【小説】もらい泣き

もらい泣き
冲方丁
集英社文庫
もらい泣き (集英社文庫)
冲方 丁
集英社 (2015-08-20)
売り上げランキング: 56,611

選挙なんかなくても、本当は誰もが指導者になれるし、正しい指導者を選ぶことができるんだ。煤だらけのドレス姿で走る花嫁を見て、そう思ったよ。この国は実際のところ問題ばかりだが、本物のトラブルが起こったときは必ず誰かが立ち上がる。それがアメリカさ。

もらい泣き』本文より

冲方丁の『もらい泣き』。
ショートショートのまさに泣ける本。
短い物語たちに対して恐ろしい密度のぐっとくる話、感動する話たちが詰まってる。
作者が集めてきた話を物語にする作業があるとはいえ、世界にはこんなに愛が詰まってるのだと思い知らされる。
短い物語ばかりでそんなに分厚いわけでもない。
でもこの物語たちの与えてくれる力はすごいものがあった。

tag : もらい泣き 冲方丁 集英社文庫

【小説】ストーム・ブリング・ワールド 2

ストーム・ブリング・ワールド
冲方丁
カバーイラスト:山本ヤマト
MF文庫
ストーム・ブリング・ワールド2 (MF文庫ダ・ヴィンチ)ストーム・ブリング・ワールド2 (MF文庫ダ・ヴィンチ)
(2009/10/21)
冲方 丁

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「やっぱり、守る相手が、君で良かったなと思って」
アーティはまた、くしゃっと顔を歪め、ぽろぽろと涙を雫した。

ストーム・ブリング・ワールド 2』本文より

ストーム・ブリング・ワールド』2巻目。
完結編。
MF文庫版で再読。

少年と少女の魔法学園ものはいつしか自分たちの街を守るための戦いへ。

嘘と嘘がまじりあい、交差する。
やがてそれは主人公たち少年少女を結びつけるわけだけれども、その嘘が明かされる瞬間のカタルシスとクライマックスが同時に襲い掛かってくる。
さらには王道の少年と少女の恋すらも同時に殴り掛かってくるかのような読書感。

おいおい。
たった2冊だぞ。
もとはMF文庫Jでゲーム原作のラノベの中でも王道なメディアミックスがこうも胸躍るファンタジーになり果てるとは。

だいぶ久しぶりに再読したのだけれども、新版である文章がすごく読みやすかったし、変にキャラクターキャラクターせず、等身大の少年少女たちの物語として楽しく読めたかな、っと。

tag : ストーム・ブリング・ワールド 冲方丁 山本ヤマト MF文庫

【小説】ストーム・ブリング・ワールド 1

ストーム・ブリング・ワールド
冲方丁
カバーイラスト:山本ヤマト
MF文庫
ストーム・ブリング・ワールド1(MF文庫ダ・ヴィンチ)ストーム・ブリング・ワールド1(MF文庫ダ・ヴィンチ)
(2009/08/21)
冲方 丁

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涙では何も解決しない――ずっとそう思ってきた。

ストーム・ブリング・ワールド 1』本文より

新版で再読。

カルドセプトの世界観を用いた『ストーム・ブリング・ワールド』。

最初に読んだ時はさっぱり知らず、今は少しだけ理解しているだけ。
あんま変わらないのかもしれないが。

あのボードゲームにも似た内容をよくもまぁここまで世界観を膨らませたものだ。

ボーイ・ミーツ・ガールで学園でファンタジー。
なんてありきたり。

いやいや、そんなことない。
そう思っていたらラストあたりで気づかされる。

権力との戦い、親の期待。
そういったありきたりラノベだけじゃなく、もっと大人になってからじゃないと気付かないような青春要素も満載になってくる。
子供から大人になる、その通過点の戦いとでもいうのだろうか。

甘さも苦さも酸っぱさも含めてて、いいファンタジーだ。

tag : ストーム・ブリング・ワールド 冲方丁 山本ヤマト MF文庫

【小説】光圀伝

光圀伝
冲方丁
角川書店
光圀伝光圀伝
(2012/09/01)
冲方 丁

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「史書に記されし者たち全て、生きたのだ。わしやお前が、この世に生きているように。彼らの生の事実が、必ずお前に道を示す。天道人倫は、人々の無限の生の連なりなのだから。人が生きる限り、この世は決して無ではなく、史書がある限り、人の生は不滅だ。なぜなら、命に限りはあれど、生きたという事実だけは永劫不滅であるからだ」

