメッセージを軸に、奇妙奇天烈な人物たちがあれこれ自己を主張しながら議論していく。
哲学はニーチェなど、文学もルバイヤートにファウストに、ボードレールなんかからいろいろ登場人物たちが会話の中で引用したり、果てはトイレの歴史についても知れるという謎な本。
もちろん物理も結構語られます。
知識のごった煮のような本だった(笑
ミステリの部分がもはやおいてけぼり…というわけでもないんだけど読んでて本題を忘れそうになることもしばしば。
確かに会話はおもしろい。
でもそれを話してる人物たちがもう変人ばっかりで(笑
そもそも名前からしてザナドゥ鈴木はねーよ、というのはまだマシで。
主要な人物だけでも円桜池白冷(えんおういけ はくれい)とか破邪滅羅(はじゃめっら)や片庭明明(かたばみょう あきら)とか(笑
それでいて変人揃いなんだからもうね…。
この本はいろんな意味で濃かった(笑
あと軽く読み流しながらという感じで読むと楽しめるよーな気がする。
タグ : アインシュタイン・ゲーム 佐飛通俊 講談社ノベルス
【ミステリ】モンクと警官ストライキ
Mr.Monk and the Blue Flu
リー・ゴールドバーグ Lee Goldberg
訳:高橋知子
ソフトバンク文庫
![]() | 名探偵モンク モンクと警官ストライキ (ソフトバンク文庫 コ 1-2) (2008/03/17) リー・ゴールドバーグ 商品詳細を見る |
「どの事件も進展がないので、今のうちに刑事部屋を掃除して壁の絵をまっすぐに掛けなおして、デスクや備品を一直線に並べてデスクの上を整頓して、紙バサミをサイズ別に分けて鉛筆を均一にしましょう」
『モンクと警官ストライキ』本文より
「鉛筆を均一にする?」とワイアットが言った。
「鉛筆を同じ長さになるよう削って、芯もぴんぴんにとがらせましょうってこと」とわたしは言った。
モンクは我が意を得たりとばかりに、わたしに笑みを向けた。
『名探偵モンク』2冊目。
2冊目が出たっ!?
もしやこれは3月目以降も翻訳が進んでいると見ていいのだろうか。
巻末エッセイはモンクさんの吹き替えの角野卓造。
名前を見ただけでちょっと小躍りした(笑
なんと喜ばしいことか。
願わくばこの流れに乗ってDVDの発売も…
2巻では警官のストライキにより、モンクさんが緊急に復職する。
でも部下はストライキのためにいないわけだから、モンクさんのように分けありで休職している人が集まる。
3人の部下と彼らのアシスタントと共にいくつもの事件を捜査していく。
爆笑。
なんだよこの結束感(笑
モンクさんとその部下たちの友情と、世話が大変な人たちの補佐に当たっている人たちの間で芽生えた友情。
モンクさんが3人増えて、ナタリーが3人増えたような感じだ(笑
それだけでも十分楽しいことこの上ないんだけども、事件の方も前巻と同様に二転三転するようなれっきとしたミステリ。
前作でも思ったけれどもテレビでは放送できないような長大な尺。
長くモンクさんの世界に浸れてとっても満足です。
あとはやっぱり描写がものすごくイイ!
ナタリー視点でずっと物語りは語られているんだけども、映像でしか表現できそうにないモンクさんの挙動の一つ一つがなぜか思い描けるようなタッチの文。
これがモンクの脚本家自身による小説版の再現度の高さってやつか。
今回の市長の前で演説するモンクさんの描写なんかがいちばん好きだった。
ミステリだけじゃなく、正直今回ほろっと来てしまったのもお見事。
モンクとナタリーやストットルマイヤー警部との友情に泣けた(;´д⊂
まさかこんないい話になるとは…
【ミステリ】黄昏のベルリン
連城三紀彦
文春文庫
![]() | 黄昏のベルリン (文春文庫 れ 1-16) (2007/10) 連城 三紀彦 商品詳細を見る |
不思議ね、私は子供の頃から運命って言葉を信じたことはないの。運命なんてなくて、私の人生があるだけだったわ。私がたとえば数分後に事故に遭って死んだとしても、それは私の生き方だわ。でも、二度だけ私は運命という言葉を信じようとしたのよ。マイクと出会った時と、それからあなたと出会った時と――
『黄昏のベルリン』本文より
1988年の「週刊文春」傑作ミステリーベスト10の1位作品。
ドイツ人女性から自分が第二次世界大戦中に強制収容所で生まれたと知らされ、自分の出生のルーツを探るため遥かヨーロッパへ旅立つ主人公の画家。
東京からベルリン、ニューヨークにパリと自分の出生の秘密を探っていく過程で次々に謎が降りかかってくる展開がエキサイティング。
そして登場人物たちが自分を強く持っている、いや、あまりにもハードボイルドな人たちというのもなんだか渋みがある。
登場する世界の様々な場所は随分と色彩豊かな表現で描かれるのに、この登場人物たちのハードボイルドさによってこの世界観が妙に厳格なものに仕上がってるよな…
【ミステリ】復讐はお好き?
