The World Is Made Out Of Entertainment
本や映画・ドラマ・アニメの感想などを書いてる日記blog。
【ミステリ】チーム・バチスタの栄光 下
海堂尊
宝島社文庫
![]() | チーム・バチスタの栄光(下) 「このミス」大賞シリーズ [宝島社文庫] (宝島社文庫 (600)) (2007/11/10) 海堂 尊 商品詳細を見る |
スネイル(かたつむり)にシーアネモネ(いそぎんちゃく)。白鳥の話は知性の地平線を越えて大空に旅立ってしまった。俺はひとり置き去りにされた。
『チーム・バチスタの栄光 下』本文より引用
『チーム・バチスタの栄光』下巻。
第2章からラストまでを収録。
あまりに変態的な厚生労働省の役人「白鳥」が登場。
田口とともに事件の真相を暴こうとするのだが。
これがまたあまりに変人。
聞き取りに必要なパッシブ・フェーズとアクティブ・フェーズってなんだよw
もはや何がやりたいのか全然わかんねーよ。
言うなれば奥田英朗の伊良部医師よりおかしいよっ、この白鳥(笑
予想外の規格の人物に苦笑しながら読み進めていくと、前半のマジメで謎がさっぱり浮かび上がらない展開と後半の奇天烈な展開に整合性が見えてきだして、真相へ。
事件の謎や現代にある医療現場の裏に潜む問題。
それらを暴き出して、かつ爽やかに幕を閉じる展開にはもはや拍手をしたいくらい。
見事なまでのエンターテイメント小説だった。
あの白鳥役を映画では阿部寛か…
ものすごく合いそうな感じだ。
【映画 チーム・バチスタの栄光】
http://www.team-b.jp/index.html
タグ : チーム・バチスタの栄光 海堂尊 宝島社文庫
【ミステリ】チーム・バチスタの栄光 上
海堂尊
宝島社文庫
![]() | チーム・バチスタの栄光(上) 「このミス」大賞シリーズ [宝島社文庫] (宝島社文庫 599) (2007/11/10) 海堂 尊 商品詳細を見る |
「私は始めからずっと見ていましたが、おかしな点には気づきませんでした。どう見ても単なる医療ミスではなさそうです。何かが起こっている。それが何かわかりません。何が何だかさっぱりわからないんです」
『チーム・バチスタの栄光 上』本文より引用
第4回「このミステリーがすごい!」の大賞作『チーム・バチスタの栄光』。
2008年2月に映画化。
チーム・バチスタと呼ばれるバチスタ手術を奇跡の成功率でなし遂げる天才チーム。
しかし、ここのところ連続して失敗を繰り返している。
医療ミスなのか殺人なのか、それとも。
それを突き止めるために院長先生はひとりの医師を派遣する。
なんとも魅力的なテーマな小説。
ミスか殺人か。
上巻だけ読み終わったけれども、なにも分からない。
伏線はたくさん張られているはずなんだけれども、一体なにが問題でこの事件に発展しているのかが謎。
どうも下巻を読まないことにはなにも言えそうにない。
フィクションなのは分かっているけれども、子供に対する心臓外科手術の背景や紛争地域の子供に対する手術に対する各省庁のどたばたっぷりは色々考えさせられる。
実際に小説内のようなことが起こったら世間はどう動くんだろうかとか考えてしまう。
それくらいに「実際」の医療の現場はどうなのか知らないんだよなぁ。
ラストに第2部の最初の1章分を収録するなら下巻に2部以降を収録して欲しかった。
それよりもそんなにページ数ないんだから上下に分けなくても…と思った。
文庫版の作りにちょっとげんなり。
タグ : チーム・バチスタの栄光 海堂尊 宝島社文庫 このミステリーがすごい!
