FC2ブログ

【ミステリ】とらわれびと

メフィスト賞→浦賀和宏
04 /10 2008
とらわれびと
ASYLUM

浦賀和宏
講談社ノベルス
とらわれびと―ASYLUM (講談社ノベルス)とらわれびと―ASYLUM (講談社ノベルス)
(1999/10)
浦賀 和宏

商品詳細を見る

「ずっと子供の頃から抑圧されていた。女の子の服を着たかった、化粧もしたかった、でもそんなことを男の自分がやるのは変なことだってことも、十分理解しているんですよ、頭の中では。だから必死に自制した。でも――僕ももう社会人なんだから、好きなことやってもいいなって思い始めたんですよ」

とらわれびと』本文より

安藤シリーズ4作目。
こっから読むのはまったくお薦めできないのでしっかり順番に読んでからたどり着きましょう(笑

随分時間が空いたけれども安藤シリーズ再読、と。

表面的には男女のセックスとジェンダーのことを語っているような作品に思えるけれども、さらに根源的な人間の深遠まで覗いている作品のような気がしてならない。


子供を孕んだ男性が次々に失踪する事件が発生する。
その男性たちはジェンダー的には女性であるということが共通点だった。
また腹をかき回され惨殺されるという事件も同時に起こる。
それをシリーズの登場人物である金田、そして3作目から登場した安藤の彼女である留美が事件に関わっていく。

それが今回の話のメインとなる事件でもあるのだけれども、1作目の伏線である安藤直樹の父親の自殺も事件に絡み、また安藤の友人の金田がおおきくシリーズのダークサイドの中へと踏み込んでいく。
さまざまな登場人物の狂気に触れながら怒涛のラストへと流れ込んでいく様は圧巻。

これまでのシリーズでも人間のタブーに抵触しながら人間の歪んだ愛情を描いてきたシリーズだけれども、中でも今回は実になにかの境界線を突破したかのような出来に感じる。


…というふうに4冊目を読んだときは思うわけだけれども、やっぱり5冊目のほうがキてるよなぁと思ったり6冊目では驚愕過ぎる事実に唖然としたり(笑

4冊目でも人間の昏い感情をひしひしと感じれます。
この感じこそがやっぱり安藤シリーズだよな(笑
いつか『透明人間』から先の話も書いてくれないだろうか。


表紙の男性器と乳首と腹という背景に、何者かが閉じ込められてるというのは実に見事にこの本を表してるよなぁ。
男性という中に閉じ込められたパーソナリティ。
それが核でありきっかけでもある。
その閉じ込められているのが副題でもある「ASYLUM」。
精神病棟なんて使われ方をするのが一般的だけれども…

確かに狂気が解放されるさまとかにはゾクっとした。


あと、ミステリでなくやはり1作目から貫かれている「探偵小説」をまったくしない反ミステリという体裁を取り続けている姿勢には感心。
もうあっぱれである。
ミステリのようにラストであらゆる伏線が回収され謎が解かれる。
しかしそれは読者には解けることはない。
そしてシリーズの伏線がさらに増えていく(笑

もう今回二つのラインで話が進んでいくことに対しての結末っていうのはものすごく好みな展開だ。


次は『記号を食う魔女』。
あの作品でたぶん「浦賀和宏らしさ」っていうのが確立された気がしてならない(笑

コメント

非公開コメント

∀ki(あき)

自由に生きてます。
色々読んだり見たりしてます。

リンクやトラックバックは自由にどうぞ。