光圀伝』本編より

すごい本を読んだ。
極厚の水戸光圀の、いわゆる水戸黄門の一生の物語である。

いったい彼が何者であったのかを理解した。
ゆえにこの本はエンターテイメント性のある時代物のひとつであり、そして史書のひとつだろう。

なによりもこの本を読んで感じたことは、人は死ぬ。そして生きていたということだ。

多くの人を見取り、そして生きていたこの光圀公が国を想い、部下を想い、未来を想っていた。
そしてその思想は今もしっかり息づいている。

『史書』というテーマを用い、連綿と続く人の世を考えさせてくれる一冊だった。
加えて極厚濃厚な本でした。

tag : 光圀伝 冲方丁 角川書店

【小説】天地明察

天地明察 上下
冲方丁
角川文庫
天地明察(上) (角川文庫)天地明察(上) (角川文庫)
(2012/05/18)
冲方 丁

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「星はときに人を惑わせるものとされますが、それは、人が天の定石を誤って受け取るからです。正しく天の定石をつかめば、天理暦法いずれも誤謬無く人の手の内となり、ひいては、天地明察となりましょう」

天地明察 下』本文より

冲方丁のヒット作『天地明察』。
マルドゥックの時はついにラノベからガチSFに行ったと思っていたら、まさかの時代もの。
しかも暦を作る人の話ときた。

これはまた予想外な方にいったなぁ。

読んでみるとこれがまたすごく読みやすい。

カオスレギオンやマルドゥックの変遷を見て、バイアスや黒い季節で過去作に触れたりしてから読むと新しい新境地にいったなぁと思えてくる。
キャラクター描写というところは変わらないのに、明らかに読み手側のターゲットをニッチな方向にではなく、メジャな方向へとシフトした読みやすさがあるなと思った。

歴史小説は時々読みにくかったりするのであまり読まないのだけれども、時代物というような意識をせずに読めたような気がする。

読みやすさはもとより、何十年もかけて失敗もしながら自分の出した計算の答え=明察を求めて試行錯誤していく様は胸を打たれるものがあった。
しかもたったひとりで成し得たことじゃなくて、いろんな人の影響や支えをもってして成し遂げた偉業ってところがまたいいのである。
じーんとくるわけである。


でもさ。
またSFにも戻ってきてほしいなぁ(笑

tag : 天地明察 冲方丁 角川文庫

【SF】マルドゥック・フラグメンツ

マルドゥック・フラグメンツ
冲方丁
カバーイラスト:寺田克也
ハヤカワ文庫JA
マルドゥック・フラグメンツ (ハヤカワ文庫 JA ウ 1-11)マルドゥック・フラグメンツ (ハヤカワ文庫 JA ウ 1-11)
(2011/05/10)
冲方 丁

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「科学が……眠り姫を目覚めさせることを祈るべきか悩むよ。人間感情と科学がもたらす強迫観念は結合の一途を辿ってる。万能となれ、矛盾をなくせ、幸福は完全なかたちでやってくる。そのために対象を操作し尽くせば、人も物も本質を失うのに」
「だからこそ我々は矛盾と一体化し、社会に身を投じた」

マルドゥック・フラグメンツ』収録『マルドゥック・スクランブル"-200"』本文より

『マルドゥック』シリーズの間を埋める短編集。

短編…だよな。
短編にも関わらず一篇一篇が濃い。

マルドゥックのシリーズの世界観を広げている。
世界観の補完と拡充のためのマルドゥック・スクランブルの前日譚。
バロットとの死闘のあとに幕が下りるボイルドによる追想を描いたエピローグにしてヴェロシティの終焉。

さらに悲劇的な幕開けでもあるウフコックが語る次なるマルドゥックのはじまりである、「アノニマス」。

一篇一篇確かに完結していて、補完的な内容にもなっている。
それ以上に冲方丁の新たな試みであったり、文章も独特にけれどもさらに深くなっていく表現にも驚かされる。
一体どこまでいくのだ。
そして次なる「アノニマス」にも期待したい。いや、もう焦れるほどに待ちます。