【ミステリ】安達ヶ原の鬼密室
歌野晶午
講談社文庫
![]() | 安達ヶ原の鬼密室 (講談社文庫) (2003/03) 歌野 晶午 商品詳細を見る |
「いえ、そうではないのです。もしも、万が一ですよ、真相がわからなかった場合には、適当なお話を作っていただきたいのです」
『安達ヶ原の鬼密室』本文より引用
葉桜の歌野晶午の『安達ヶ原の鬼密室』。
昭和20年代に起きた「鬼」が起こしたという一晩で7人が殺された事件などいくつかの話をまとめた構成の『安達ヶ原の鬼密室』。
ある種、ひとつのまとまりはあるんだけども、1冊の本としてこれはどうかな…、と。
最初の事件が解決される直前で次の話に移行し、その話のラストが分かるのはずっと後っていうのはな…
確かに事件自体がとても魅力的なものだから、続きがどうなるんだよーーというふうにはなるんだけれども、いざ解決編を読むとところどころ忘れていたりしたのが残念。
一気に一冊読めるような時間がある時に読めたらとても楽しめたとは思うんだけども。
【ミステリ】遊戯の終わり
太田忠司
表紙イラスト:佐々木悟郎
JOY NOVELS
週刊小説連載
![]() | 遊戯(ゲーム)の終わり―探偵藤森涼子の事件簿 (ジョイ・ノベルス) (2000/12) 太田 忠司 商品詳細を見る |
「ええ、不遜な考え方です。他人の一生をちょっとした関与で変えられるなんて、思うべきではない」
『遊戯の終わり』本文より引用
一宮所長のこの言葉が心に残った。
それを分かっていながらも人間って無駄にいろんなことを心に残しすぎるからしんどい思いをするんだろうな…
太田忠司の藤森涼子シリーズ『遊戯の終わり』。
ハルキ文庫で出た分はたぶん全て買ってたのは分かってるんだが、果たしてこれが読んだことあるのかどうか疑問に思いつつ買ったんだけれども、読んだことがないものだった。
ってか藤森涼子と刑事阿南が微妙に頭の中でごっちゃになってた(笑
自分なりの正義を持っているがために事件に執着してしまい、結果的に人の心に潜む醜い部分までたどり着いてしまう。
そんな短編が6つ。
『黄昏という名の劇場』しかり、『狩野俊介』シリーズもそうだと思うんだけれども心に残るイヤな感じ、いいかえれば一種の悪夢っぽいものが読めるのを期待して太田忠司の本を読んでる。
この本もなんとなくで買ったけれどもそういう感じがすごく出てた。
悪夢なのに事件はすべて現実的なものばかり。
ファンタジーとかホラーという要素があるわけでもなく。
この謎の続きが知りたいと思って読み続ける→ラストにちょっと心にげんなり来る展開。
決して楽しいと思える本ではないんだけれども人の心の闇にライトに触れられる本でした。
【ミステリ】犯人に告ぐ 下
雫井脩介
双葉文庫
![]() | 犯人に告ぐ 下 (2) (双葉文庫 し 29-2) (2007/09/13) 雫井 脩介 商品詳細を見る |
「でもこの世界、嘘をついたり人を出し抜いたりしなきゃいけないことも多い。あなたは無理してそれをやってる」
『犯人に告ぐ 下』本文より引用
巻島は肩をすくめる。
「嘘が苦手なだけじゃないさ……」吐息を挿んでから呟く。「本心をさらけ出すのも苦手だ」
雫井脩介の『犯人に告ぐ』下巻。
主人公の巻島がハードボイルドすぎである。
もはやカッコいいの一言に尽きる。
昔マスコミによって地位を失い、それでも這い上がり今度はマスコミを利用し見えざる犯人とニュース番組を通じて対決する。