SKINNY DIP
カール・ハイアセン CARL HIAASEN
訳:田村義進
文春文庫
![]() | 復讐はお好き? (文春文庫 ハ 24-2) (2007/06) カール・ハイアセン 商品詳細を見る |
要するに、あんなクソッタレと結婚したのがいけなかったのだ。自分は結婚記念の船旅で海に投げ捨てられ、もうちょっとで溺れ死ぬか、鮫の餌食になろうとしている。
カール・ハイアセン『復讐はお好き?』本文より引用
2007年度の「このミステリーがすごい!」の海外部門で第2位をとった作品。
結婚記念の船旅で夫によってフロリダはマイアミの海に投げ捨てられ、マリファナの入った袋につかまり生還した妻の復讐劇。
復習って言うほどどろどろしていないし、どちらかというと「アノヤローめ、とっちめてやる!」って感じ。
これがまた夫のほうもすさまじいキャラクターで、もう実にどうしようもない。
浮気は当たり前だし、海に妻を投げ捨てたあとも女を家に引っ張り込むようなやつだしetc.
そんなどうしようもない夫が妻を海に投げ捨ててからというものいろんなものに追い詰められていく。
それが非常に痛快だった。
さらに夫の所業がすべてラストに返ってきて集約していくのだから、一体この本は一体どういう構造をしているのだ(笑
復讐劇を楽しい気分で読めた本でした。
【ミステリ】償い
矢口敦子
幻冬舎文庫
![]() | 償い (幻冬舎文庫) (2003/06) 矢口 敦子 商品詳細を見る |
私は取り返しのつかない過ちを犯したのだろうか。善を行ったつもりで、悪を行ったのだろうか
矢口敦子『償い』本文より引用
矢口敦子の『償い』。
子供の病気が危険な状態になり、その時に自分が忙しいことを理由に妻に任せていたら子供が死んでしまった。
その直後には妻が自殺。
そして自分の奇跡的な手術によって生き延びた患者は何年も経ってからその手術の影響で死亡してしまい、それをきっかけに医師としての立場を追いやられる。
そうやってホームレスになった主人公が、昔誘拐事件でさらわれ自分が助けた子供と再会する。
ミステリということで読んでみると「ん?」と思い始める。
これってミステリ?