収録されるインタビューを読んだら、期待せざるを得ないのと、単なる新装版に思っていた完全版にも手を出したくなります。

収録話:
・「マルドゥック・スクランブル "1 0 4"」
・「マルドゥック・スクランブル "-200"」
・「Preface of マルドゥック・スクランブル」
・「マルドゥック・ヴェロシティ Prologue & Epilogue」
・「マルドゥック・アノニマス "ウォーバード"」
・「Preface of マルドゥック・アノニマス」
・「冲方丁インタビュウ 古典化を阻止するための試み」
・「抜粋収録 事件屋稼業」

tag : マルドゥック・フラグメンツ 冲方丁 寺田克也 ハヤカワ文庫

【小説】黒い季節

黒い季節
冲方丁
角川文庫
黒い季節 (角川文庫)黒い季節 (角川文庫)
(2010/08/25)
冲方 丁

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「俺、今更、カラス以外の何になれるんでしょうね」
「おいお前……」
「壊し屋として<申楽>に拾われたんですよ、俺は」
「馬鹿」と鹿島は言った。「カラスだって子ぐらい持つ。鳴きながらな」

黒い季節』本文より

冲方丁のデビュー作『黒い季節』。
10代の頃の受賞作なんだよな…
しかもライトノベルのはず。
単行本で発売だけど。

世界観がやくざの世界で日本風ファンタジーとアジアファンタジーを融合させてるハードボイルドな気風漂う小説。
なにものとも違う確固たる小説だ。

主人公と同様にこの小説自体が自らを見つけようとするかのような気すらしてくる小説だよなぁ。
だけれども既に存在として強烈すぎます。
これほんとに10代の頃なん?と思えるほどに。

それにしても…濃い小説だよなぁ。

tag : 黒い季節 冲方丁 角川文庫

【コミック】ピルグリム・イェーガー 第1部

ピルグリム・イェーガー 巡礼の魔狩人 Pilgrim Jäger
作:冲方丁
画:伊藤真美
ヤングキングアワーズ連載
第1部 全6巻
ピルグリム・イェーガー 1巻 (ヤングキングコミックス)ピルグリム・イェーガー 1巻 (ヤングキングコミックス)
(2002/05/29)
冲方 丁

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神(ゴッド)も!! 神(ディオ)も! 神(デウス)も! 神(ヤハウエ)も!! 神(アッラー)も!!
要するにみんな同じ神だ 同じ神!!!
それぞれの信仰の形式に執着する為の異端排撃などもはや信仰ではない
粛正などという無軌道な青春時代に抱きがちな殺戮の妄想はとっくに卒業した!
私は神の騎士たらんと志す男だ
若造の戯れ言に付き合う気は無し!

ピルグリム・イェーガー 3』本文より

あぁもうロヨラさん素敵過ぎ。
いま読み返してもゾクゾクする言葉だ。

久しぶりに全巻再読。

時はまさに宗教という宗教が勃発しては叩かれ排除され粛正されている16世紀。
異端に対して非常に厳しい時代であり、教会は免罪符を売り出し本当の信仰というものはどこにあるのかを人々から疑問視されている。

そんな時代にローマをローマたらんとさせるべく歴史上の人物たちが入り乱れ、悪魔憑きを特殊な能力者たちが狩り、そして宗教というものを取り戻そうとする。

教会はもちろんメディチ家もしっかり絡み、混沌とした世界の中で「祈り」とは「神とは」を紐解いていく。


イタリアはもちろんこの時代の宗教に関わるものたちの異能バトルと宗教観をかみ合わせる豪快さ。
そんでもって時として大胆すぎる解釈を真っ向から出してくる怖いもんなしの内容が楽しくて仕方ない。

このあとこの物語のローマ世界はどうなっていったのだろうというのが気になるところではあるけれども…
第2部はさすがにもうないんだろうなぁ。

tag : ピルグリム・イェーガー 冲方丁 伊藤真美 ヤングキングアワーズ

【ラノベ】テスタメントシュピーゲル 1

テスタメントシュピーゲル TESTAMENT SPIEGEL 1
冲方丁
イラスト:島田フミカネ
角川スニーカー文庫
テスタメントシュピーゲル 1 (角川スニーカー文庫)テスタメントシュピーゲル 1 (角川スニーカー文庫)
(2009/11/28)
冲方 丁