敵は見えない犯人だけじゃなく、警察の内部も、マスコミや民意ですら敵になりうる。
そしてそれらは決して目に見える形で現れるわけではない。
そんな「敵」と戦う姿には惚れ惚れできた。
ラストも「こういうラストが見たかった!」という展開だったので満足。
映画版はどうやら豊川悦司が主役とのこと。
ということは主人公の設定をある程度変えてるんだろな。
それでも巻島の背負うものは変わらないだろうけど。
【映画 犯人に告ぐ】
http://www.hannin.jp/
【ミステリ】犯人に告ぐ 上
雫井脩介
双葉文庫
![]() | 犯人に告ぐ 上 (1) (双葉文庫 し 29-1) (2007/09/13) 雫井 脩介 商品詳細を見る |
刑事を続けていると、自分が追っているはずの犯人に、ふと、そこはかとない恐怖心を抱くことがある。
『犯人に告ぐ 上』本文より引用
たいていの場合、それは相手の姿が見えないからだ。
「04ミステリーベスト10」や「04最高に面白い本」で1位を獲得した『犯人に告ぐ』。
過去に誘拐事件で大失態をし、神奈川県警の権威を失墜させた刑事。
だが、その刑事はそれから着実に成果を上げ、再び表舞台に立ち、残忍で挑戦的で頭の切れる犯人と対峙することになる。
マスコミを使い、自らの存在を世に示す犯人と、同じくマスコミを使い犯人を追い詰める主役として劇場型捜査をはじめた警察。
その戦いのはじまりまでが前半。
プロローグが長い長い。
けれども、そのプロローグにさえ戦慄してしまった。
主人公の刑事がものすごくカッコイイ。
背負っているものがあまりに重い。
それでも自分の信念を貫く人なのである。
もはやハードボイルド。
見えない犯人を相手にする警察の描写も鬼気迫るものがあった。
過去の誘拐事件で誰もが全力を尽くし捜査したにも関わらず、マスコミによって徹底的なまでにに権威を失墜させられた警察と一人の刑事。
その刑事の熱意に反比例するかのように報われない現実。
しかしそこから予想もつかないような努力をしたであろう末に這い上がり、再び現場の第一線へ戻った時には感極まったような感じがした。
ただでさえ刑事の背景を丁寧に描いているだけに。
下巻は近いうちに。
【ミステリ】龍は眠る
宮部みゆき
新潮文庫
![]() | 龍は眠る (新潮文庫) 宮部 みゆき (1995/01) 新潮社 この商品の詳細を見る |
「高坂さん、超常能力者って言葉を聞いたことがありますか?」
『龍は眠る』本文より引用
宮部みゆきの『龍は眠る』。
第四十五回日本推理作家協会賞の長篇部門受賞作。
自転車がパンクし立ち往生している少年を車で拾ったところ彼は「自分は超能力者なんだ」と言う。
宮部みゆきが書いた本で内容が超能力者か。
なんかそれだけで「宮部みゆき」らしさを感じてしまうのはエッセイとかの読みすぎか(笑
超能力者は実在するのかどうかというところから始まり、超能力を持ってしまったがゆえの苦悩を遠巻きから感じてだんだんと核心へと近づいていくような内容。
他人に絶対話せないようなことは誰にでもあると思う。
この話では彼らの超能力そのもの。
その能力を持ったがゆえの苦悩を読者は見てしまって、その悩みを真摯に聞いてあげるような感覚で読んでしまった。
だからこの本に共感できるという人が多いんじゃないかなーって思った。
逆に感情移入しづらかったら、この本はものすごく楽しくないものであるような気もする(笑
【ミステリ】R.P.G.