自分の罪にさいなまれる元医者と少年の心の交流が緩やかに描かれ、それになんだか和む。
主人公の周りでホームレスや高齢者をターゲットにした事件が起こり、なんだか社会派っぽい小説だなぁと思ってさらに読み進めていく。
するとなんだか怒涛の展開へ。
ラストのラストまで緊張が続く。
こ……これは。
主人公のホームレス生活がしっかり描かれるのも、社会派っぽい事件が描かれるのもすべてが伏線じゃないか。
あとでこの本を振り返るとすべて一貫した構成であったことにびっくりした。
すべては主人公の心の救済のためのストーリーであるといっても過言じゃない。
素直に感動した。
ラスト一ページになんだか救われたというか心が洗われたというか…
帯文句に「温かい感動」というのが謳われていたのも納得。
【ミステリ】モンク、消防署に行く
Mr.Monk Goes to the Firehouse
リー・ゴールドバーグ Lee Goldberg
訳:高橋知子
ソフトバンク文庫
![]() | 名探偵モンク モンク、消防署に行く (ソフトバンク文庫 コ 1-1) (2007/11/15) リー・ゴールドバーグ 商品詳細を見る |
「ええと、たとえば、わたしたちはモンクさんみたいに毎日歯ブラシを使うたびに煮沸消毒はしないわ」
リー・ゴールドバーグ『モンク、消防署に行く』本文より引用
モンクは目をむいて言った。「それはぜったいによくない」
名探偵モンクの小説版1巻。
ドラマのノベライズではなく、オリジナルの展開。
作者はミステリ作家でもあり、ドラマ版の脚本もしているリー・ゴールドバーグ。
1話45分じゃとてもとても収まりきらないような長編。
これくらい長い話もドラマで見てみたいもんだ。
まさかドラマ関連本で面白い本に出会うことがあるとは。
本屋でそういえば買ってなかったな、くらいの気持ちで買ってみたらこれがまた面白い。
ナタリーの視点で見ていて、かつ文字で語る小説なのでモンクさんの奇行が余計目に付く(笑
また、ドラマ同様ストットルマイヤー警部とディッシャー警部補の漫才も健在。
各所に仕込まれるネタもくすっと笑ったところ数知れず。
もちろんコメディとしてだけじゃなく、ミステリとしてもGOOD!
いつものようにオチも驚愕のラストもしっかりあります。
まさに本家脚本家による小説版。
ぜひとも2巻以降も発売してほしいもの。
ちょうど現在「名探偵モンク4」が終わって半年。
モンク5はまだかーと待っているところだったので、いつもより長い時間モンクさんに触れられたのがなにより楽しかったかも(笑
タグ : 名探偵モンク リー・ゴールドバーグ ソフトバンク文庫 高橋知子
【ミステリ】火の粉
雫井脩介
幻冬舎文庫
![]() | 火の粉 (幻冬舎文庫) (2004/08) 雫井 脩介 商品詳細を見る |
「世の中って、何でこんなに報われないんでしょうね」
雫井脩介『火の粉』本文より引用
そう口にすると、余計に涙がこぼれてしまった。
雫井脩介の『火の粉』。
『犯人に告ぐ』を呼んだときは男性心理とかしっかり書けてる本だよなー、と思ってこれを読んだら女性の深層意識まで描いててびっくりした。
こういうのも書ける人なのか。
なるほど。
『クローズド・ノート』を書いた作者っていうのに納得した。
『火の粉』は老人介護と冤罪事件、そして隣人関係をメインに、普通の主婦や元裁判官たちを襲う非現実さを描いた本だと思った。
誰がおかしいのか。
それとも自分がおかしくなってしまっているのか。
緊張感がだんだんと高まり、極限に達したときに見られた登場人物の描かれ方が実にすごかった。
何気ないけれども、結構身近なテーマが多かったので感情移入しながら読めた気がする。
【ミステリ】レストア
太田忠司
カッパノベルス
ジャーロ連載
![]() | レストア オルゴール修復師・雪永鋼の事件簿 (カッパ・ノベルス) (2006/03/23) 太田 忠司 商品詳細を見る |
わかったでしょ鋼ちゃん、あなたがレストアしたのはオルゴールだけじゃないの
太田忠司『レストア』本文より引用
太田忠司の連作短編集『レストア』。
霞田兄妹シリーズの『維納オルゴールの謎』でもテーマとして取り上げられたオルゴール。
今度はその修復師を探偵としたミステリ…と思っていたんだけれどもちょっと違っていた。
主人公は人と接するのが非常に苦手であり、欝を抱えて生きている。
だから人の心の内面まで入り込むのを非常に恐れる。
そんな彼によってオルゴールに秘められた誰かが残した謎を解かれていく。
その際に彼も人に関わり、事件に関わった人や周りの人たちに手を引かれるように外の世界へ一歩一歩踏み出していくという変わったミステリだった。