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さよなら、ミリオポリス。
あたしは今日、死ぬことにしたよ。

テスタメントシュピーゲル 1』本文より

これが冲方丁の最後の『ライトノベル』。
オイレン&スプライトシュピーゲルの最終章。

そうか。
これが最後か。
いや、それ以前にこれが「ライト」か。
気軽に読めるものなのか。
恐ろしく重厚で濃厚なSFじゃあないか。

そもそも小説、か。
文章で語っていることは確か。
しかし、この文体は異質。
オイレンやスプライトの時よりもさらにさらに。
マルドゥックの時のような時を刻む一描写一描写を的確に、そして人物のさらに深遠へと誘ってくれるかのような表現に酔いしれた。


物語もウキウキと死地へ赴くようなステップを踏み、ラストへと向かって全速力で駆け抜けていっている。
せめて彼女たちにほんの少しでも幸せがあることを祈りつつ次を待ちたいもの。

tag : テスタメントシュピーゲル 冲方丁 島田フミカネ 角川スニーカー文庫

【ラノベ】微睡みのセフィロト

微睡みのセフィロト
Suspended Sephiroth

冲方丁
表紙イラスト:伊藤真美
徳間デュアル文庫
微睡みのセフィロト (徳間デュアル文庫)微睡みのセフィロト (徳間デュアル文庫)
(2002/04)
冲方 丁

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涙が溢れた。泣きながらも、どこかで心は晴れていた。許すという言葉が、少しずつ胸中に広がり、やがて、あの花の香りとともに、再びパットの心を満たすようだった。

微睡みのセフィロト』本文より

冲方丁の中篇『微睡みのセフィロト』を再読。
イラストはピルグリム・イェーガーの伊藤真美


デュアルノヴェラという徳間デュアル文庫のワンコイン文庫。
なので短め。

だが、これに関しては短い物語だけれどもものすごく濃い。
確かにデュアル文庫という性質上いわゆるライトノベルを卒業したような人向けのものだが、ここまで作りこまれた世界観の中篇だとある意味引く(笑

ハードなSF。
それでいてハードボイルドを貫いている。

なんというかSF初心者お断りな雰囲気すら漂っている。
それだけ世界観がしっかりしすぎているとでも言うんだろうか。

読者が世界へ入る込むための導入部分なんてなく最初から最後までフルスロットル。
そんな感じのSFです。


まず第6感のようなものを持つ超感覚者たちといわゆる人間との戦いがあった。
戦いが終結し、再び両者は歩み寄るが亀裂は当然残る。
家族を殺された人間の捜査官と感覚を持つ少女が政府の要人を救う作戦に参加する。
その過程で互いの不信を信頼に変えていき、真相に近づくにつれ捜査官は家族を殺されたときの真相も知ることになる。



主人公の捜査官がハードボイルドを貫いているがゆえに、ラストの一気に感情を溢れさせる描写がスゴイ。
うまいこと読み手がどうクライマックスにたどり着くかを予想していたかのような書き方だよなぁ…

あとは後の冲方丁が描く戦闘シーンの前身のようなものも感じられる戦闘描写も見ものかと思います。

tag : 微睡みのセフィロト 冲方丁 伊藤真美 徳間デュアル文庫

【ラノベ】オイレンシュピーゲル 肆

オイレンシュピーゲル EULEN SPIEGEL 肆
Wag The Dog

冲方丁
イラスト:白亜右月
角川スニーカー文庫
オイレンシュピーゲル肆  Wag The Dog (角川スニーカー文庫 200-4)オイレンシュピーゲル肆 Wag The Dog (角川スニーカー文庫 200-4)
(2008/05/01)
冲方 丁

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人生は暗闇の中の光だ。無名の死者たちの墓標は光に満ちている。殉教者なんて言葉を使うまでもない。あらゆる国のあらゆる無名の人々の生涯こそ、真に尊重すべきものだ