宮部みゆき
集英社文庫
![]() | R.P.G. (集英社文庫) 宮部 みゆき (2001/08) 集英社 この商品の詳細を見る |
ロール・プレーイング(Role-playing)
『R.P.G.』本文より引用
実際の場面を想定し、さまざまな役割を演じさせて、問題の解決法を会得させる学習法。役割実演法。
はじめて宮部みゆきの本を読んだ。
まずは「R.P.G.」から(笑
ゲーム好きの宮部みゆきの本でこのタイトルなら〜と思ったらいわゆるRPGなんて全然出てこないし。
だけれども、このタイトルからしてこの本にしかけられたトリックがはじまっているような気がしてならない。
あらすじすら紹介するのがちょっとためらわれるような内容だった。
普通ならこれは短編に用いられるようなネタなんだろうけれども、中篇〜長編くらいの長さにすることで、余計に騙されることで驚けたのかも。
会話のシーンなどがふんだんに使われることで、どんどん誤った方向へ目が向いてしまったような感じだ(笑
以下でちょっとネタバレあり
【ミステリ】OUT
桐野夏生
講談社文庫
![]() | OUT 上 講談社文庫 き 32-3 桐野 夏生 (2002/06) 講談社 この商品の詳細を見る |
「物?人間じゃない? 何言ってるんだよ」
『OUT 上』本文より引用
「もとは人間だったけど、今は物なんだよ。あたしはそう考えることに決めたの」
「それは違う」ヨシエは珍しく憤った。声を震わせている。「じゃ、あたしが面倒みてるあの婆さんは何」
「生きてる人間でしょうが」
「違うよ。このダンナさんが物なら、うちの婆さんも物だよ」
第51回日本推理作家協会賞を受賞した桐野夏生の「OUT」。
夫を殺し、バラバラにして遺棄するところからはじまるといっても過言ではないクライムノベル。
殺人に至るまで主婦たちのまるで明るい未来というものとは縁がないような話が繰り広げられる。
そして、なにかが崩れるようにどんどん堕ちていく。
2002年に映画化もされた…と思う(確か
読んでて気持ちが悪くなる。
それでもページを捲らされる(笑
殺人をしたことへの背徳感。
そして警察や世間の目から来るプレッシャー。
殺人者という自覚から逃れられなくなる過程。
それに加えて夫をバラバラにした仲間たちとの関係が崩れていく様や他の登場人物がさらに下へと堕としていく。
「グロテスク」を読んだ時にも思ったけれども、なにかどの会話も生々しいんだよな…
毀れた家庭の話。
金の話。
息子娘の養育費。
親の介護。
夫との乾いた関係。
そんな生々しい要素がOUTの世界をまるで密室のようにぎゅっと濃縮させてるような気がする。
それに加えて殺人という要素が主人公たちをどんどん追い詰めていく。
実に暗澹たる気持ちにさせてくれる桐野夏生のOUTだけれども、たまに触れたくなるのもまた事実なんだよなー…。
【ミステリ】DZ
小笠原慧
角川文庫
![]() | DZ(ディーズィー) (角川文庫) 小笠原 慧 (2003/05) 角川書店 この商品の詳細を見る |
「進化は常に追い詰められた状態で起こるんだ。絶滅の危機に瀕したギリギリの状態で。」
『DZ』本文より引用
人類の進化というテーマで描かれたミステリ。
DZの意味は「dizygotic twins=二卵性双生児」。
読み終わってから考えると「あーなるほど、な」というタイトルと表紙。
解説は大森望。
第20回横溝正史賞受賞作。
細胞レベルや生命としての人間から見た世界各国での奇妙な話。
そんな話がいくつも淡々と描かれながら人類の進化というテーマへと変遷していく。
医学的な話などがいっぱい出てくるんだけれども結構すらすら読めてしまう。
あれ?