謎を解く=ミステリっていうのではなく、むしろ人の心のミステリみたいな感じだった。
【ミステリ】チーム・バチスタの栄光 下
海堂尊
宝島社文庫
![]() | チーム・バチスタの栄光(下) 「このミス」大賞シリーズ [宝島社文庫] (宝島社文庫 (600)) (2007/11/10) 海堂 尊 商品詳細を見る |
スネイル(かたつむり)にシーアネモネ(いそぎんちゃく)。白鳥の話は知性の地平線を越えて大空に旅立ってしまった。俺はひとり置き去りにされた。
『チーム・バチスタの栄光 下』本文より引用
『チーム・バチスタの栄光』下巻。
第2章からラストまでを収録。
あまりに変態的な厚生労働省の役人「白鳥」が登場。
田口とともに事件の真相を暴こうとするのだが。
これがまたあまりに変人。
聞き取りに必要なパッシブ・フェーズとアクティブ・フェーズってなんだよw
もはや何がやりたいのか全然わかんねーよ。
言うなれば奥田英朗の伊良部医師よりおかしいよっ、この白鳥(笑
予想外の規格の人物に苦笑しながら読み進めていくと、前半のマジメで謎がさっぱり浮かび上がらない展開と後半の奇天烈な展開に整合性が見えてきだして、真相へ。
事件の謎や現代にある医療現場の裏に潜む問題。
それらを暴き出して、かつ爽やかに幕を閉じる展開にはもはや拍手をしたいくらい。
見事なまでのエンターテイメント小説だった。
あの白鳥役を映画では阿部寛か…
ものすごく合いそうな感じだ。
【映画 チーム・バチスタの栄光】
http://www.team-b.jp/index.html
タグ : チーム・バチスタの栄光 海堂尊 宝島社文庫
【ミステリ】チーム・バチスタの栄光 上
海堂尊
宝島社文庫
![]() | チーム・バチスタの栄光(上) 「このミス」大賞シリーズ [宝島社文庫] (宝島社文庫 599) (2007/11/10) 海堂 尊 商品詳細を見る |
「私は始めからずっと見ていましたが、おかしな点には気づきませんでした。どう見ても単なる医療ミスではなさそうです。何かが起こっている。それが何かわかりません。何が何だかさっぱりわからないんです」
『チーム・バチスタの栄光 上』本文より引用
第4回「このミステリーがすごい!」の大賞作『チーム・バチスタの栄光』。
2008年2月に映画化。
チーム・バチスタと呼ばれるバチスタ手術を奇跡の成功率でなし遂げる天才チーム。
しかし、ここのところ連続して失敗を繰り返している。
医療ミスなのか殺人なのか、それとも。
それを突き止めるために院長先生はひとりの医師を派遣する。
なんとも魅力的なテーマな小説。
ミスか殺人か。
上巻だけ読み終わったけれども、なにも分からない。
伏線はたくさん張られているはずなんだけれども、一体なにが問題でこの事件に発展しているのかが謎。
どうも下巻を読まないことにはなにも言えそうにない。
フィクションなのは分かっているけれども、子供に対する心臓外科手術の背景や紛争地域の子供に対する手術に対する各省庁のどたばたっぷりは色々考えさせられる。
実際に小説内のようなことが起こったら世間はどう動くんだろうかとか考えてしまう。
それくらいに「実際」の医療の現場はどうなのか知らないんだよなぁ。
ラストに第2部の最初の1章分を収録するなら下巻に2部以降を収録して欲しかった。
それよりもそんなにページ数ないんだから上下に分けなくても…と思った。
文庫版の作りにちょっとげんなり。
タグ : チーム・バチスタの栄光 海堂尊 宝島社文庫 このミステリーがすごい!
【ミステリ】安達ヶ原の鬼密室
歌野晶午
講談社文庫
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「いえ、そうではないのです。もしも、万が一ですよ、真相がわからなかった場合には、適当なお話を作っていただきたいのです」
『安達ヶ原の鬼密室』本文より引用
葉桜の歌野晶午の『安達ヶ原の鬼密室』。
昭和20年代に起きた「鬼」が起こしたという一晩で7人が殺された事件などいくつかの話をまとめた構成の『安達ヶ原の鬼密室』。
ある種、ひとつのまとまりはあるんだけども、1冊の本としてこれはどうかな…、と。
最初の事件が解決される直前で次の話に移行し、その話のラストが分かるのはずっと後っていうのはな…
確かに事件自体がとても魅力的なものだから、続きがどうなるんだよーーというふうにはなるんだけれども、いざ解決編を読むとところどころ忘れていたりしたのが残念。
一気に一冊読めるような時間がある時に読めたらとても楽しめたとは思うんだけども。



















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