オイレンシュピーゲル 肆』本文より

オイレンシュピーゲル』4巻。
スプライトシュピーゲル』とこれまで以上に密接に関わるエピソードを収録。

基本的に『スプライトシュピーゲル』とほぼ感想は同じなんだけれども、やはり国の成り立ち・民族間の争いの根本などをしっかり描いたところは素晴らしいと思う。
それこそ未来ではなく「今もなお」続いていることそのものでもあるし。

1巻からあった涼月の言葉「なーんか世界とか救いてぇ」というフレーズも急に意味を帯びだしたいへん楽しみでございます(笑

さてなんとなくこのオイレンシュピーゲルの行く先が理想的な国家であり・世界を目指しているような感じがしてきましたが、そうはなかなかいかないのが現実問題。
世界には国家があり、民族がある。
その間での平和は果たして成立するのか。

無垢な少女たちが気づいた現実と理想の世界のギャップを理解しながら、どう世界と関わっていくかに非常に期待です。

tag : オイレンシュピーゲル 冲方丁 白亜右月 角川スニーカー文庫 スプライトシュピーゲル

【ラノベ】スプライトシュピーゲル 4

スプライトシュピーゲル SPRITE SPIEGEL 4
テンペスト

冲方丁
イラスト:はいむらきよたか
富士見ファンタジア文庫
ドラゴンマガジン連載
スプライトシュピーゲルIV  テンペスト (富士見ファンタジア文庫 136-11)スプライトシュピーゲルIV テンペスト (富士見ファンタジア文庫 136-11)
(2008/04/19)
冲方 丁

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まさにこれが自分のやるべきことだった。嫌なことだらけのこの都市で――守るべき人物を守るために――これほど大勢の命を奪った。この自分が――破綻した国家で貧窮にあえぐ弱者である民を。

スプライトシュピーゲル 4』本文より

富士見ファンタジア史上最厚の本となった『スプライトシュピーゲル』。
カオスレギオンの時も相当な厚さだったけれども悠々とそれらをも超えていったな。

4巻目ということでクライマックスに向けての序章という感じだろうか。
そしてこれまで以上にこの仮想世界にどんどん「現実」が入り込んできた気がする。

軍事力を持つとはどういうことか。
いま世界で起きている問題は何故起こっているのか。

確かにフィクションゆえに架空のことも多いけれども、そこに含まれる実際に起きている事件を織り込んでいく手法にドキドキした。
ラノベでこのネタは大丈夫なのか。

いやいや、こういうものもあってしかるべきだ。
ダルフール問題やダイヤの5つ目のCがもたらすブラッド・ダイヤモンドの問題などなど。

他にもTRPGという手法を使って、いままさに起きはじめている危機や今までに歴史が行ってきた間違いなどをキャラクターたちが擬似的に遊んでみたりするなどのそれこそ「遊び」の要素も卓越してるよなぁ。

ライトノベルという枠で囲んでしまうには非常に惜しい作品です。
むしろ富士見以外でもSFとしてそのうち展開してほしいなぁ。

tag : スプライトシュピーゲル 冲方丁 はいむらきよたか 富士見ファンタジア文庫 ドラゴンマガジン

【FT】ばいばい、アース 4

ばいばい、アース Ⅳ 今ここに在る者
冲方丁
表紙イラスト:キム・ヒョンテ
角川文庫
ばいばい、アース〈4〉今ここに在る者 (角川文庫)ばいばい、アース〈4〉今ここに在る者 (角川文庫)
(2008/02)
冲方 丁

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「私は、自由になりたい。自分の由縁を知りたいんだ。もっと別の場所でも、自分を試みてみたい。そうしなきゃ、判らないことが多すぎるから」

ばいばい、アースⅣ』本文より

ばいばい、アース」最終巻。
解説は大森望。

自分の存在意義を探し続けたファンタジー…これをファンタジーといっていいのか。
いや、なんかそもそもこれをジャンル分けすること事態ができないような気がする。
ファンタジーのような要素はたくさんあるけれども、SFと言っても過言じゃない。
なんなんだろうこの小説。
とにかく世界観の壮大さがすさまじいものであったと思う。