おかしいな…。
読み終わってラストに「なるほどー」とか思ったんだけどあんまり印象に残らなかった orz
【ミステリ】生首に聞いてみろ
THE GORGON'S LOOK
法月綸太郎
角川書店
KADOKAWAミステリ連載
![]() | 生首に聞いてみろ 法月 綸太郎 (2004/09) 角川書店 この商品の詳細を見る |
「疫病神め。地味な小説の取材だったんじゃないのか?」
『生首に聞いてみろ』本文より引用
「面目ない。こういう事態になるとは、予想できませんでした」
「馬鹿を言え。おまえが関わるといつもこうだ。その顔つきだと、まだほかにも何か知っていることがあるだろう。こっちが忙しくなる前に話してくれ」
やっぱり法月警視が出てきてから一気に面白くなるな(笑
二人の会話はやっぱり好きだ。
法月綸太郎シリーズ「ふたたび赤い悪夢」以来の長編。
有名な石膏直取りの彫刻家の随分久しぶりのが発表される。
しかし、彼は死んでしまい遺作となったその作品は頭部が切断されて見つかる。
なんていうかな…
もはや傑作。
誰が何のために「頭部」を切ったのか。
そしてその頭部には一体何があったのか。
そこからはじまり、最後まで大きな謎であり、この本自体のテーマでもあった。
核心に迫っては、また逆戻りし、真実へと少しずつ近づいていく。
真実に迫る過程で「関係者が触れられたくないこと」に触れてしまうこともある。
また社会的な問題にも直面し、テーマである石膏という芸術の深くまで読者は知ることになる。
そうやって知ることも楽しいし、法月綸太郎がのリアクションそのものにも共感できるのもまた楽しいもんだ。
そして描かれた内容すべてが事件の真相へと絡んでいく過程がもうたまらない。
こんなのを見せられるといくらでも新作を待つ気になれるってものである(笑
【ミステリ】99%の誘拐
岡嶋二人
講談社文庫
![]() | 99%の誘拐 (講談社文庫) 岡嶋 二人 (2004/06) 講談社 この商品の詳細を見る |
「おとうさん」
『99%の誘拐』本文より引用
言って笑ってくれたお前の顔に、すべてがむくわれた。
マスコミの報道や警察の捜査はその時から本格的に始まったが、お前が戻ってきたことで、私にとっての事件は終わった。
岡嶋二人の最後から二番目の作品『99%の誘拐』。
「この文庫がすごい!」2005年度ミステリー・エンターテイメント部門1位を獲った作品でもある。
引用は冒頭の事件から。
そして最初の誘拐事件が終わり、さらなる誘拐事件が起こるところから一気に面白くなっていった。
解説はミステリ作家の西澤保彦。
この作品への愛をいっぱい感じた(笑
鋭いんだよな、この本は。
二つ目の誘拐事件こそが岡嶋二人というユニットの腕の見せ所で、本来ミステリとして魅せるべきところが随分違ったところであまりに鮮烈に描かれている気がした。
確かに誰にも予測不可能な事件を描いているとも思える。
だからトリックを暴こうとするともしかしたらアンフェアなのかもしれない。
けれどもどうだろう?
物語の構造の切り口は相当鋭いものじゃないだろうか。
なぜこの物語で一つ目の事件が語られなければならなかったのか。
必死に息子を救い出そうとする父親と囚われの息子と犯人の冷ややかな視線と完璧な犯罪計画。
それが描かれることで19年後の二つ目の誘拐事件の真相があまりに鮮烈なものに思えた。
あまりに完璧すぎる誘拐事件。
しかし残りの1%は…
タイトルもいいよなぁ。
なぜ99%なのか。
冒頭で3億円事件が語られたのもあまりに巧すぎる演出(笑
【ミステリ】家守
歌野晶午
表紙イラスト:松本圭似子
光文社文庫
![]() | 家守 歌野 晶午 (2007/01/11) 光文社 この商品の詳細を見る |
声がする。
『家守』本文より引用
―オマエガイケナイノダ
頭の中で繰り返される。
