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【小説】エナメルを塗った魂の比重

メフィスト賞→佐藤友哉
02 /04 2009
エナメルを塗った魂の比重 鏡陵子ときせかえ密室
佐藤友哉
表紙イラスト:笹井一個
講談社ノベルス
エナメルを塗った魂の比重―鏡稜子ときせかえ密室 (講談社ノベルス)エナメルを塗った魂の比重―鏡稜子ときせかえ密室 (講談社ノベルス)
(2001/12)
佐藤 友哉

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香取羽美からナコルルへの移行。
一言で云えば、それは逃げです。逃避です。
私は逃げている。その自覚はもちろんあります。
でも別、別に良いじゃありませんか。逃避を悪と規定する、その一方的な勘定こそが悪ではないのか?

エナメルを塗った魂の比重』本文より

久々にノベルスの新装版を再読。

佐藤友哉の鏡家サーガ2作目『エナメルを塗った魂の比重』。
2作目は鏡陵子が主役、というわけではないけど彼女が大きな役目を果たすのは確か。

人肉しか食べられなくなった少女や、コスプレによって自己を別人に投影することに自分を費やす少女たちが登場する近作。
また、自分より下位における人をいじめるという構図によって安心するクラスというものも登場。

そのすべてが自分という存在に対する不安や不満を表しているかのよう。
そう、いわばまるで「これが青春」とでも云わんばかりに。

鏡家2作目ではこういった不安定さの描写がたまらないです。
つきつめれば自分ってなによ、ってな事を主張しているかのような。

そういった若さゆえの不安定さっていう主題とともに、もうひとつの物語の主軸となるのが「予言」。
またかよ。
1作目もそうだったじゃないか、というのもありますが、それはそれ。
またまた予想外の方向へと行きやがります。

閉ざされた一部の世界における未来を予知する「予言」なんていう大層な代物。
この予言のもとに登場人物たちの奇怪な行動が終結し、いい意味で馬鹿げた終結を迎えていく。

やっぱ鏡家はこうでなきゃ。
1作目でも主人公がいっていた「狂える鏡家」というものをまさに表しているかのよう(笑
そういうところもサリンジャーの「狂えるグラース家」を描いたグラースサーガをしっかり意識してるよなぁ。


あらゆる不安定さがこの小説独特の雰囲気を醸し出していく。
青春小説とはまさにこういうものって言っていいとすら思う。
青春なんて美しくなんてない、っていう意味で。

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∀ki(あき)

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