剣で音楽を奏でるかのように戦い、フランス語もドイツ語もラテン語も入り混じる言語が飛び交う世界。
それはさながら、言語が混同されルーツが辿れなくなった未来の世界のようでもあり、幻想的な世界のような気がする。


なんとも最初から最後まで「言葉」そのものの持つ力というものにこだわり抜いたそんな本だったように思った。

この本を語るにふさわしい言葉が見つからないのだけれども、とにかくこの物語の世界に入っていけた後はもう圧倒され続けた(笑

tag : ばいばい、アース 冲方丁 キム・ヒョンテ 角川文庫

【FT】ばいばい、アース 3

ばいばい、アース Ⅲ 爪先立ちて望みしは
冲方丁
表紙イラスト:キム・ヒョンテ
角川文庫
ばいばい、アース〈3〉爪先立ちて望みしは (角川文庫)ばいばい、アース〈3〉爪先立ちて望みしは (角川文庫)
(2007/11)
冲方 丁

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「彼女たちはここに来て、これまでとは違う力を得ようとしているんだ。僕らとは次元の違った力を。彼女が僕らの範疇から外れるとき、きっと僕らの道にも波乱が起こる……」

ばいばい、アース 3』本文より引用

ばいばい、アース」3冊目。
起承転結でいうならまさしく「転」。

1~2巻がこの世界の説明やラブラック・ベルの成長について描かれていたとしたら、この3巻ではラブラック・ベルが自らどんどん変化していき「型」から離れていこうとするような感じがする。

まるで自分のルーツ探しから、自分自身を創っていっているかのような…

続きをーー、というところで終わってたけど最終巻1ヶ月延びたらしい。
ラストが見られるのは2008年1月末になるみたい。

tag : 冲方丁 ばいばい、アース 角川文庫 キム・ヒョンテ

【FT】ばいばい、アース 2

ばいばい、アース Ⅱ 懐疑者と鍵
冲方丁
表紙イラスト:キム・ヒョンテ
角川文庫
ばいばい、アース 2 懐疑者と鍵 (角川文庫 (う20-2))ばいばい、アース 2 懐疑者と鍵 (角川文庫 (う20-2))
(2007/10)
冲方 丁

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「誰も助けてくれないじゃないか。なんで……一人ぐらい私を支えてくれたっていいじゃないか。私を救ってくれたっていいじゃないか。どうして私はこんなにも一人なんだよ。どうしていつまでたっても私は、この―」

ばいばい、アース 2』本文より引用

冲方丁の『ばいばい、アース』全4巻の2冊目。

のっぺらぼうのラブラック=ベル。
彼女は相棒の剣と共に自分のルーツを探すために旅へ出て、様々な人や思想や理念と出会っては別れを繰り返す。


自らの生き方を剣に託し、剣もそれに答える。
そんな世界で剣と共に自分の行き方を探していく。

1巻で序章も終わり、2巻では色んな人の生き様が見られた。
そして彼らと関わることで、成長していくベル。

自分のルーツを知るためにたった一人で旅をして…
けれども決して本当に一人というわけではなかった。

なんだろうな。
ファンタジーの話であるのに、まさに現実にある誰かの人生そのものを見ているかのようだ。

特にのっぺらぼうで、傍から見るととても魅力的なのに自分に特徴がないように思っているベルだからこそ、この旅が自分自身を見つける=自分を自分として認識するための旅であるようだ。
ルーツを見つけるっていうのはそういうものなのかもな……


人生なんていう、どこまでも続く自分探しの旅を続けているのは読んでる側も同じ。
だからだろうか。
随分いろんなところで共感できた気がする。

tag : ばいばい、アース 冲方丁 角川文庫 キム・ヒョンテ

【ラノベ】スプライトシュピーゲル 3

スプライトシュピーゲル SPRITE SPIEGEL 3
いかづちの日と自由の朝

冲方丁
イラスト:はいむらきよたか
富士見ファンタジア文庫
ドラゴンマガジン連載
スプライトシュピーゲル III いかづちの日と自由の朝 (3) (富士見ファンタジア文庫 136-10)スプライトシュピーゲル III いかづちの日と自由の朝 (3) (富士見ファンタジア文庫 136-10)
(2007/11/01)
冲方 丁