―オマエガイケナイノダオマエガイケナイノダオマエガイケナイノダオマエガ
歌野晶午の連絡短編集『家守』。
また歌野晶午orz
いや、おもしろいからいいんだけども。
母から次々に貸される歌野晶午ものは多分これでラストのハズ。
収録作品
・人形師の家で
・家守
・埴生の宿
・鄙
・転居先不明
表紙からして('A`)
気持ち悪いような雰囲気がにじみ出ているが、よくこの本を一言で表したような感じに仕上げてきたよなぁ。
まさにこんな感じ。
家に囚われ、同じ家に住んでいても理解しあえないかのように背を向け合っているとことかすっごくいい。
収録されている短編はどれも恐ろしく不気味。
ある一点から急に日常から非日常に突き落とされたような感じがする話が多かったように思う。
本のタイトルでもある『家守』が最もよく表しているように、どれも『家』が重要な役割を果たしている。
そしてそんな『家』の住人たちはみな何らかの理由で屈折し、捻じ曲がっていく。
傍から見れば、彼らは何の変哲もない普通の人間なのだが。
そしてそんな非日常に至る人間ドラマがどれも秀逸だった。
特に最初の2編「人形師の家」や「家守」が。
【ミステリ】赤い夢の迷宮
勇嶺薫
講談社ノベルス

―わしも歳を取り、残り時間が少なくなってきている。となると、一番やりたいことをやらないとな……。
―『赤い夢の迷宮』本文より。
はやみねかおるの、いや、勇嶺薫(はやみねかおる)の『赤い夢の迷宮』。
はやみねかおるは児童ミステリ向け名義。
勇嶺薫は大人向けの名義。
ついに大人に向けた"勇嶺薫"のミステリが読めた。
仲良し7人組。
いつも一緒に遊んでいた。
彼ら7人には40代の共通の友人"OG"がいた。
彼は子供たちに遊びの楽しさを教えた。
けれども子供には教えてはいけない危険なことや知識欲や好奇心を満たすものを教えたために親たちからはOGには会ってはいけないと禁止された。
楽しかった子供時代から25年。
彼らはOGによって開かれた同窓会に参加することに。
おもしろかった。
序盤の子供たちの現在と昔とを比べられて、こうやって人って少しずつ変わっていくよなぁと思いながら読み進めてた。
小学生だった主人公たちも30代。
もう子供と呼べる年齢じゃない。
昔ながらの面影を残しつつも、それでも世間から見て誰もが言う「幸せな家庭」を演出してたり、なにかというと「昔は〜」と懐古したり。
実際彼らの言っていることも行動も分からなくはないんだけど、こう文章で見るとなんかイヤなもんだ(笑
それでも昔の仲間が集まったら昔の空気を感じて楽しかったり、少しの違和感が過ぎた年月を思い出させてくれたり。
という序盤の展開だけで引き込まれてあんな事件だもんなぁ。
「終幕」以降の展開にいい脱力感を感じられた。
???とこれはどういうことだと思いながら読み進めて「ENDING」で納得。
途中までこんなふうに終わるんかなーという期待を見事に裏切られた。
序盤から張られた伏線といい、ミスリードといいうまいこと騙された(笑
このまま勇嶺薫の名義でも次々と出してもらいたいなと思える作品でした。
![]() | 赤い夢の迷宮 勇嶺 薫 (2007/05/10) 講談社 この商品の詳細を見る |
以下ネタバレありの感想
【ミステリ】今昔続百鬼 雲
京極夏彦
本文イラスト:ふくやまけいこ
講談社ノベルス
メフィスト連載

「馬鹿は、互いが馬鹿であることを見抜くと急激に接近する。俺達はあっと云う間に意気投合した。会う度、挨拶代わりに互いの業の深さを哀れみ、病の重さを嘲り合って―それから伝説やらお化けやらの話に明け暮れた。」
京極夏彦の『今昔続百鬼』。
収録作品:
・岸涯小僧
・泥田坊
・手の目
・古庫裏婆
今回の主役は妖怪研究家の多々良先生。
いろんなトコを巡っては事件に遭い、これは妖怪のせいだーーとはしゃぎ回る話(笑
妖怪マニアってこれだ!