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「複数の高官暗殺。大型兵器の都市流入。広範囲にわたる襲撃、ウィルスに電子テロ計画か……」
「その全てが二十四時間以内に決行される可能性があります、エドワルト州知事様」

スプライトシュピーゲル 3』本文より引用

冲方丁の『スプライトシュピーゲル』3巻。

MSSが今回活躍するのは対テロの二十四時間におよぶ戦い。
次から次へと起こるテロ攻撃を防ぎながら、事の真相=犯人を追い求めるという内容。

しかも1時間ずつ物語は進行していく…ってTVドラマの『24-Twenty Four-』かよっ(笑

信頼と裏切り、誰が信用できて、誰が疑わしいのか。
テロと戦いながらという緊張感を保ちつつも、登場人物同士のドラマもかなり見ものになっていた巻だった。

tag : スプライトシュピーゲル 冲方丁 はいむらきよたか 富士見ファンタジア文庫 ドラゴンマガジン

【ラノベ】オイレンシュピーゲル 3

オイレンシュピーゲル EULEN SPIEGEL 参
Blue Murder

冲方丁
イラスト:白亜右月
角川スニーカー文庫
Theスニーカー連載
オイレンシュピーゲル 参 Blue Murder (3) (角川スニーカー文庫 200-3)オイレンシュピーゲル 参 Blue Murder (3) (角川スニーカー文庫 200-3)
(2007/11/01)
冲方 丁

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「いったん葬った願いを、俺のような男が思い出すってのは、つまり別の人生もあったんじゃないかって思い始めることでな。それが良き人生への扉となるか、それとも地獄の蓋が開くことになるかは、神のぞ知るところさ」

オイレンシュピーゲル 3』本文より引用

冲方丁の『オイレンシュピーゲル』3巻。
表紙は陽炎。

3巻はオイレンのMPD3人娘のそれぞれがメインの話が収録。
特にラストの涼月の話は、物語の核へと至る引き金となった話とも言えるんじゃないでしょうか(゜Д、゜)

特甲児童という特殊な存在に焦点を色んな視点から当てながら物語が進み、そして驚愕のラストが待っていたわけですが、真実に気づいた彼女らがどう考え行動していくかというのが今後の展開なんだろうと思う。


いよいよ面白くなってきたとしか言えないな(笑


それにしても冲方丁の本が一気に3冊もでるとはヽ(´ー`)ノ
オイレンシュピーゲル」に「スプライトシュピーゲル」、そして「ばいばい、アース」の2巻。
週末は冲方丁の本だけでも十分に楽しめそうだ。

tag : 冲方丁 白亜右月 角川スニーカー文庫 Theスニーカー オイレンシュピーゲル

【FT】ばいばい、アース Ⅰ

ばいばい、アース Ⅰ 理由の少女
冲方丁
表紙イラスト:キム・ヒョンテ
角川文庫
ばいばい、アース 1 (1) (角川文庫 う 20-1) ばいばい、アース 1 (1) (角川文庫 う 20-1)
冲方 丁 (2007/09/25)
角川書店

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「私が何者で、何処から来て、何処へ行けばいいのか、知りたいんだ」

ばいばい、アースⅠ』本文より引用


冲方丁の『ばいばい、アース』4分冊で刊行開始。
2000年に出た超極厚の本がようやく文庫に。

まるで他人を拒否しているような分厚さと値段と濃厚さゆえになかなか文庫化もされなかったんだろうな。

マルドゥック以前の本だったし、まだこの頃は冲方丁はまったく名前が売れてなかった時期だったし。


人がみな自分だけの武器を持ち、人と武器がハーモニーを奏でなるかのようにになって戦う世界。
主人公の特徴を持たない少女は自らのルーツを知るために戦い続ける。

まるでその武器という個性を持っているようで、戦っている様がいわゆる人生そのもののよう。


台詞の一つ一つをとってみても登場人物の生き様を表していると言っても過言じゃない。
なんか台詞が重いんだよな。
だから、あまりに個性的すぎる世界が出来上がっている。