確かにこれまでも京極堂シリーズや巷説百物語でもたくさんの妖怪を扱ってきていた。
けれども、これは異色。
なんせ妖怪が好きすぎてたまらない研究家が主役である。
ふりまわされる主人公の沼上から見たら滑稽なことこの上ない行動の数々。
けれども、ここまで来ると愛着が沸くのも不思議な話(笑
妖怪大好きーという内容なので、実は妖怪についてかなり深くまでこの本の中で語っているんじゃないだろうか。
それでも"冒険小説"というよりはしっかりと探偵小説をやっていたりするのも不思議だ。
また、滑稽な多々良先生の奇行はふくやまけいこのイラストによってさらにおもしろくなってます。
4話目で京極堂がゲストで出てます。
京極堂出ないんだったら読まねーよ、という人にも読む価値ある…かも。
![]() | 文庫版 今昔続百鬼 雲 〈多々良先生行状記〉 京極 夏彦 (2006/06/15) 講談社 この商品の詳細を見る |
【ミステリ】世界の終わり、あるいは始まり
The End of the World, or the Beginning.
歌野晶午
角川文庫

「顔見知りのあの子が誘拐されたと知った時、
驚いたり悲しんだり哀れんだりする一方で、
わが子が狙われなくてよかったと胸をなでおろしたのは私だけではあるまい。」
歌野晶午の「世界の終わり、あるいは始まり」。
自分の子供がもしかしたら世間で騒がれている連続誘拐殺人事件の関係者かもしれない。
いや、もしかしたら犯人なのかもしれない。
子供はまだ小学生。
未来に夢を持っている我が子に限ってそんなことはありえない。
そんなショッキングな場面からはじまる物語。
あぁもう。
またか。
また歌野晶午の本だ。
下手に内容を語れるものじゃなかった。
親から見た心理はすごくおもしろかった。
親って子供のことをどれだけ知ってるだろう。
自分が子供のときっていうのもあんまり学校のことは親に話さなかった気がする。
話したのは結構表面的なこととか、おもしろかったこととか。
もちろん話さなかったことの方が圧倒的に多い。
そりゃあ秘密だっていっぱい持ってた。
絶対親にもばれてない(笑
親の気持ちなんて全然考えられてなかった。
そんなに器用でもなかったし。
ミステリとして、そしてこの本自体に隠された仕掛けも最高に楽しめるんだけど、そのほかにも「親と子」ってなんだろうって考えさせられた。
![]() | 世界の終わり、あるいは始まり 歌野 晶午 (2006/10) 角川書店 この商品の詳細を見る |
以下ネタバレあり。
タグ : 歌野晶午 角川文庫 世界の終わり、あるいは始まり
【ミステリ】ガラス張りの誘拐
歌野晶午
角川文庫

「警察が私の言葉すべてを公表するとはかぎらない。それなのにメディアは、すべてを知っているかのような顔をして私を分析し、批判する。結果、世に出て行く私と真の私の間にずれが生じる。これでは憶測飛び交う現在の状況となんら変わらないではないか。」
歌野晶午の『ガラス張りの誘拐』。
その名のとおり誘拐事件を扱ったミステリなのだが…
なぜか解決編からはじまる。
犯人の自供。
なぜ自分は殺人に至ったか、その心情を警察に捕まる前に手紙でマスコミに流した。
おいおいおい、解決編からはじまるのかよ。
そんな不思議な構図。
しかし、犯人は誰なのかは分からない。
それでも、続く事件。
そして誘拐事件へ。
ポカーン。
こういうことだったのかよっ。
だから自供からはじまるのか…
歌野晶午作品を読むのは2作目だけど、こういう叙述系のが多いんだろうか。
あと1作は読む予定。
![]() | ガラス張りの誘拐 歌野 晶午 (2002/05) 角川書店 この商品の詳細を見る |
【ミステリ】13階段
高野和明
講談社文庫

「この縄を、奴の首にかけなければならない。そう考えた途端、南郷の顔から血の気が引いた。刑場全体を覆う教誨師の読経が、南郷の動揺に追い討ちをかけた。死者を弔うための読経は、心の安息をもたらさなかった。弔う相手が生きている今、それは人間の猟奇を呼び覚ますような呪術的な効果しか上げていなかった。」
第47回江戸川乱歩賞受賞作『13階段』。
人を殺し前科を負った青年三上と、刑務官をやめ冤罪を負ってしまった人を助けようとする南郷の二人が挑むある一人の死刑囚の冤罪を晴らすために調査を開始する。
死刑制度が日本には存在している。
でも死刑を実行している人は別にいる。
被害者の家族が殺すわけでもなんでもない。
それだけじゃない。
ありとあらゆる方向から日本の法制度の中での「死」についてのバックグラウンドをこれでもかというくらいに語ってくれている。
加害者、被害者、刑務官、前科者に対する世間の目etc
そんなすさまじい背景を見せ付けてくれながらも、さらに冤罪で死刑を宣告されている人の容疑を晴らすというストーリーである。
刻一刻と迫る死刑の時間。
しかもそれはいつ訪れるか分からないもの。
そんな緊張感の中で生きる死刑囚。
重く考えさせる死刑制度の背景に、驚くほどの結末。
……これはすげぇわ…
乱歩賞を満場一致でとったのも分かる気がする。
話が終わった後のすごい量の参考文献を読んで納得。
ここまで物語の中で死刑についてのあやふやさ、おかしさをこの本を読んで説得させられるわけだ。
![]() | 13階段 高野 和明 (2004/08) 講談社 この商品の詳細を見る |
【ミステリ】葉桜の季節に君を想うということ
歌野晶午
文春文庫

「『でも』は言うなよ」
このセリフ結構好きです。
文藝春秋のミステリーマスターズから出ていた『葉桜の季節に君を想うということ』が文庫化。
2004年の「このミス」こと「このミステリーがすごい!」の1位。
当然3年前には噂はそりゃもう聞き及んでいた。
けれども単行本ということから読むのを後回しにしているうちに3年が過ぎて文庫になった。
ここまでくればもう買って読むしかあるまい。
帯を見る。
「あまり詳しくはストーリーを紹介できない作品です」
…………そこまでなのか。
心して読んでみた。
いや……コレは…………
確かに説明できない。
あらすじを言った瞬間にネタバレしそうで怖い。
いや、違う。
真相を知った上であらすじをうまいこと語れるのだろうか。
そんな全編がミステリのような本である。
本格ミステリか?と問われるとそうだとは言い切れないような。
でも、これほどまでに騙されることに対して狂喜乱舞でえぇぇぇぇえぇ、となれるようなそんな本だった。
これがあの「葉桜」か。
納得した。
そりゃ大抵いろんなところでみる簡単な書評が高評価なわけだ。
未読のミステリ読みは一度は読んでみるべきものかもしれません。
![]() | 葉桜の季節に君を想うということ 歌野 晶午 (2007/05) 文藝春秋 この商品の詳細を見る |
【ミステリ】円環の孤独
佐飛通俊
講談社ノベルス

「金を愛し、金のために生きている人間は、金のためにやむなく生命を落とすことはあっても、金のために自ら生命を落とすことはありません。彼等は金というものを通して、ただひたすら、この現実を愛しているんですから」
佐飛通俊の『円環の孤独』。
講ノベで出てて、興味だけはあったからと購入。
近未来。
宇宙ステーションのホテルで客が殺される。
密室の中、その部屋はDNAを鍵としているために誰も入れない。
その中で殺されていたのは探偵だった。
近未来で、宇宙で、密室で。
そして時間旅行さえも金を出せばいける時代かよっ。
でも、至極まっとうなミステリだった。
登場人物がなんか読んでいて、まるで海外のミステリを読んでいるかのような。
ある意味で懐かしいような、そんな印象。
キャラが強烈の個性付けされているのをよく読む昨今ではなんか珍しいタイプの本だった。
ミステリとしてちょっとガチガチなんだけど、少しロマンティックで詩的なところがあったのが微笑ましかった(笑
![]() | 円環の孤独 佐飛 通俊 (2006/02/07) 講談社 この商品の詳細を見る |
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