独特な世界観の中に登場人物がいるんじゃなくて、登場人物たちが独特の世界を作り上げているとでもいうんだろうか。


1巻の中身はまだまだプロローグ的。
2巻からはまだまだおもしろくなりそう。

tag : 冲方丁 ばいばい、アース 角川文庫 キム・ヒョンテ

【ラノベ】スプライトシュピーゲル 2

スプライトシュピーゲル SPRITE SPIEGEL 2
Seven Angels Coming

冲方丁
イラスト:はいむらきよたか
富士見ファンタジア文庫
スプライトシュピーゲル 2 (2) (富士見ファンタジア文庫 136-9) スプライトシュピーゲル 2 (2) (富士見ファンタジア文庫 136-9)
冲方 丁 (2007/07)
富士見書房

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神話なんてどれも似たようなもんだ。何か願えば、すぐ報いを受ける。盲目になる、歩けなくなる、閉じ込められる、殺される。まるで何かを願うこと自体、悪だというようじゃないか?
スプライトシュピーゲル2』本文より。



オイレンシュピーゲル』と対をなす『スプライトシュピーゲル』。
違う人物、違う機関だけれども「2巻」は同じ事件を扱っている。

だいたいの感想は『オイレンシュピーゲル』の2巻と同じ。
オイレンシュピーゲルの記事


今回のスプライトから感じたのは「ナショナリズム」かな、と。

事件を起こしたテロリストたちがなくした国。
もう存在しない。
しかし、亡国こそが自分の国であるというナショナリズムを持って行動していた。

普段、日本で生活している限りではナショナリズムを感じることはないだけにちょっと心が揺らいだ。
この物語の中では日本はすでに亡国であるから、かな。



聖書からの引用や人種問題とかを堂々と出してくるあたり、やっぱりこのシリーズは好み。

tag : 冲方丁 スプライトシュピーゲル オイレンシュピーゲル 富士見ファンタジア文庫 はいむらきよたか

【ラノベ】オイレンシュピーゲル 弐

オイレンシュピーゲル EULEN SPIEGEL 弐
FRAGILE!! / 壊れもの注意!!

冲方丁
イラスト:白亜右月
角川スニーカー文庫
オイレンシュピーゲル弐 FRAGILE!!/壊れもの注意!!(2) (角川スニーカー文庫 200-2)オイレンシュピーゲル弐 FRAGILE!!/壊れもの注意!!(2) (角川スニーカー文庫 200-2)
(2007/05)
冲方 丁

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「要するに、テロ屋どもが何をしでかそうと、連中の母国に制裁を加えることも出来ない。抑止カードをあらかじめ喪失した、それだけ敵の退路もない、没交渉に等しい捜査だ。」

死に至る悪ふざけ=『オイレンシュピーゲル』2巻。


テロや犯罪が多発するミリオポリス。
そんな現場で犯罪者を摘発するために働く少女たち。
彼女らの今度の相手は7つのテログループ。
相手はオーストリアに核をぶち込もうとしている奴ら。



さて、これはライトノベルレーベルから出すべき小説なのだろうか。
舞台は2016年。
近未来で体を改造された少女たちがテロや犯罪者相手に戦う痛快ノベルである。
…だが、

世界の様相などを見る限り決して近未来ってのじゃないよな(苦笑
現代と過去が入り混じってる気がする。


ある老人が舞台のミリオポリスを「ソドムとゴモラ」に例えたようにどうしようも救いのない世界である。
浄化しか世界に地球には救いはないと考えたのも分からなくはない。
近未来の保障制度、労働の基準。
どれを考えてみてもどこか破滅的なのである。

確かにケルベロスの三人娘は正論を謳っているし、彼女らの上官の判断も分からなくはない。
けれども、この世界どう考えてもおかしい。
彼女らの視点を通して世界を語っているのを客観的に見てるからかもしれないけど。


そしてこれが現代社会を軸に未来がこうなる危険とかもあるよね、と言っているような気がしなくもない(笑
特甲児童を徴兵なんて単語におきかえると、ね(笑




来月に姉妹篇の「スプライトシュピーゲル」2巻が出るようなので楽しみ。
オイレンシュピーゲルの中でもスプライトのキャラクターが名前までは出ていないものの明らかに活躍してたし。

オイレンシュピーゲル 2 (2) オイレンシュピーゲル 2 (2)
冲方 丁 (2007/05)
角川書店

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